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大雪山に入って一週間。
周辺はまだ残雪に覆われているが、それでも去年より2週間も雪融けが早い。
ヒグマの動向も少しずつ活発になってきて、毎日のように足跡や食痕を発見
するように なってきた。
毎日、一日中双眼鏡を覗いてヒグマを探すのにも限度があるのだが、今日は
座っていた岩陰からひょっこりとシマリスが現れてしばらく遊び相手にな っ
てもらった。
ほとんど誰もやってこない山奥で人間様から美味しいごちそうを授かること
も なく「野生」を貫き通してきたであろうシマリスであるが、好奇心は旺盛
な様 だった。 彼は僕の存在を無視するかのように、”やんちゃぶり”を発揮し
て周囲を行った り来たり走り回っている。
まずは少し時間をかけて僕に害がないことを学習してもらうことにした。
彼が近くを通り過ぎてもカメラも向けず、首も回さず、微動だにしない・・・。
1時間程そんなことを続けていると、ある時僕の顔の横30㎝まで近寄って
きてじっと顔を覗き込んだ。
「おい、おい!それは近すぎだよ!」
おかげでこっちが硬直して動けなくなってしまった。
その後、ゆっくりとカメラを向けてみると彼は次々とポーズを決めてくれた。
最後に見せたパフォーマンスは、
「見ザル」
「言わザル」
と来ればその次は、
なぜか「走りサル」・・・。
一体なんという「落ち」だろう。
シマリスはもう飽きてしまったのか、それっきり現れることはなかった。
悔しい程に身勝手さを見せつけた彼はまぎれもなく真の「野生動物」 だった。
全く馬鹿げた話に聞こえるかもしれないが、野生動物と対峙して共有する 時間
の中では言葉では説明のつかない不思議な感覚を抱くことがよくある。
お互いが興味を抱いたり、駆け引きをしたりする行動がそんな心境にさせ るの
かもしれないが、時としてお互いの存在や気持ちまで認め合うことも あるので
はないだろうか。
僕はきっとあると思う。