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2015/01/20

日舞の稽古場公演で「いきほい」を見たお客様から、こんな感想をいただきました。

「酒井ちゃん、コントみたいだった。」

なるほどと思いました。

昔のお笑い番組で、何か悪いことをしようと企んでいる人が、それを実行しようとする度に邪魔が入って、スリッパで頭を叩かれたりして、結局その企てをいつまでも実行出来ないというパターンのコントがあったかと思います。

鎧を持って、いざ戦いに赴かんとする五郎を、その度に舞鶴があの手この手で引き留め、ときには色仕掛け(?)まで使う「いきほい」という踊りは、言われてみればコントの様です。

それを、互いに大真面目にやっているから、尚更可笑しく見えるのかもしれません。

古典のものにあまり触れない人からすると、どうしても、古典芸能は堅苦しいものと思われがちです。

それは、学校の授業において、古文のややこしい文法などを勉強しなければならなかったために、古典のもの=勉強するものというイメージが出来上がっているからなのかもしれません。

しかし、作品によっては、本当にくだらないストーリー内容だったり、歌詞が駄洒落のオンパレードだったりします。

日本舞踊において、“コントみたい”という表現がふさわしい踊りが他にないか思い浮かべてみると、「流星」という作品がまさにそれです。

「流星」というタイトルを聞くと、どの様な内容を思い浮かべるでしょうか?

英訳すれば“シューティングスター”となり、素早さや輝きを象徴する様な、格好良い印象を抱く方が多いのではないでしょうか?

確かに、この踊りに登場する「流星」というキャラクターは、格好良くて俊敏な動きをします。

作品のストーリーを簡単に説明します。

7月7日の七夕の日に、織姫と彦星が年に1度のデートを楽しんで、良いムードになっているときに、突然割り込む様に「ご注進、ご注進!」と登場し、何か重大な事件が起こったことの報告があるかの様です。

しかし、その流星が報告した内容というのは、雷夫婦の夫婦喧嘩の話で、結果的には仲直りしてめでたしめでたしとなります。

そんな他愛もない話を、身振り手振りを使い、お面まで用いたりして細かく実況説明し、それが終わると、また流星のごとく去っていくという、「なんじゃそりゃ?」と思ってしまう様な内容です。

他にも、とんびにカツオを盗まれた奴(やっこ)が、空を飛ぶトンビからカツオを取り返そうと奮闘する「とんび奴」ですとか、「棒しばり」や「身替座禅」の様な、狂言を元ネタにした作品などもそういう類かもしれません。

日本舞踊だ、古典だ、難しそう、堅苦しい…などと言う思い込みがあったとしても、実際には、馬鹿馬鹿しくてくだらない内容で、でもそれを真剣にやっているのが面白い、軽い作品も少なくなかったりします。

次回は、「受付」(古典芸能)をテーマにしたコラムをお届けします。

2015/01/20 10:30 | sakai | No Comments