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2011/03/04

一人静かに、
風がそよぐ音を眺めていると、
多くの人を傷つけて来た私が今ここにいる、
多くのものを奪って来た私が明日を信じようとしている、
花は風にそよぎ何も語らない、
雲は風の流れるままにうつろい形を変えていく、
小川の水は岩に砕かれ何も言わず流れ下る、
虫たちは冬の寒さに身を寄せ合い一つになる、
一人静かに、
森と言葉を交わすと、
涙が頬を流れ去る、
どれくらい自分を満たせば気がすむんだろう、
どれくらい自分の影が大きくなれば幸せを感じるんだろう、
どんなに私が求めても、
夜は足音も立てずに心の中に訪れる、
どんなに私が愛しても、
彼の心を振るわせる事さえできない、
どれだけ多くの涙を流しただろう、
どれだけ私は傷ついただろう、
風は流れ、
涙は頬を流れ去る、
今は誰かが愛してくれることさえ気づかずにいる、
足下の小さな花が微笑んでいることにも気づかずにいる、
私の前に素晴らしい世界が広がっていることさえ忘れている、
一人静かに、
雪に隠された森を振り返ると、
雪の上に残された、
小さな小さな足跡が、
今の私のところまで続いている、
一人静かに、
雪に隠された森を見渡すと、
私の前には、
私に繋がる道が雪の下にかすかに見える、
多くの人を傷つけようとする道、
多くのものを奪おうとする道、
私が愛した人と歩く道、
私の全ての道が白い雪の中にかすかに見える、
一人静かに、
私の行くへをたどると、
かすかに見える私の道を、
風さえ消す事ができずに、
ただ流れ去る。

2011/03/04 12:14 | watanabe | No Comments