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2013/02/07

いまやサロンの定番売れ筋メニューの「ジェルネイル」。
今回は、そんなジェルネイルの歴史についてです。

ジェルには2種類あります。
ハードジェルとソフトジェル。
ソフトジェルはソークオフジェル、とも呼ばれます。

違いを簡単に説明します。

ハードジェルはその名のとおり「硬い」ジェルです。
硬度があるため長さを出す仕上がりも得意で、
爪の先を人工的に長くする際に活躍します。
また透明度が高いことも特徴です。
ガラスやクリスタルのようなツヤ、と例えられる代表選手でした。

ソフトジェルもその名のとおり「柔らかい」ジェルです。
より柔軟性を高め自爪への定着性を重視したプロダクトです。
硬度はさほど期待できないので、長さを出すことは出来ません。
せいぜい2~3mm程度です。欠けてしまった自爪の補修ができる範囲です。
人工爪というより、落ち難いマニキュアという発想がわかりやすいかもしれません。
よりナチュラルに、より保持力を、がソフトジェルの大前提です。

市場に先に登場したのはハードジェルです。
日本では一般的にあまり馴染みがないものの
欧米では人気のメニューとして歴史もあります。
ソフトジェルが登場したのは、1980年代です。
そして日本に紹介されたのは2002年頃、と記憶しています。

なぜ、ハードジェルがあまり浸透せず、
後から登場したソフトジェルがこれほどの発展を遂げたのでしょうか。
ソフトジェル市場において日本製のプロダクツは、今や世界トップの品質です。

私の見解では、主に二つの背景があると考えます。
一つはその作業工程に関わるもの。
そしてもう一つは技術力に関わるもの。
両者とも結局は同じ種類にある話なのですが、
欧米と日本(アジア)の違いがマーケットにも顕著に反映された例だと思います。

古株ジェル、ハードジェルの最大のデメリットはその落とし方にありました。
通常アクリル樹脂である人工爪は、アセトン含有の専用溶剤で溶かして落とします。

ハードジェルは、アクリルを溶かすアセトンという溶剤でも溶けにくいため
爪から落とす(オフする)作業が難点でした。
どうするかというと…、
ひたすら手作業ファイルで削り落とすのです。
1本ならともかく10本を綺麗に落とすというのはなかなか骨の折れる作業です。
加えて、注意をしないと自爪を削ってしまうというリスクもありました。
人工爪の中でも、定着がよく長持ちでアレルギーも出難いということが魅力のジェルでしたが
このオフが困難なためなかなかニーズが伸びなかったという事情があります。

ハードジェルが、欧米では人気のメニューだった理由には、
その作業工程の手軽さにあったのではと考えます。
水あめのようなジェルを筆ですくい伸ばし、形を作って専用のライトに照射する、
数分で固まり出来上がり。
ライトにあてない限りは固まらないので、失敗を恐れず施術ができます。
このシンプルかつ負担の少ないメソッドが、
比較的に仕上がりの形(フォルム)より効率性を重視する傾向がある欧米では好まれたのだと思います。

それに対し、日本では多少の困難さを伴ってもフォルムの美しさや繊細なデザインが好まれます。
手先の器用な私たちは、それに応える技術力を培う手間も厭わないのです。
また自爪に対するダメージも警戒されたのでしょう。
ハードジェルはその魅力を踏まえてもそれほどの認知に至りませんでした。

そしていよいよ、ソフトジェルが登場します。
ジェルの美しく保持力に優れるというメリットに、
アセトンで溶かすことが可能という理想のプロダクツです。
ソフトジェルの別称をソークオフジェルと言いますが、
これは「溶かすことの出来るジェル」という意味です。

長い爪先より、ナチュラルな美しさを得意とすることも幅広いニーズを捉えました。
マニキュアの延長線である位置付けも受け入れられやすかったのではないでしょうか。
なにより、専用のライトに照射することで固まるので、マニキュアのように乾かす手間がありません。
せっかくお金と時間をかけてキレイにしたのに、
ちょっと用事をしたら剥げてしまって台無しに…。
といったストレスからも解放されました。

日本上陸当時は高価なものでしたが、
徐々に国内産も開発商品化され、現在ではかなりお手ごろな価格になりました。
それはサロンメニューの低価格化にも反映されています。
私たち日本人ネイリストが得意とする細かなデザイン性にも、
ぞくぞくとそのラインアップの幅を広げています。
もちろん欧米においてもそのニーズにギャップはありません。
世界中でソフトジェルはネイルの中心にあるでしょう。

ここ数年では、普及に伴い正しく高度な技術と知識も必要とされ
日本ネイリスト協会によるジェルネイルに特化した検定試験も行なわれています。
いまやネイルシーンでは欠かせないジェルネイルにも
こうした背景があることを知っていただければ
目にする素敵なネイルに歴史を感じていただけるのでは、と思います。

2013/02/07 07:07 | makiko | No Comments