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2011/04/30

「私たちミュージシャンにできることは音楽だけなので…」

地震後のライブで良く聞かれる言葉でした。
私自身はこの言葉に非常に違和感がありました。週末を利用して
現地にボランティアに行っている方々、物資を集めて届けている方々…
職業は関係ないし、現にミュージシャンやライブハウスの経営者にも
そうした方がたくさんいます。
その行動力と勇気に尊敬の念を覚えながらも私はスケジュールどおり、
普段通りの音楽活動を粛々と続ける日々です。
 どうして違和感を感じたのか。それはきっと
 「音楽しかできないから」と言いながら演奏するのは、何か誰かに
言い訳しているように聴こえるからかもしれません。

音楽は皆で楽しめるものでもあるけれど、逆にとても個人的な存在で
あると思います。100人集まって同じ音楽を聴いても、抱く想いは
100人100様。有名なミュージシャンはたくさんの人に共感される
力があると思いますが、やはりファン一人ひとりの想いは様々です。
でも、それぞれが、それぞれの形で音楽の力に癒されたり、勇気や元気を
もらったりしていることは間違いないと思います。
一度にたくさんの人に聴いてもらえなくても、音楽の力を信じて演奏して
きました。でも音楽する意義、なんてきっと考えはじめると苦しくなる。
演奏していることが自分だから。自分もそれによって生かされているから。
 自分の行ける範囲内だけれど、震災後様々な場所で演奏し続けて、
それを再確認しました。

冷たい言い方で誤解を生むかもしれませんが、出来事というのは、不幸な
こともそうでないことも、本当に近しい人に起こらなければなかなかその
気持ちに共感する、というのは難しいと思います。だからこそ想像力を
働かせてその人の気持ちに思いを寄せることは必要だと思います。でも
やっぱり戦争も貧困も災害も、経験しないことに思いを寄せすぎると
ひとりの人間には荷が重すぎてパンクしてしまいます。
関東近辺ではこのパンク寸前の気持ちをかかえている方々が多いのでは
ないでしょうか。
「被災者の方々」「私たち」と一括りに出来ない、ひとりひとりの想いと苦しみに、
私の演奏を聴きに来て下さる方、CDで聴いて下さる方と対峙しながら、これからも
自分の出来る範囲内で活動して行きたいと思います。
 震災前も震災後も、生きるということには変わりないのです。

2011/04/30 02:50 | toyama | No Comments