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2015/03/06

皆さん、おはようございます。

私のホームグラウンドであった、
お好み工房ほわっとが、2月末で閉店となりました。
ほわっとでのぼんちオペラは「トスカ」が最後となりました。

2月22日にはさよならパーティ第1弾があり、(第2弾は3月1日)
多くの仲間が集まって最後の演奏を致しました。
計816回のライブのうち、オペラ公演が50回ありました。
それほど広大でもない飲食店で、これだけのライブがあり、
その1/16がオペラだったというのは、快挙だと思います。
そのうち、ぼんちオペラが以下の通り。

2010年6月26日 ポッペアの戴冠
9月18日 魔笛(ハイライト)
2011年2月26日 フィガロの結婚
9月25日 劇場支配人
11月26日 皇帝ティートの慈悲
2012年4月30日 カルメン
9月22日 魔笛
11月23日 カヴァレリア・ルスティカーナ
2013年2月11日 ドン・ジョヴァンニ(プラハ初演版)
4月29日 フィガロの結婚
10月5日 マダマ・バタフライ(初演版)
2014年1月13日 こうもり
4月12日 コジ・ファン・トゥッテ
9月20日 トスカ(初演版)

以上14本のうち、カルメンとカヴァレリアを除く12本が演出作品。
指揮は2010年の魔笛を除く13本、
ティートに至っては、指揮・演出・ティート役と重責でした。

この他に演奏会がありました。

2009年2月20日 冬の旅
3月20日 のとかなる春の響きコンサート
10月18日 通算500回記念コンサート
2010年2月13日 冬の旅
2011年1月10日 没後220年モーツァルトガラコンサート
12月5日 没後220年モーツァルト「レクイエム」(梵智セレクト版)
2012年8月4日 フィッシャー=ディースカウ追悼演奏会
2013年1月14日 ほわっとモーツァルト室内管弦楽団(指揮)
8月3日 愛の歌~シューマン

以上23のライブに出演致しましたが、
454回目のライブが初登場でしたから、
いわば後半の人間ですので、
後半16回に1回くらいの割では出演したことになります。
ほわっとオペラとしては、ポッペアが24回目でしたので、
これまた50回のオペラの後半の人間です。
そのため、マスターからは中興の祖と評価いただいております。(笑)
これが、ほわっとでの6年間の総決算です。

そして、昨年のコジ以来、
場所をサロン・ドゥ・アヴェンヌにも広げて、
8月8日のコジ・ファン・トゥッテ
11月14日のトスカ
以上2本をほわっと公演から引っ越し公演し、
この5月15日の「椿姫」を以て、
純粋なアヴェンヌオペラの幕開けとなります。
その後は「ドン・ジョヴァンニ」(ウィーン再演版)、
「セヴィリアの理髪師」、「フィガロの結婚」など
予定しております。

以上がぼんちオペラの系譜ですが、
今のところほわっと、アヴェンヌという、
飲食店オペラで展開しております。
こんな規模でも15人から20人の所帯となりますが、
ホールでのオペラともなると数倍以上の人間が動くことになるわけです。
それはそれで大変なこともありますが、
そうしたオペラにはない大変さが、飲食店オペラにはあります。
いわばプランナーとして、6年間14演目に渡って関わった経験から、
多少はものを言えるだけの状態になっていると思いますので、
ほわっとの閉店を機に、少し思うところを書いてみたいと思います。

関東関西を問わず、いくつも飲食店オペラは存在を耳にします。
ただ、聞き及ぶ限りにおいてそのコンセプトはほぼ同じ。
初めての人に、オペラという特殊ジャンルをわかりやすく紹介する、
という姿勢が、常に根底にあるようです。
確かに、私もあることは願っています。
初めてオペラを観た人が、オペラを好きになってほしい。
これは願っているのですが、だからといって、
上演内容を初心者向きに手加減する、というスタンスは取りません。

そもそも、「オペラという難しいものをわかりやすく」とは考えていません。
「オペラって別に難しくないですけど。」というのがポリシー。
よって、「字幕付き映画見るつもりで見てね」がスタンスです。
映画で手加減する監督なんかいません。
表現したいものを、表現したいように撮るものです。
ですから私はプレトークでも、オペラについての解説はしません。
あくまでも上演する内容について、見るべき角度とか、
時代背景とか、前史とか、そういう説明しかしません。

そして、カットも出来る限りしていません。
なぜなら、名曲・名場面紹介のための上演ではないからです。
作品はノーカットでこそわかることも多いわけで、
そっくりそのまま提供するのが親切というものです。

もちろんそれを作り上げるのに平均20回くらいの稽古は必要です。
その作業のために、必要なものといえば・・・当然決まっています。
1に人、2に人、3、4がなくて5に人です。
それも、人材が必要というよりはむしろ、
仲間としての意識を共有できる人間関係こそ人です。
これは、出演者だけの問題ではありません。
それも大事ですが、まずは場所の提供者との関係、
そして、場所提供者自身の意識のあり方が最重要事項です。

まず、場所を与えているだけで、自分は大して関わらない癖に、
若手を育ててやっている、という意識を滲み出させている人、
というのは、私の思う飲食店オペラには最悪の提供者です。
上演する作品を味わい、一緒に作る意識があってこそ、
演奏者は気持ちよく上演出来ることを知るべきです。
この点、ほわっとのマスターは、
少なくとも日本一の場所提供者であったことは間違いありません。
その傾向が行き過ぎてトラブルになったとしても、
それは巡り会わせの悪い事故だとしか言えません。
その意識がないよりは数万倍マシな話です。

その意味で、主催、制作統括は、
この場所提供者がするのが理想的だと考えます。
出来れば、字幕操作など、実際の上演にも携わるのがベストです。
出演の打診も、基本的にこの人からが良いでしょう。
この点も、ほわっとマスターは申し分ない場所提供者です。
下手すると、自分も出演してますから。(笑)
また、上演台本を自ら書き、演出しますから。(笑)

そして、必ずスケジュール調整係を出演者サイドに置くこと。
場所提供者が制作をしていて、スケジュールもやることがありますが、
これはいらぬ負担から事故も起こりやすいのでお勧めしません。
出来たら主役クラスで1人、スケジュール調整係を置きたいものです。
そして仕事のポイントは、本番約半年前に、
おおまかな稽古スケジュールは出してしまうこと。
そこを過ぎると、稽古場に人が揃わない状況を作ってしまいます。

また、誰かが場所提供者と二人三脚をすることも大事です。
ぼんちオペラの場合、私がそれを担当しています。
主な仕事は、誰に何をしてもらうか、決めて打診することです。
指揮者・演出家として作品の全体像を最初に把握する人ですから、
今のところこれ以上の適任者はいないはずです。
私の打診は同時に指揮者・演出家としての発言、オーダーでもあるので、
道具に関する出演者への相談は、
案外スピーディに答えが出たりもします。
ここに必要なのは、会社組織と同じく、報連相です。

こうしたことは、ほわっとオペラの中で学びました。
現在は、その方式をアヴェンヌオペラで確定させつつある、
という状況です。
ここまでに書いたのは、場所提供者とスケジュール係、そして私、という
たった3人の役割なのですが、飲食店オペラでは
これ以上役員の数を増やす必要もない一方で、
この3人には大劇場オペラではあり得ない一人何役、
そしてそれらを総合的に考える智慧が必要になるのです。

これがベースになって、
初めて出演者達との楽しい交流があるのです。
このベースなくしては、出演者を大事にしようにも、
大事にするだけの土壌が整いません。
ここまでのことが出来れば、
公演の一応の成功は、集客の問題以外、
ほぼ間違いないところまでこぎつけています。
後は、個々人が奮闘努力すればいいだけのこと。

大きなプロダクションにおいても当たり前のことばかりですが、
小劇場だからこそさらに心しなければ、
空中分解を招く致命的な失敗が待っています。
これが、飲食店オペラの作り方の奥義だと私は考えます。

2015/03/06 01:55 | bonchi | No Comments