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北海道最北部へ。
ここ数日、日本列島に流れ込んだ寒気は北海道の日本海沿岸に凄まじい吹雪をもたらした。
車を運転していると時々巻き上げる地吹雪は一切の視界をさえぎり、前後左右全ての方向
感覚が失われてしまう。
酪農の盛んなこの土地は辺りは見渡す限りの牧草地帯。
そして日本海から程近い距離にある為、海から吹き付ける強烈な風が吹きさらしの大地を
そのまま駆け抜けてくるのだ。
道を見失って土手の下に落ちないよう、正面衝突をしないよう、ブレーキを踏みすぎて
後ろから追突されないよう、全方向に神経を集中させなければいけない。
これは冬の撮影行で毎年何度かは直面してしまうとてつもなく恐ろしい瞬間だ。
そんな状況の中、わざわざ撮影に訪れるのもどうかと自問自答しながら、昨年秋に訪れた
森へゆっくりと慎重に車を進めた。
風雪にあおられながら、森に入って彼らの姿を探す。
「もしかしたらダメか・・・」と思いながら頭上を見上げて探すこと数分。
以外にもこの吹雪の中で彼らの姿を見つけることができた。
ここは昨年の秋に偶然エゾフクロウを見つけた森。
この冬も2羽のつがいの姿を確認することができた。
2羽は若いトドマツの枝の付け根で風雪を避け、体を寄り添わせて
じっと耐えているようだった。
どれだけこの場にじっとしているのか、彼らの背中には叩きつけられた雪が
塊となって乗せられていた。
時折突風がやってきて若木が激しく揺れた。
2羽のフクロウは何事もないように枝の上に乗っているが、振り落とされない
ように足の指にはギュッと力が込められているだろう。
強い風と横殴りの雪の為か、できる限り目を閉じているようだ。
嵐を耐え忍ぶ2羽の表情がとても印象的だった。
それにしても、あまりの雪と風に視線の先のフクロウが真っ白に
かすんで見えないほどだ。
僕は時折雪が弱まる瞬間を待ってシャッターを切ってゆく。
滞在時間、約2時間。
その間、風と雪が猛烈に体を叩きつけた。
この日、観察できるのはこれが限界であった。
なにかあればすぐに安全な場所に避難できる人間の生活とは違って、
野生動物達は皆こうしてどこかで嵐が過ぎ去るのをじっと耐え忍んでいる。
今日はそんな現実を強く実感することができた。