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こんばんは、酒井孝祥です。
先日、日本舞踊の名取式があり、名前を戴きました。
ジャンクステージ代表の須藤氏より、名取式で何をやるのかが興味深く、それはテーマにコラムを書いて欲しいとリクエストがありましたので、今日は名取式のことを書きます。
名取式はおめでたい式であるため、結婚式と共通した要素が色々あるかと思います。
先日も、結婚式の待合所のごとく、式が始まる前には桜湯をいただいたりしました。
名取式って何をするの…と問われても、結論から言えば、流派によってやり方が違うので、一概には申し上げられるものではありません。
僕は、数年前に浄瑠璃で名取になって、名取式というものに出るのは今回が2回目なのですが、やることは多少異なっていました。
とは言うものの、名取式と呼ばれるものであれば、よほど特殊なケースでない限り、“かためのさかずき”という儀式が行なわれることはほぼ間違いないでしょう。
数年前に浄瑠璃の名取になるときに、式では何をするのか師に尋ねたところ、“かためのさかずき”を行なうと言われました。
僕はそのとき、片方の目を閉じて酒を飲む「片目の杯」という儀式なのかと思いました。
しかし、それは違いました。
では、儀式に用いる杯が丈夫に出来ているから「硬めの杯」なのかというと、それも違います。
そして、片方の目が不自由で酒が好きな人物「片目の酒好き」が登場するわけでもありません。
正解は、「固めの杯」です。
つまりは、もともと血縁の無い間柄の人達が、一門としての結びつきを固めるために、杯を取り交わすのです。
ヤクザ映画で、親分が上座に座って、両脇に子分達がずらりと並んでいて、杯を交わす映像などを見たことはないでしょうか?
イメージとしてはそれに近いと思います。
流派によってやり方は異なるかもしれませんので、以下に述べるやり方は、一例と考えていただければと思います。
まずその流派の家元が、杯に注がれた酒を飲みます。
飲み終わって、口をつけたところを懐紙で拭き取った後に、その杯が新名取に渡され、そこに酒が注がれて、今度は新名取が酒を飲みます。
新名取全員に杯が回ったら、最後に再び家元が、その杯で酒を飲んで「固めの杯」の儀式は終了です。
新名取以外の以前からのお名取さんが同席する場合には、その人達にも杯が回ることもあるようです。
以上が「固めの杯」と呼ばれる儀式ですが、名取式の中で他に行なわれることとしては、それぞれの名取名の紹介、名取試験と称した唄や踊りの披露(そういうことをやらないところもあります)、免状やら名前を書いたお札(表札みたいなもの)やらの授与等が挙げられます。
儀式が終了すれば、大概はお食事会となります。
結婚式の後に結婚披露宴で食事をするのと似ているかもしれませんね。
食事のメニューの中には、芸が長く伸びていくようにという意味合いを込めて、蕎麦や素麺のような長い麺の料理が含められ、縁起をかつぐこと等もあるようです。
流派の名前は、技芸の上達が認められた結果によって戴けるものです。
しかし僕は、今後の技芸の上達に責任を持つために戴くものと心得ることにしております。
名取式は到達の儀式ではなく、出発の儀式であるべきでしょう。
次回は、「口上」(古典芸能)をテーマにしたコラムをお届けします。