« | Home | »

2012/03/08

ネイル技能検定試験、特にプロとして通用するか否かの目安となる2級・1級は、
半年に一度の開催とあって受験生もかなりの緊張感をもって臨みます。

その方の、今後の方向性を左右するかもしれない大事な試験です。
私たち運営側も責任をもってサポートしなければなりません。

会場は独特の緊張感に包まれます。
プレッシャーや緊張に震えてしまう指先、でもその指先でベストの技術を行わなければなりません。
それがまた緊張を呼びさらに震えが止まらない…。
私も経験したので(コンテストにおいてはいまだ経験中!)よくわかります。
人によっては事前にお腹の調子を崩す方もいるようです。
道具類のセッティングを済ませると、いよいよアナウンスが流れ本番前の最終準備時間に入ります。
事前審査といって、試験前に様々な点をチェックする時間です。
要項での規定違反がないかなどを主に見てまわります。
ここからすでに減点式のジャッジが始まっているので、受験生さんも怯えたように試験官を見上げます。

減点式とはいえ、意地悪な視点であらを探すわけではありません。
あくまで決められた公平なチェック項目に則っているのですが、
第三者にチェックされるというのは緊張するものです。
もちろん、ぜんぜん怯える必要はないんですけど…。
すがるような目で「大丈夫ですよね?私、ヘンなコトしてないですよね?」的な表情をされる方が多いように感じます。
その緊張をほぐすため試験官の多くは、優しく微笑むように接することを心がけている場合が多いと思います。
なかには忙しいタイムスケジュールにおされ、その余裕がない方もいますが。
後日の感想はここで分かれるようです。

「試験官が超怖かった!」とか「すごい優しかった」とか。
またこの印象が、将来自分も試験官(イコール認定講師)になりたいかどうかのきっかけにもなるようです。

いずれにせよ、緊張で顔が強張っている方がほとんど。
その空気は私たちにも伝わり、私語禁止の会場は針を落としても聞こえるくらいシンと張り詰めます。

いよいよスタートのアナウンスで実技試験開始です。
ここからはひたすら夢中でこなしていくので、緊張も忘れるようです。
私たちはその間も何か起こればすぐ対処が出来るように、
また途中の審査もしながら担当エリアを巡回します。

暇なのはモデルさんです。
2級なら90分、1級だと150分、ひたすら両手を差し出しジッとしています。
何もすることがないので、キョロキョロ(動けないので目だけ)周囲を観察している方や
襲ってくる眠気と必死で戦っている方がほとんど。
なかには親御さんをモデルにされている方も多いので、そんな方々は大抵心配そうにお子さんの手つきを見つめています。
男性もモデルが可能なので、彼氏やご主人、お父さんやご兄弟のように見受けられる方も多数います。
おそらく、女性より男性の方がこの拘束は苦手のようです。
当初は興味津々で「オンナの園」を観察していたりしますが、
時間の経過とともに見るからに生気が失せていくようです。
実技が終わりホッとしたのもつかの間、その後の審査(こちらも1時間弱)がさらに追い討ちをかけ、
すべてが終わりモデルさんが解放される頃には死んだ魚のような目をしている方も。
その点、女性はそれほど様子が変わらないようです。
(もちろんすごくすごく疲れているとは思いますけど)

また、お母さんらしきモデルさんの場合、
試験官と目が合うたび「よろしくお願いします」のような含みで軽く頭を下げたりする方もいて、
こちらとしては非常に恐縮してしまいます。

試験中には、ネイル特有の匂いで一時的に気分の悪くなる方もたまにいます。
会場には救護室が用意されているので、休まれると大抵は回復されますが、
その間受験生さんの試験が待ってくれているわけではありません。
万一それが原因で試験内容に支障が出たとしても、
それは理由にならないので受験生さんにとっては仕方ないとはいえ無念だと思います。
モデルさんの心配と自分の無念。
泣いてしまう方も少なくありません。
そんな姿を見るのは私たちもとても辛いです。

受験生は実技の後、審査中はいったん会場外に出ます。
ここでも自分の実技を振り返り、後悔の涙を流している方もいます。
スクールのお友達を見つけ、小声でお互いの報告をしている方もいます。
大抵は「駄目だった…」という声です。結果はどうあれ、この時点で余裕ある様子の方は稀です。

審査が終わり、モデルさんが退場されると今度は筆記試験です。
筆記試験はそれほどの難関ではないので、普通にお勉強していれば大丈夫。
実技に比べると気も楽なのでしょうか、実技を終えて一安心という感も強く緊張がほどけ、会場の空気は変わります。
「もうすぐ終わる…」と表情も和らいでいる方が多く見られます。
緊張の糸が切れたように呆然としているように見える方もいます。
筆記試験が終われば、無事試験終了です。

2日間のうち、2級は午前と午後の2回、1級は1回のみ行われます。
多くの試験官は2日間通して運営を行います。
それこそ、朝から夕方遅くまで。
短い休憩があるだけで、ずっと立ちっぱなしです。
肩や腰の不調を口々に訴え、足をさすり、朝とは明らかに老けた顔で2日間を終えます。
何はともあれ、大きなハプニングもなく終了することにホッとします。

会場には、自分の生徒さんを見つける講師も少なくありません。
いつもの力は出せただろうか、何か失敗はしなかっただろうか、
そんな心配もあり、試験官も合格発表までは内心落ち着かなかったりします。
実技中の危なっかしい手元を見ると、出来ることなら片っ端から変わってあげたいくらいの時もあります。

私の場合、試験後には試験を終えた生徒さんからの連絡ラッシュが始まります(笑)。
失敗を自覚し、すでに泣いてしまっている方。
終了後に合流したモデルさんの爪(試験の作品)を写メで送ってくれる方。
色々ですが、共通して一言、
「とにかくお疲れ様」とだけ伝えるようにしています。

不測の事態があるとしても、半年間の自分の実力でしか結果は出ません。
「本番はなんとかなる」と言う方もいますが、まずなりません。
それを思い知っての反省なら、きっと次につながると思います。
私が直接審査をしたのではないし、結果は出ているとはいえ誰にもまだわかりません。
今感じている気持ちを忘れず、約1ヶ月先の合格発表を迎えてほしいだけです。
その先のことはそれから。
それまでは、少しの間ネイルを忘れてリフレッシュするのもいいかもしれません。
これまで一緒に戦ってきた私も束の間のホッとした気分になれます。

合格発表があれば、また次に向けて動き出します。
半年に一度の試験ではありますが、
私にとって仕事として携わるようになってからは日常に組み込まれたリズムのひとつです。
その一つ一つのリズムが、生徒さんや受験生さんにとっては一生に一度のことかもしれない、
といつも忘れないように心がけています。

2012/03/08 10:18 | makiko | No Comments