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先日、札幌市内で相次いでヒグマが出没しているニュースが伝えられた。
北の大都市である札幌。その都心部に近い地域で複数と思われるヒグマが出没した為に
付近の休養地となっている公園は閉鎖され、週末に野外で予定されていた催しは中止となり、
学校では集団下校の措置が取られ、出没地には多数のパトカーが出動するなど一時厳戒態
勢となった。
その後、現在でも目撃情報や通報が後を絶えない。
本来山奥で生活しているはずのヒグマがこれだけ街に出てきているのにはいくつかの原因
が考えられるのだが、ひとつにはドングリなどの木の実が不作であるということも挙げられる
だろう。その為に広いエリアに渡ってエサを求めて徘徊していることが考えられる。
ただ、これは一時的な現象とは捉えがたい問題だ。
今年は札幌市内に限らず、国立公園付近でも人を恐れないヒグマが相次いで出没した。
大雪山国立公園では秋の紅葉の盛りを迎える頃、たくさんの観光客が通行する道路際で
人間のリュックを漁って中のお弁当を食べてしまうという事件が起きた。
ちなみに危険なクマと化してしまったその固体は未だに捕獲されてはいない。
普段、国立公園内でヒグマに関する仕事をしていて強く実感するのだが、通常野生のヒグ
マは人間の存在を察知すると一目散に逃げてゆくのだが、一度人間の存在を受け入れて
しまった固体はどんな事をしても逃げない・・・。
それが食べ物の為なら、近くに車が走っていても、近づいて大声で叫んでみても首を上げ
ることすらなく平然と採食をしている。
世界遺産の地、知床では以前からこのような問題に悩み続けてきたと聞いているが、最近
はそれ以外の地域でも同じような現象が定着しつつあるような気がしている。
問題を犯したクマはやはり駆除するより仕方がないとは思うのだが、人里に近づく度に駆
除していたのでは、どれだけクマを殺し続けなくてはいけないのか判らない。
もちろん、より良い方法を模索して野生動物達が人里に近づかない為の未然の対策をとっ
ていくことは大切なことだと思うのだが、一方では森を切り開き、人間の生活圏が拡大して
いる現状を考えると、どうしてもどこかで無理が生じてくるだろう。
豊かな自然が徐々に縮小している現状の中で、自然の生態系の一部は既に崩壊し、悲し
くも人間が駆除などの方法によってそのバランス保たなくてはいけない状態となっている。
いったい、人間にとっての「自然」とはどういう位置付けなのか、この先どうやって社会と自
然が共存していくべきなのか、自然界からやってきたヒグマ達はしきりにその問題を人間に
訴えている様な気がしてならない。
今、もう一度原点に返って考えなければいけない時が訪れていると強く実感している。