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こんばんは、酒井孝祥です。
結婚披露宴でケーキ入刀の後で乾杯が行われる場合、ナイフがケーキに入った瞬間、サービススタッフが一斉に乾杯酒のシャンパンやスパークリングワインの栓を抜き、ポンと音をたてる演出があります。
その音が揃うと綺麗なものです。
栓を抜いた流れで、ケーキの周りでゲストが写真を撮っていたり、お二人がファーストバイトを行っている最中にスタッフが乾杯酒を注ぐことが出来る場合には、あまり問題にならないのですが、ケーキ入刀が乾杯の後に行われたり、ケーキそのものがない場合、乾杯酒が全員に注ぎ終わるまで、結構長い間ができてしまいます。
洋食コース料理の場合、乾杯酒にはシャンパンやスパークリングワインなど、発泡性のものが用いられることがほとんどです。
その泡立ちを美しく見せるためにも、乾杯酒が注がれるグラスには、縦に細長い“フルート”と呼ばれるグラスがセットされていることが多いです。
その場合、注ぎ口のターゲットが狭いため、慎重に注がなければ零れてしまいますし、ゆっくり注がなければ、泡がいっきに上がってきて溢れてしまいます。
また、乾杯酒を注ごうとするときになって、あるいは注いだ後になって、お酒が飲めないから別のものにして欲しいと要求するゲストも稀にいます。
乾杯は形だけにして、無理に中身を飲む必要はないですが、そう頼まれた場合には、乾杯酒に見立てたジンジャーエールなどを用意する会場もあります。
事前に言ってもらえれば問題ないものの、急に言われると準備で時間をロスします。
そして、ケーキ入刀やファーストバイトが行われる場合でも、ケーキの傍のテーブル近くにゲストが集まって、そのテーブルになかなか注げないことだってあります。
そんなわけで、乾杯酒をゲスト全員に注ぐというのは、意外と時間がかかるものです。
その間の時間で無音状態が出来てしまったら、場は白けてしまいます。
司会者はコメントを入れて繋がなければなりません。
事前にお二人から伺ったエピソードを述べるのもよし。
特にネタがなければ、乾杯酒が注がれている様子を実況したり、事前にリサーチの上、その乾杯酒の銘柄の由来などを説明しても繋げます。
「グラスの中の黄金の輝きから、白い泡立ちが静かに音をたてています。このゆっくりと長く続く泡立ちが、お二人の末永い幸せを象徴しているかのようです。」
などと、単にグラスにお酒が注がれている様子だけでも、言葉でいくらでも装飾できます。
そとそも乾杯にどんな意味があるかと言えば、杯を合わせたときの音を悪魔が嫌うという、魔除けのような説があります。
しかし“悪魔”という単語はおめでたい席に相応しくありませんし、それを言ったために、ゲストが思いっきりグラスを合わせて割ってしまったら司会者のせいになります。
そもそもワイングラスやシャンパングラスで乾杯するときは、杯を掲げるだけで、互いにぶつけたりはしないものです。
前述した由来をハイパー拡大解釈して、
「乾杯のときの皆様の賑やかなざわめきが、この場に幸せの天使を呼び込むなどと言われているそうです。」
などとコメントするのもありかもしれません。
そもそも伝承や由来に明確な情報源はありませんし、最後に「◯◯だそうです。」とつけて断定しなければ、嘘にはなりません。
結婚披露宴においては、新郎新婦が入場してから乾杯するまでが司会者の勝負どころです。
乾杯までを上手く繋げれば、その後もスムーズに進むでしょう。
次回は、「見得っ!」(古典芸能)をテーマにしたコラムをお届けします。