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味噌(みそ)の仕込みを始めたので、お米の籾を摺り過ぎて肩が痛い、お百姓になりたい、川口です。
ということで、お約束の我が家の味噌作りの秘伝(??)公開、第一弾は、「籾摺り(もみすり)」です。
世の中には色々な方がいらっしゃいます。が、味噌(みそ)の仕込み方を紹介するに際して、お米の籾摺りから始める人はかなり珍しい、というか、皆無ではないしょうか?
しかし、我が家での味噌(みそ)仕込みにおいて、籾摺り(もみすり)は最初の大きな壁となる工程なのです。
何故ならば、田で収穫したお米、籾米(もみごめ)が沢山あったとしても、そのままでは蒸したり炊いたりといった調理ができる「お米」にはならないからです。蒸す「お米」が無ければ麴(こうじ)が立てられない。麴が無ければ味噌(みそ)は出来ない。であります故、味噌を仕込むにあたっては、まずは、籾摺りをしてお米を手にしなければならぬのです。
そもそも「籾摺り(もみすり)」とは如何なる営為か?と申しますと、お米の可食部分である糠に覆われた杯と胚芽を固く守っている防護服、すなわち、「籾殻(もみがら)」を脱がせて玄米(げんまい)にする作業です。お米を調理して人が食べられるようにする為に必要な作業の中でも古来最も手間が懸る部分の一つと申し上げてよいでしょう。
我が家では毎日この籾摺りをしては、それで得られる玄米を食い繋いで暮らしております。籾摺りせずば食うこと能わず、なのであります。我が家での籾摺り風景についてはすでに書いた通りですが、正直、日々の食い扶持を準備するだけでも大変な労力を要する作業です。ですから、それに数倍する量のお米を用意せねばならない味噌仕込みにおいて、如何にこの籾摺りが大きなハードルとなるかはご想像頂けることでしょう。
以上、普通に暮らしている方々には全く縁の無い背景説明でした。では、早速、この籾摺りの実態を初公開させていただきましょう。
まず、以下のようにすり鉢に籾米を入れ、擂粉木で摺りはじめます。
擂粉木は元々は機(はた)用に伐って来た樫の木を自分で削って作ったものです。大型なので籾摺りや豆腐作りに大いに活躍しています。
あまり力を入れ過ぎますとお米が割れてしまったりしますから、優しく丁寧に、とはいえ、きっちりその鎧(よろい)のような籾殻(もみがら)を脱いでもらえるよう、適度な力を加えつつ摺ってゆきます。よい加減で摺るとやがてこのように籾殻(もみがら)が剥がれて浮いてきます。
そうしましたらおもむろに、すり鉢を顔の前まで持ち上げまして、息を吹きかけて剥がした籾殻だけを吹き飛ばします。この工程はこの我が家における摺り鉢式籾摺り法(って程のものではありませが・笑)の核心部分となる作業ですが、映像でご覧にいれることは控えさせて頂きます。なぜならば、余りに間抜けな感じがする風情なので恥ずかしくて写真はお見せしたくないのであります。ぜひ、いつか現場をご確認しにお越しください。あしからず。
上手に籾殻を吹き飛ばしますと、ご覧の様に玄米が現れてきます。
色とりどりの玄米です。何故にこのようなミックスされたお米になっているのかと申しますと、ここで摺っているお米が2番籾(にばんもみ)を集めたものだからです。2番籾は、お米の収穫後の調整作業の際に、余り実が入っていない小さ目なお米の粒だけを唐箕を使って選り出しておいたものです。(これを行う作業が「唐箕掛け(とうみがけ)」です。)普段の食事で炊いているご飯では、みなさんと同様に種類別の粒の揃ったお米を炊いて頂いていますが、お味噌や甘酒、水飴に加工したり、お粥にして頂く場合にはこの2番籾を使うようにしているのです。自然のめぐみを余すところなく無駄なく頂くための工夫です。
何度か、この摺っては籾殻を吹き飛ばすという作業を繰り返してから、最後にざるで細かい糠(ぬか)を落とし、摺り残した籾や殻を丁寧に手で除けるとようやくこのように綺麗な玄米になります。
僅かこれだけの玄米を得る為の作業には、熟練しても10分程はかかるでしょうか?お味噌を仕込む為には少なくとも大豆と同量の麹を準備せねばなりませんので、まぁ、ざっとこの50倍位のお米は準備せねばなりません。まぁ、気が遠くなる作業です。
ちなみに、この吹き飛ばした籾殻には糠(ぬか)が混ざっていますので最後には細かい篩(ふるい)にかけてこお糠だけを取り出します。このようにして毎日摺っているお米から出る糠を加えた糠床でこんな風に美味しい糠漬けが出来るのです。
また、籾殻は細かいものは糠(ぬか)と共に畑に撒くととても良い補いになります。根菜類を保存する際にはこの籾殻を被せておきます。全く無駄になるものはありません。実にエコなのです(古い!)。
しかし、お蔭で久しぶりに肩が凝りました。あ、それは久しぶりにPCに向かってこの原稿を書いたからでしょうかねw?
それでは、次回、「麴たて」までしばらくのお別れです。