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2012/10/28

先週末(2012/10/20-21)第13回真鶴フリーダイビング・クラシックが開催されました。
私が所属する「東京フリーダイビング倶楽部」が主催するフリーダイビング大会です。毎年秋に開催されて今年で13回目。国内のフリーダイビングの海洋大会としてはとてもロングランの大会です。何故この時期に開催されるのか?もともとこの大会が人と順位を競うコンペティションではなく「一年間の練習の成果として、記録を残しましょう」という倶楽部内の「記録会」としてスタートしたからです。日本のフリーダイビングのシーズンは6月~11月くらいまで。ちょうどその年のシーズンの成果を出す場として始まりました。また、この時期の真鶴は「ここは沖縄?」というくらいブルーで透き通ることもあり、大会にはベストシーズン。今ではフリーダイビングを始めたばかりの初心者から、日本記録を狙うベテランまで参加出来るイベントとして日本全国から選手が集まってきます。

私は2007年から昨年まで、毎年この大会には選手として出場していました。多少薄暗くても冷たくても、私にとっては一番落ち着くホームの真鶴の海。最初の大会は-30m。そのあと-40m、-50mと区切りの記録を全てこの大会で更新してきました。残念ながらまだ60mは更新出来ずにいますが、今年は「セーフティダイバー」という役割で大会運営側に専念しました。選手として海にいるときはほんの一部しか見えないものですが、今回は大会の一部始終を見届けることが出来ました。

この季節ならではのブルー真鶴! 

●セーフティーダイバー
「セーフティダイバー」とは、その名の通り、選手の安全を守るダイバーです。今回はトレーニングを積んだ5人のセーフティダイバーがローテーションでこの役割を務めました。選手と同じく素潜りのフリーダイバーが務めます。選手の潜る深度に関わらず、浮上1分前に-20mまで迎えに行き、そこから選手と一緒に浮上します。ここで何かあればレスキューを行います。フリーダイビングでの事故、ブラックアウト(意識喪失)は水面近くで起こることが多いので、ほとんどすべての大会でこのセーフティシステムが取られています。かつてはスキューバを背負ったダイバー深い深度で待機する、ということもありましたが、今ではセーフティもフリーダイバーが行うというのが標準です。これと併せて、緊急時には「カウンターバラスト」というロープを使ったセキュリティシステムを連携して作動させます。

    浮上した選手を見守る船上スタッフ。中央のオレンジのバーがカウンターバラストの一部

自分が選手の立場で潜り、たった一人でボトムから浮上し水面に近づいた時にセーフティダイバーに出会うと、心底ほっとします。そして「もうすぐだ、頑張ろう」と前向きな気持ちになります。

自分がセーフティダイバーを務める時、-20mで待機し薄暗い海中からダイバーが浮上してくる姿を見ると本当に安堵します。

潜行直前の選手はそれぞれ集中し緊張し特別な空気を纏っています。セーフティダイバーはすべての選手を見届けながら毎回同じ緊張を味わいます。そして浮上しホワイトカード(成功)を見た時の喜びを一番近くで一緒に体感することができ、貴重な体験でした。

●大会スタッフ
この他、大会には多くの役割のスタッフがいます。安全管理責任者、医師、ジャッジ、ロープ係、公式撮影係り、カウント係り、操船者、撮影班、陸班・・・実際、選手の数よりスタッフの数が圧倒的に多いこともあります。潜る選手がたった数人でも、全てのスタッフが必要です。倶楽部内だけではなく、全国各地のフリーダイバーが集って体制を作ります。

東京フリーダイビング倶楽部では船の操船、ロープワーク、道具の準備、すべて自分たちで行います。一見シンプルに行われている大会も実は数か月前からの打合せや、真夜中のメールのやり取りが集結されており、綿密に細かいエクセルで配船表や備品リストが組まれています。しかし、海に出ると海況ひとつで全てがガラガラポン、ということもままあり、綿密さと同時に臨機応変さが要求されます。今回は、台風の直後ということもあり流れの影響でアンカーリングに手間取ったり、また当初一日で終わるはずの大会が、流れのために中断し2日間に渡ったりとハプニングも沢山ありました。

自然の中でのスポーツを続けるコツとは「あらゆるケースを想定する周到さと、その上で何があっても受け入れる大らかさ、諦めの良さ、切替の早さ」だな、と大会運営を通じて改めて思いました。自分で「絶対」と決めても、そんなものは自然の知ったことではなく、風向き一つで簡単に吹き飛んでしまうのです。何かに固執せず、次々にシンプルな有効な次の手を考える力が必要だ、と感じました。

●宴会班
そして、大会以上に綿密で用意周到さと臨機応変さが要求されるものが、これも毎年恒例で、年々バージョンアップしてくる「宴会」。海辺の別荘を貸し切って行います。40人分の料理をバーベキューとダッチオーブンを駆使して作り上げる宴会班の「調理タイムテーブル」の細かさたるや感動もので。当日にいたっては、コテージ2階のキッチンと、庭のバーベキュー班がインカムレシーバーを付けて奔走するという・・・どこのコンサート会場か、と思うような装備で準備万端かつタイムリーなサーブを行いました。この宴会こそが「フリーダイビング・クラシック」の伝統の一つでもあります。

 
とはいえ、大会の主役はやはり選手!選手全員分の笑顔が、スタッフにとっては一番うれしいものです。今年は-76mから-25mまでの記録が出そろいました。真鶴フリーダイビングクラシックでは順位付は行わず、そのかわり毎年、潜る深度に関係なく、プライズを用意します。今年はこんな賞が贈られました。

<特別賞>
ベストパフォーマンス賞・・・その年最も心に残るダイブに贈られる賞
ファンタスティックルーキー賞・・・新人賞 
ベストフルークアップ賞・・・最も美しい潜り込みに贈られる賞
ベストフィンワーク賞・・・最も美しい泳ぎに贈られる賞
 
<審査員特別賞>
ベストゴーグル賞・・・とても簡素な装備で潜った人に贈られる賞
ハラハラ賞・・・もっとも周りをハラハラさせた人に戒めを込めて贈られる賞
夫婦(めおと)賞・・・夫婦二人三脚で記録を伸ばす選手に贈られる賞
実行委員長賞・・・とりわけナイスファイトなダイブに贈られる賞

本当は、すべてのダイブに贈りたいところでした。素晴らしい大会、素晴らしいダイブでした!無事に、無事故で、すべてを終えることが出来、感謝します。

この大会が終わると何だか真鶴の海は急に秋めいて、冬の準備に入るように見えてきます。
実際にはまだもう少し練習してから、本当にオフシーズンが訪れます。
また来年、第14回真鶴フリーダイビング・クラシックにどんなドラマ生まれるか、
どんな賞が生まれるかを楽しみに、今シーズンもう少し頑張ります!

 

Photo by Tomohiro Noguchi
Tetsuo Hara

2012/10/28 11:19 | 大会 | No Comments