« | Home | »

2012/11/29

 ジャズの醍醐味はアドリブ。つまり「その場で、譜面にない
音を出す」ことです。譜面にある音を正確に出せるためには
繰り返し練習することが重要で、到達点も見えやすいです。
しかし、譜面にないものを弾けるようになる、という目標は
非常に漠然としていて、見えにくい。ジャズはどうやって練習
すればよいのですか?と、レベルの差はあれジャズの生徒さん
のほとんどがぶつかる疑問です。

 アドリブはいうまでもなく「自分がこう弾きたい」というものを
演奏するものです。でも弾きたいというものをその場で出す、その前に
弾きたいことを思い浮かべる、ということそのものが難しいという
人も沢山います。だからいろいろ「ネタ」として「仕込む」わけ
です。仕込みの仕方もいろいろ、気に入ったCDをコピーしたり
コピー譜を見てみたり、理論書を見て作ったり、フレーズ集を参考に
したり。。。
 そうすると用意したものはなんとなくできてくるようになる。
そして次の段階で出てくる悩みが

 「練習したフレーズ、用意したフレーズが本番で出ないんです」
 
 「本番になると頭が真っ白になって、練習で弾けていたものが
出てこないんです」

 というもの。
 セッションに参加するくらいの上級者の生徒さんによく
される質問です。

 それにはこう答えます。

 「用意したものは出さなくてよいです。用意したフレーズを発表する
のがジャズのアドリブではないんです。本番は頭真っ白でいいんです!」

 とっても上手いし、テクニックもあるけれど、つまらない、なんて
演奏、聴いたことありませんか?そういう演奏はきっと「研究発表」
になってしまっているのかもしれません。
 これだけのフレーズ知ってます、練習しました、弾けます。
そういわれれば「あ、そうですか。すごいですね~」とは思うけれど、
「じゃああなたの本当に弾きたいこと、なんですか?」と聞いて
しまいたくなる・・・。
 
 もちろん、練習すること、テクニックがあることは必要なことです。
「テクニックはなくても心があれば・・・」
 という言葉も良く聞きますが、プロであれば、そしてプロを目指す
ならば、それはウソです。

 フレーズを考えたり練習するのも、最終的には「その場で弾きたい
音を弾ける」ためにすること。決して「考えたフレーズを出すため」
ではないのです。練習して練習して、でも本番は練習したことはすべて
忘れて
「今、このメンバーと、この場所で自分はどう弾きたいのか」という
ことだけ考えて演奏するのです。
 
 ということはつまり、
『「自分が本当に弾きたいこと」を「その場で出すため」のテクニック』
が必要になるのです。
 そう考えると、どういう練習をすればよいのか、少し見えてきます。

 ・あらゆる鍵盤のあらゆる音に瞬時に指が行くよう様々な指使いをマスターする
 ・感情を表すために様々な音色をコントロールできるよう、指を鍛える
 ・どういう音を出したいのか、いい音楽を聴き、いい芸術に触れ、創造力を
  高める
  etc

より自由になるために、より不自由な練習が必要になるのですね。

今回のコラムは自戒の念もこめて、書かせていただきました。
プロとして演奏し続けるためには、常に今の自分に足りないものは何か、
客観的に判断してそれを補う鍛錬をしていかなければならないと思います。

2012/11/29 04:19 | toyama | No Comments