« | Home | »

2012/12/04

 

まるで間欠泉のようです!

蒸気の煙を吐きながら地下深くのマグマから、

湯柱が暗い夜空に吹き出し始めました、

ライトに照らされてとても奇麗です、

それは突然始まりました、

時間は夜の7時、

周りを見回すと薄らと雪が積もり始めています、

地面に置き去りにされた濡れた軍手はまるでFRPで作られた模造品のように、

カチンコチンに固く凍りついています。

 

屋内の水道とトイレと暖房は、

冬の山の生活の基本的人権だよね!!

山友の中で囁かれている言葉でした、

人間というものは欲深いものです、

基本的人権が満たされると次に思いつくのは欲望と言う名の満足感、

次は蛇口からお湯が出たらどんなに便利なんだろう、

毎回薪ストーブで湧かしたお湯で洗いものをするなんて、

そんな欲望のためならば、

こんな雪の降る氷点下の山の中でただ一人、

地面に深さ60cmの溝を掘り出すのもです、

当日の朝は天気も良く気温も4℃、

昨日購入して来た配管基本セット、

少し凍り始めた地面に60㎝の深さの溝を、

給湯器からキッチンそしてシャワールームまで掘り進み、

総てのお湯用の配管の設置をすませ、

給湯器のセッティングを終えてスイッチON、

ワクワクしながらキッチンで蛇口をひねると、

外では給湯器の力強い燃焼する音が聞こえ始めます、

蛇口の水の通り道に人差し指を触れていると、

次第に指先が暖かくなり終いには熱すぎて耐えられません、

ママにメール

『ただ今、山小屋にお湯が出るようになりました!!』

空の太陽はいつの間にか雲で覆われ、

気温は氷点下に下がっています、

試験運転もそこそこに、

暗くなるまであまり時間がありません、

総ての作業を今日中に終わらせないと、

次第に暗く寒くなって行く冬の山、

総ての配管に凍結防止用の熱線を巻き、

総ての配管に断熱用のウレタンパイプを巻き、

被覆テープで総てのウレタンパイプを保護します、

時間は夜7時前、

狭い溝の中で身体を動かすと、

地表に出来ている霜柱が手元に落ちてきます、

一つ一つ霜柱を摘んでは遠くに投げ捨てます、

先程から雪が降り始めています、

吐く息の白さが手元にかかります、

身体は寒くないのですが指先が凍るように冷たくなるので、

時折室内に戻り薪ストーブで暖めます、

後少しで終わるそんな時、

『ピシッ、ピシッ、』

配管を強く曲げたせいでしょうか、

配管の接続部分から鈍い叫びが聞こえてきました、

配管と断熱材の間からお湯が滲み始めてきました、

何が起こったか分かっているはずなのに、

その場にすっと立ち尽くすと、

お湯は次第に蒸気と湯柱に変わって、

まるで間欠泉のように成長を始めました、

すぐさま取って帰ってお湯の元栓を止めます、

夜の8時、もう時間がありません、

このまま進めるのか、

作業を中断するのか、

考えている時間はありません、

作業を中断し周囲をかたずけ配管が凍らないように、

ブルーシートをグシャグシャに丸めて溝の中に押し込み、

冷気が入り込まないように板で地上を塞いでいます、

総てが終わると夜の9時、

周りに飛び散った水滴は総て凍りつき、

ライトに照らされてキラキラ光っています、

 

息が詰まるようなスリルと緊張感、

圧倒的に勝ち味の薄い闘いに挑む人間の欲望、

ロマンも無ければユーモアも無い、

あるのは厳しい自然と過酷な現実、

頭の中では昔見たイブモンタンの映画、

『恐怖の報酬』の一場面が浮かび始めました、

今日の出来事は冒険というよりは、

『欲望の報酬』のようです!!

2012/12/04 04:23 | watanabe | No Comments