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こんばんは、酒井孝祥です。
歌舞伎や文楽で、黒い衣装と黒い頭巾を纏って舞台上に登場し、小道具を役者に渡したり回収したり、衣装チェンジの補佐をしたり、舞台の転換の補助をしたり等する人を、黒子と呼びます。
元来は黒衣(くろご)という名称であったものが、誤用されているうちに、黒子(くろこ)という名称で定着したようです。
作品の種類によっては、黒装束で顔形を隠すことなく、紋付き袴などを身につけて、黒子と同じ役割を果たす人が後見として登場することもあります。
今昔舞踊劇では、歌舞伎の様に黒子が登場します。
黒子は、目立たない格好をしてはおりますが、どう見たってお客様の目に入ります。
もちろん、お客様の方でも、黒子は本来そこにはいない存在として認識する必要があります。
しかし、いくらお客様がいない存在だと思おうとしても、舞台上で動くものに自然に目がいってしまうのはどうにもならないことです。
そうである以上、黒子の方でも、自身の姿を目立たなくする努力が必要です。
今昔舞踊劇は、小道具のアイテム数が多く、その出入りが激しいため、結構大人数の黒子を必要とします。
今回、黒子専属メンバーもいるのですが、それだけでは賄えないため、役者として出演するメンバーも、自分の出番がないときには黒子衣装に着替えて働かなければなりません。
そんなわけで、稽古の中で、黒子としての身体の扱い方の練習も行います。
役者として舞台に上がるときには、アンサンブル的な役割でない限り、いかに自分の存在をお客様に印象付けるような目立つ存在になるかが重要ですが、黒子の場合は全く逆のことが要求されます。
目立ってはいけないと思い、こそこそと動くと、余計にお客様は気になってしまいます。
黒子は、いないことになっている存在であっても、いてはいけない存在ではありません。
必要があって動くべきところは、変に身を隠そうとせずに、堂々と、そして素早く無駄なく動く。
その方がかえって目立ちません。
黒子として、存在を目立たなくする方法を体得した役者は、その逆にも応用出来ることでしょう。
良い役者は良い黒子たれ。