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2012/09/13

 

朝夕は秋が扉をたたくように涼しくなり、

森の中を歩いていると、

もうすでに青々としたイガ栗が、

昨夜の風で落とされている事に気が付き、

今年も山栗が豊作になる気配を感じさせてくれる、

実りの秋を前にして、

森の中の庭では多くの花が、

命を伝える為に秋の日射しの中で、

最後の力を振り絞って種子を抱きかかえ、

次の命を懸命に育て始めている、

きっと秋風が吹く頃には、

総ての種子は旅立つ事だろう、

そして凍てつく冬を無事に乗り越える事が出来た種子だけが、

春の柔らかな地上から命を送り出す、

何百年も、

何億年も前から、

受け継がれて来た伝える命、

 

それにしても君たちはどうしたっていうんだ、

栄養豊富な畑でそんなに葉を大きく茂らせ、

とても色鮮やかだったはずなのに、

いっこうに種子を付けない、

まるで命を伝えるというDNAを忘れてしまったのかい、

それが君たちの望んだ事なのか、

それとも君たちが生まれ来る時に、

誰かが君たちのDNAを操作してしまったのだろうか、

そんな自分たちの運命さえ知らずに、

君たちはこの地上に生まれて来てしまったのかい、

そんな君たちの運命を変える権利が、

この地上の誰に与えられたんだろうか、

もしもこの地上に神がいるとすれば、

もしも神を信じる誰かがいるとすれば、

命を伝える事の出来ない命を、

この地上に創り出す事が出来ただろうか、

命を伝えるために生まれてきたかったはずなのに、

 

森の中の庭では、

秋の日射しを浴びて、

多くの花が命を伝える為に、

今日も最後の力を振り絞って、

種子を抱きかかえている、

そして地上は、

今日もエネルギーに満ちあふれている。

2012/09/13 02:10 | watanabe | No Comments