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2011/09/13

 

夏の香りの残る日射しがケヤキの葉の間から、

石畳の上を転がるように遊んでいる、

まだ日暮らしが鳴く夏の終わりに、

風が今日も爽やかに私の思い出を抱きしめてくれる、

遠くでケヤキの葉が風に揺れて

あなたの面影を私に伝えようとしている、

一度も会ったことのないあなたの笑顔が見えたきがする、

私が迷い道に迷い込んだ時に、

あなたは私に愛の隠し場所を教えてくれた、

あなたは私に夢の探しかたを教えてくれた、

あの時に自分の夢を諦めていたら私はどうなっていたんだろう、

あの時のトガッタ私は何にトガッていたんだろう、

総てを拒否して自分の中にだけ生きようともがいていた私、

私の肩を優しく抱きしめるように風を感じる、

今も大きなケヤキの葉が風に揺れて私に何か伝えようとしている、

自分を信じるようにとあなたが通り過ぎて行く、

こんな風の見える日は、

会った事のないおじい様を思い出す、

あれからどれくらい経ったんだろう、

あの時おじい様の執事に会うことがなかったら、

私は本当のおじい様を知らないまま生きて行っただろう、

私は自分の未来に気が付かないまま生きて来ただろう、

小さな男の子がケヤキの切り株の上に、

赤いシャベルで、

土を盛り上げては手の平で叩き、

又赤いシャベルで、

土を盛り上げては手の平で叩いている、

男の子の周りには木漏れ日を気持ち良さそうに遊ばせている、

ハンチングをかぶりギンガムチェックのパンツに、

黒の編み上げヒールを履いた若いカップルが頭の左側だけを刈り上げ、

右側の長い髪の毛を赤く染め、

誰からも愛されたいと願っているのか、

今生きている実感を感じたいのか、

木漏れ日の遊ぶ石畳をゆっくりと通り過ぎ永遠の中に消えて行く、

ゴールデンレトリバーを2匹連れた小柄な女性、

大きなサングラスをかけ白いカントリー風のワンピースを風に揺らせ、

木漏れ日の中に甘い香りを漂わせながら通り過ぎて行く、

道行く人は甘い香りにそそのかされ足を止めて彼女を見つめている、

2人の女子高生がソフトクリームを舐めながら、

未来の自分たちをチェックしに来たように、

ケヤキの木漏れ日の中を、

さっそうと通り過ぎるスタイルの良い女性に見入っている、

ブティックに入る勇気がない彼女たちは、

まるで未来を覗き込むように、

ショウウインドーに額を押し付けて、

ガラスをすり抜けて店内には入り込んでいた、

白の大理石で統一された店内では、

身体にフィットした黒いスーツを着た女性が、

少女たちがウインドーにソフトクリームを付けるんじゃないかと、

気にしながら中年の女性の客に嘘を並べたてている、

明るい未来を信じる若いビジネスマンは、

携帯で大きな声で話しながら、

まるで将来を約束された道を歩くように自分の未来に見入っている、

あれからどのくらい経ったんだろう、

不安で満ちあふれていたあの頃、

目にする総てのものに嫉妬していたあの頃、

自分の未来がまるで手からすり抜けてばかりいた頃、

きれいな景色は私をだまそうとする作り物に見え、

誰もが自分の不幸を知っていて、

自分がどんな顔をしているのかと覗かれていたような日々、

誰か私の不幸に気が付いて、

誰かが私の運命を変えてくれると、

いつも明日に願っていた日々、

あの日、私は何人ものアーティストに出会った、

総ての人は舞台の上で何億光年もの先からキラキラ輝く青い光を放っていた、

総ては純粋な光で青く輝いていた、

私のちっぽけな不幸なんかおかまい無しに輝き、

私の中に突き刺さってきた、

私はきっとあの時に生まれ変わる勇気に気が付いたのかも知れない、

私の中のトビラの鍵穴に、

彼らは容赦なく青く光り輝く鍵を差し込んで来た、

見えているものだけが総てと思っていた私なのに、

彼らは突然私の中にあるトビラを叩き始めた、

そして私は昨日までの私を総て捨て、

ほんの少しの勇気を手に握りしめて、

トビラを開けた、

あなたはトビラまで私を案内すると、

トビラを開けてその先の冒険をするのは君だよと言って消えて行った、

そこは温かく冷たく、

柔らかく鋭く、

優しくゆったりとした時間だけが流れていた、

目の前に見える何もかもがうつろい始めた、

手の中にあると思っていたものは、

総て指の間からこぼれ落ちて私はいつも一人ぼっち、

そんな時、今まで離れ離れになっていた私と自分が重なっていった、

そして柔らかな未来に包まれて私は満たされていった、

あなたは私に素晴らしいアーティストを巡り会わせてくれた、

私は川の流れにしっかりと立ち、

杭を川底に打ち込んで、

川の流れに立ち向かう事が出来るようになっていた、

川の流れはそんな私を連れ去ろうと、

私に運命という言葉を散々浴びせかけてきたけど、

それでも私はその川の中に立ち続けた、

しだいに川の流れは私を避けるように流れ出し、

時とともに川の流れは私を受け入れだした、

その時の感触は今でも忘れる事が出来ない、

何度もイラストレータの道を諦めようと思い、

それでも木漏れ日から舞い降りるあなたの笑顔を感じるたびに、

私は川の流れの中に留まる事が出来た、

あなたが私を見守ってくれていたように、

私も自分を信じてここまで辿り着けた、

今、ケヤキの揺れる通りを歩きながら、

誰もが自分の舞台の上で自分の役柄を演じようとしている、

台本を読むように自分の運命に従って、

誰もが自分を演じる事に一生懸命になっている、

だけど運命なんて無かった、

台本なんて最初から無かった、

総ての未来は自分で作っている事を知ったわ、

そして私は川の流れに留まったの、

そして私は夢を叶える事が出来たの、

そして私は愛する人と巡り会い、

今ケヤキの木漏れ日の下で遊ぶ一つの命をこの世界に送り出したの、

その事だけは私がこの世界に一つだけ確かな事、

総ては柔らかな風と一緒に流れ、

総てはメリーゴーランドのように繰り返し回り続け、

一つの命が戻り、

一つの命が現われるの、

何かを伝えたくて、

私の周りで起こる総ての事は私の望んだ事、

あなたの未来は誰にも決められないのよ、

あなたはあなたの運命を切り開いてね、

あなたのママがしたように、

あなたの未来はあなたが作る事が出来るのよ、

路地から見える通りでは、

ケヤキの木が今日も木漏れ日を石畳に遊ばせているわ、

こんな日に私は、

木漏れ日と石畳を遊ばせる、

会った事のないおじい様を思い出すの、

そしてあなたが私に伝えたかった事を思うの。

 

※ この物語は2011年9月11日に上演されたJunkStage第三回公演の、

物語を素材としています。(作・演出・脚本 スギタクミさん)

2011/09/13 02:38 | watanabe | No Comments