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こんばんは、酒井孝祥です。
古典芸能鑑賞の手引きの様な内容のコラムが続きましたが、たまには自身の活動に関して語ってみたいと思います。
今回のテーマは、僕の考える、俳優が口にすべきではないNGワードですが、考えていたら、結構色々と思い浮かんできました。
このテーマだけで3~4回はコラムが掲載出来そうです。
さて、僕が、そもそも役者の世界に足を突っ込んだきっかけは、ある声優雑誌のオーディション企画です。
大学生のとき、もともと大の声優ファンで、声優雑誌を毎号欠かさず購入し、睡眠時間を削ってまで深夜の声優さんのラジオをむさぼるように聴いていた酒井が、半ば冗談のつもりで、オーディションに応募しました。
課題となった詩の朗読をテープに吹き込み、それを送ったところ、1800人以上の応募者がいる中の20数人に選ばれ、最終選考を受けることになりました。
大手声優プロダクション複数社のマネージャーが審査員として参加し、各事務所の付属養成所の特待生としてスカウトされるか否かというオーディションだったのですが、最終選考の様子は、思い返すのも無惨なもので、落選しました。
そのオーディションがきっかけで、ちゃんと養成所に通って勉強しようと思ったのが、酒井の俳優としてのスタートでした。
ここまで説明して、ようやく今回のテーマになるのですが、
「もし、あの時オーディションで最終選考に残っていたとしたら、大手の養成所に特待生で入り、今頃はアニメで主役を張っているかもしれない。」
などという風に、
「もし、あの時○○だったら…」
というのは俳優としてのNGワードにして、口に出すべきではないと思います。
今回酒井は、自分がこういう世界に足を踏み入れるきっかけを説明するために、落選したオーディションのことを話題にしましたが、特別な理由がない限りは、落ちたオーディションのことを話題にしても、何の足しにもなりません。
たとえどんなに凄い競争率を経て、何次選考まで残ろうとも、最後の最後まで残らなかったら、結果としては、それはゼロに等しいことです。
たとえその時、ほんのちょっと台詞を噛んでしまって、それさえなければ合格していたとしても、タイムスリップしてやり直すことが出来ない以上、ゼロであることに何も変わりません。
実際に、
「あのオーディションでもうちょっと上手くいけば、あの監督の映画に出られていたのに…」
「あの舞台の出演依頼があったのに、スケジュールが合わなくて、もし出ていたら…」
と口にする俳優さんと結構出会います。
中には、プロフィールの出演経歴の欄に、有名映画監督の作品名があり、メインキャストオーディション最終選考にて落選(非出演)と添えられている人などもいます。
確かに、その監督のネームバリューは凄いですが、経歴に出演していない作品を書いてどうなるのでしょうか?
あの時△△だったら…というifは、前に進もうとする足を引っ張ります。
結果として残せたことのみが現実で、その現実を直視せずに、妄想の世界をぶらぶらしていても仕方ありません。
次回は、「落語の魅力」をテーマにしたコラムをお届けいたします。