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2012/02/02

舞台人は舞台の仕事、依頼をいただいたあと、気にかけることがある。
舞台上での仕事はもちろんだが、お客様が呼べるかということ。

最近は、チケット販売協力があることが普通だ。

これはお客様に作品や自分自身、もしくは共演者に興味をもっていただいて会場に足を運んでいただきさえすればなんの問題もない。

友人が、とあるオーディション最終選考後、
なぜ自分が選ばれなかったのかときいたことがあるそう。

「君が、今回選ばれたタレントと同等の能力があるとして、
君をキャスティングしてお客様は会場にくるのかな。」

そうハッキリ。

作品にキャスティングされ、出演契約条件として
稽古日程、ギャランティー、ノルマ=約束されただけのお客様を集客することができる
が交わされることになる。

3月に研修所の修了公演があるのだが
仲間が「チケット費をいただくのが申し訳なく思ってしまって、じゃんじゃん配ってしまいそう。」
と言っていた。

私もそういう経験がある。
昨年の夏、オペラ「トスカ」登場1分ほど、しかも舞台袖の影歌なので姿を見せない「牧童」のパートをいただいたことがあり

その舞台は、ノルマはなく、チケットを欲しいだけいただけたので
出演者はベテランの方をはじめ、若手スターの方々とご一緒させていただき
私を聴きにきてほしいわけではなく
若手の仲間たちにはとても勉強になるから、と配布してまわった。
オペラを観たことのない合唱人の仲間にも興味をもってほしくて、とにかく配布。

本番近くなって、研修所で助演にきてくださっていたベテランの先生が
「それ、行きたいんだけど。チケット買ってやるよ。」
と言ってきたのだった。

今まで散々配布してたし「いえいえ、頂けません。」とお断りしたら

「お前がよくてもな、他の出演者は何万も払って聴くような歌手なんだよ。
それだけの仕事してんの。お前も同じ現場にいるんだから同等だよ。
貰わないってのは他の奴らに失礼。だから、貰っておきなさい。
こうすれば、自分も頑張れるだろ。」
という言葉をいただいた。

その先生には苦言として「開演前の会場、客席に出演者がうろうろ姿を見せてはいけない。
チケットをお金を払って、観にきているんだから。」とも教えていただいた。

学芸会、発表会と公演、仕事との違いというもの。
この言葉ではっとさせられたのだった。

それからは来てくださる気がある方は何もいわなくても
「この日行くよ。チケット用意しておいて☆」と声かけてくださることにも気がついたのだった。

ある先生が
「義理でチケット買って下さったんだけど、いざノリで行ってみたらものすごい世界で
“思いきって来て良かったわ。”と言ってくれるときが嬉しいのよね。」
とおっしゃった。

私も、オペラや舞台の世界をほとんど知らない人たちが終演後に、

「初めてだったんだけど、こんなに引き込まれる世界だったんだ。
また教えてね!」と言ってもらえるときが
表現者の一番の喜びだと思っている。

2012/02/02 04:02 | uika | No Comments