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2013/04/26

こんにちは、酒井孝祥です。

結婚披露宴の演出の1つに、バルーンスパークというものがあります。

各テーブルの中心に大きな風船が浮かんでいて、キャンドルサービスなどと同じ要領で新郎新婦二人か順番に割っていくというもので、その風船の中から小さな風船などが飛び散る様な演出です。

このとき司会者が、
「これよりお二人には、バルーンをスパークしていただきます。」
という、ちょっと不可解な言葉を使うことがあります。
ストレートに言えば、
「これよりお二人には、風船を割っていただきます。」
となります。

そもそもSparkとは、本来であれば、閃光とか火花が飛び散る様な意味合いです。
風船が破裂することを表すなら、むしろBurstの方が正しいはずです。

では、パッと耳で聞いておかしな印象すらある言葉をどうして使うのかと言えば、結婚式場での忌み言葉「割る」の使用を避けて、肯定的なニュアンスの言葉を選んだ結果と思います。

割れることや壊れること、破滅的な意味合いを避けて、風船が破裂する様を、閃光や火花になぞらえてスパークと表現するに至ったのではないかと思います。

「割る」の他にも、「戻る」「終わる」「去る」「別れる」など、結婚式場において、離婚や不幸を連想させる言葉は、忌み言葉としてNGワードとされます。
受験生の前で「落ちる」という単語を使わないのと同じ様なものです。

結婚披露宴の終結を「結び」と言ったり、終了することを「お開き」と言ったりするのも、幸せな生活がエンドになるニュアンスを避けてのことです。

僕がサービススタッフで結婚式場で働いていたとき、お客様に、
「お二人からのメッセージカードを読まれましたら、お引き出物袋の中に“おしまい”下さい。」
と言ったところ、他のスタッフから、“おしまい”はだめでしょと指摘され、以後は「お入れ下さい」か「お納め下さい」と言っています。

今どきの若い人は、忌み言葉なんて気にしないという考え方もあるかと思いますが、老若男女の出席する結婚披露宴においては、ご年配のゲストが気にされるかもしれません。

忌み言葉を避けて肯定的な言葉を使うことには、自己啓発的な本などで、「自分は出来る!」などと肯定的な言葉を何度も口にして自己暗示することが書かれているのに似た様なものがあるとも思います。

本来なら「戻る」と表現するところで敢えて「進む」という言葉を選んだりと、ポジティブな言葉ばかり耳に入ってくることには、幸せのサブリミナル効果があることでしょう。

次回は、「稽古場公演を終えて」(古典芸能)をテーマにしたコラムをお届けします。

2013/04/26 11:01 | sakai | No Comments