海の底でたったひとり数時間。たまに海面からやってくる人の様子を見つめ続けると
どんな気分になるか、、ちょっとこの映像をご覧ください。
映像再生は画像をクリックしてください
映像をつないだだけのものですので異様にリアルな感じですが・・・
なかなかシュールな世界ですが、これはフリーダイビングで使われる「ボトムカメラ」の映像です。先日行われた「第13回真鶴フリーダイビング・クラシック」で記録した、実際には数時間に及ぶ映像を編集したものです。
「ボトムカメラ」とはその名の通り、海底に沈めて競技を記録するためのカメラです。フリーダイビングでは予め潜る深さ分の長さの「潜行ロープ」を垂直に海に垂らすことで深度を測定しますが、この潜行ロープの先、つまり一番ボトムに、上向きにカメラを設置し固定し、録画スイッチをオンにしておきます。すると、ロープに沿って降りて来てはボトムにタッチして浮上する選手の姿が、まるで監視カメラのように定点観測出来る、というわけです。世界大会などでは、記録の判定のためにも必須とされています。
ボトムカメラのミッションは厳しく過酷です。長時間、時には100m以上の深海に沈めて数時間稼働させるため、
・もちろん完全防水で
・大深度に耐えられ
・バッテリーが長持ちし
・ある角度でロープに取り付けられて
・かさばりすぎたり、重すぎたりしないこと
が条件。莫大な費用をかければ特注の素晴らしいハウジングが出来るでしょうが、潤沢な資金があるフリーダイビング大会というのは殆どないため、知恵を絞ることになります。
その知恵の結晶がこのボトムカメラです。2010年、沖縄で行われたフリーダイビング世界大会時には「水中ライトのケース」をハウジングにし、中に小型のハンディビデオカメラを仕込む、というアイデアにより、驚くほど低予算で100mを超えるdiveを含めて全ての競技の映像をボトムカメラがとらえることが出来ました。このカメラはその後沢山の大会で活用されましたが、ついに水没。今年、「真鶴フリーダイビング・クラシック」直前に、新式のアクリルケースのカメラが完成しました。この映像が、冒頭のものなのです。
フリーダイビングは正直言ってスポーツとしてメジャーではありません。
フリーダイビングをこよなく愛する私ですら、これはやはり事実として認めざるを得ません。その原因の一つとしては「観戦が出来ない」という点が大きいと思います。最も代表的な種目であるコンスタント・ウェイト(フィンを履いて海に深く潜る)が、「もっとも目に見えない種目」であるというのも皮肉。競技会場はdeepな海上のポイントになるため、安全管理上、ゴルフやテニスやサッカーのように観客が大勢で観に行くというのが物理的に難しい。仮に競技エリア近くに行けたとしても、トップクラスの選手の潜りの一部始終を肉眼でみることはそもそも叶いません。どれほど透明度の良い海でも数十m以上の深さを海面から見ることは不可能なので・・・。
もしフリーダイビングが海から生中継出来るようになったら、映像でフリーダイビングの「観戦」「鑑賞」が可能になります。それが実現したら、フリーダイビングをより沢山の人が知り、想像でしかなかった世界をかいま見ることが出来るのでは、とワクワクします。映像技術、放送技術、通信技術とフリーダイビングが融合して、いずれそんな日が来ることを夢見つつ・・・・
ともあれ、これまでのボトムカメラ制作にあたっては無茶ぶりに対応いただいた(株)ジール撮影事業部長の加藤様、DIVE SHOP TAIL千々松社長に心より感謝いたします。いづれ生中継用のボトムカメラ制作の際には、ぜひまたよろしくお願いします!!(とまた無茶ぶりしてみたり。。。^^;;)
Powered by Zeal & Tale
Camera setting byYasushi Okawa
Edit by Kosuke Okamoto