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2012/05/28

皆様、ご無沙汰しておりました。 本当に早いもので、暦の上では「立夏」をとうに過ぎて「小満」、「万物盈満(えいまん)すれば草木枝葉繁る」、すなわち、陽気がよくなり、草木などの生物が次第に生長して生い茂る季節です。

山菜や筍がニョキニョキと生えてきて収穫と食べるのに忙しい日々も過ぎ、畑の青豆類の美味しい季節。毎日筍ご飯!から、毎日豆ご飯!と季節は移りながらも、相も変わらず日々のご飯の美味しさに狂喜し続けている、お百姓になりたい、川口巽次郎です。

田の苗代ではお米の苗がすくすくと育ち、田では穂を伸ばした麦が熟して黄金色に輝き始めています。 忙しかった夏野菜やささげ豆、いんげん豆などの種降ろしにもようやく一息付いているこの頃です。

長い話になっている秘伝(???)の味噌作り、いよいよ(???)今回が最終回です。

先回まで、わたくしの味噌作りは自分で糀をたてるところがミソなのだ。 で、その糀は、コウジカビ菌を買ってくるのではなく、我が家で掛け継いで飼っている糀についているカビ菌を使う「友麹」という方法を使ってたてるのだ、というお話を致しました。

これは一重に、わたくしの貧乏が為せる事であります・・・。

・・・が、そもそも「糀」は、本来この地球上の自然界のどこにでも住んでいる「コウジカビ」と呼ばれている一群の菌類が作ってくれてきたものなのであって、工場のような特殊な環境で特定の菌種だけを純粋培養されたものを買ってこなければ出来ない、というものでは無いのであります。

お味噌も、お醤油も、更には、最近巷で流行るらしい「塩麹(しおこうじ)」、そして、お酒も、全て、それを作ってくれる「糀」を作る菌類は自然界に偏在して来たのであり、だからこそ、我々のご先祖様方がこのようなおいしい食べ物を作りだすことができたのであります。ま、酒税法違反になるからわたくしはお酒は醸しませんせんけどね(笑)

で、この連載の胆であるわたしの糀の育て方。

お味噌は農閑期でもある冬季、春のお彼岸前に仕込むのが良いとされていますが、コウジカビ菌が好むのは温度30~40度、湿度95%以上、という環境です。寒い冬、そんな環境はなかなかありません。炬燵の中が理想に近いですが、麹カビを育てる2~4日程の間、ずっと炬燵を点けっぱなし、というのは環境にやさしくありません。いや、貧乏人には厳しい・笑。

実は素晴らしい場所があるのです。

 

それは・・・、寝床の中です。

 

…。

 

言ってしまいました…。

蒸したお米に友麹(以前にたてた糀)を混ぜたものを入れた容器をお布団に入れて一緒に眠るのです。

わたしは大量に仕込む場合は大きな鍋を使いそれを抱きかかえて眠るのです。

きっと、昔の人たちもこうして懐で温めながら糀を育て掛け継いでいたのだろうなぁ…などと妄想しながら、甘い糀の薫りに包まれて甘い夢を見る私なのです。

ちなみに妻に云わせると、「わたしは寝相が悪いから無理。」との事でした。

わたしの糀への愛情、執着故に可能な技なのかもしれません。

以上、秘伝伝授終了しました。

物好きな方はぜひやってみてください。

結果、糀は出来たが、恋人との仲が悪くなった、夫婦が終わった、などという事態になったとしても、私の方ではクレームは一切受け付けられません、 ご自分の責任において解決下さいますようお願いします。

さて、こうして糀が出来たらいよいよお味噌の仕込みとなります。 普通、味噌を仕込む、という話はここから始まるのですよね。という事でここからのお話はネット上にも溢れておりますから簡単にポイントだけ。

味噌の原材料は、重量比で穀物と糀が1対1。塩が穀物の0.5(半分)、という割合を基本として覚えておけば簡単です。 この原材料に水分が加わりまして、重量比で1.8倍程、塩分濃度12%程の薄味のお味噌が出来上がる、という事になります。

上記の糀を少なく、塩を増やすに応じてより辛口のお味噌となります。

さて、それでは仕込みの手順をば。。。

先ず、計った大豆を洗ってお鍋の中に浸水します。豆の容積の3倍量を目安のお水に一晩浸けておくと、翌朝には豆がぷっくりと水を吸い込んでいます。 水が少ないと大豆が膨れて水面から大豆が出て乾いてしまいますからそうならないように気を付けて。

次に糀に塩をまんべんなく混ぜて置きます。「塩切り」と呼ばれる作業です。塩を混ぜ込む事で糀カビ菌の働きを弱め、糀カビが作り出してくれた酵素やアミノ酸が溶け出しやすくする作業です。

我が家では大豆は庭のカマドで薪炊きにしますので、翌日のお天気が良さそうな日の前の晩から作業に懸ります。 晩御飯を終えてからの一仕事、という感じですね。

さあ、準備が出来たら明日の仕込みに備えてぐっすり眠りましょう。 人間が眠っている間に、大豆はしっかりと水を吸い込み、糀は酵素をたっぷり沁みださせて待っていてくれるでしょう。

翌朝、鍋の中で大豆がしっかり膨れているのを確認してから、竈に火を入れ、鍋をかけます。  # おぉ、薪はしっかり用意しておいてくださいね!

やがて大豆が煮える素晴らしい香りが漂い始めます。水は常に多すぎず少なすぎず。豆がヒタヒタになっているよう随時水を足しながら煮て行きます。大豆が指先で挟んで潰れる程度に軟らかく煮えたら火から降ろします。あんまり豆が美味しくて、ついつい摘まみ食いし過ぎになりますね。

大豆が煮えたら力仕事。潰します。わたしは大きな擂鉢と擂粉木を使っていますが、大量に仕込む方々はお餅搗きのように臼と杵を使ったりもするようですね。 食品用のビニール袋に入れて踏んで潰す、というやり方も良く紹介されていますが、貧乏な我が家には勿論そんなビニール袋はありません・笑

この際に豆の煮汁は捨てずにとっておきましょう。

潰した大豆が人肌くらいに冷めたなら、昨晩「塩きり」しておいた糀を均等になるように混ぜてゆきます。 均等に混ざったらそれを大人の握りこぶし位の大きさの団子にまとめてゆきます。 この際にどうも固くてまとまりにくいなぁ、という場合にはほんの少しだけ大豆の煮汁を混ぜて調整します。

そうして、出来た味噌団子を瓶に投げ込んでゆきます。バシッバシッと音が出る位に勢いよく。これは味噌の内部に空気が入ってカビが入ったりしないようにするためです。

味噌玉を詰め終えたら最後に均した味噌の表面を隙間がないようにラップや笹の葉っぱで覆います。 隙間に塩をふって覆いにするのも良いでしょう。

最後に蓋をして重しを載せておきます。これはお味噌の熟成中に酵母菌の働きなどで炭酸ガスが出たりしますので、瓶の中から空気が抜けて味噌の発酵が健全に進むようにする工夫です。

仕込んでから9か月程、暑い夏の時期を一度越えさせると美味しいお味噌になります。その間は基本的には何もしなくても大丈夫。時々覗いて様子を見てあげるとお味噌が喜ぶかもしれません。表面にカビのようなものが育ってくる事がありますが、特に白っぽいものは産膜酵母というもので特に害は無い、もしくは、旨味を加えてくれる素である、という説もありますので特に気にせずに置きましょう。水分が多めな場合にはお醤油のような色をした水が上がってくることがあります(「湧く」とも言うそうです)が、これも気にせずに。

何かしないと不安だなぁ、という方は「天地返し」をして気を鎮めると良いでしょう。

あとはひたすら、スローライフの最強の友である、菌と酵素と時間に委ねます。

あぁ、今年も美味しいお味噌になりますように!

2012/05/28 06:08 | kawaguchi | No Comments