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JunkStageをご覧の皆様、こんにちは。最近、すっかり秋めいてきましたね!
この時期は各種放送局でも続々と新番組が始まり、テレビドラマやドキュメンタリーなどの新作を楽しみにしている方も多いことと思います。
ところで本日取り上げるライターのご職業は声優。
そんなの関係あるのはアニメだけでしょ?と思われる方にこそ読んでいただきたい、知られざる業界事情や職業観をご紹介します。
■vol.36 声優・北沢力さん
――本物には敵いません。わかっています。でもやるからにはできる限り小手先じゃないような表現を提供したいんです。(北沢力)
テレビアニメ、OVAから映画の吹替、ナレーションまで幅広く活躍する声優。既存のイメージを越えた「声の俳優」として綴る仕事と情熱。
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声優という仕事の職域は非常に多岐にわたります。
私も北沢さんのコラムを読み始めるまでは正直映画の吹き替えかアニメのキャラクターの声を当てるのが主な職域なのかと思っていましたが、それは大間違い。それらの仕事はごく一部でしかなく、たとえばコンビニの店内アナウンスやカーナビの音声ガイドなども声優の仕事に含まれるのだそうです。
そんな声優という職業を持つ北沢さんのコラムは、ある一つの明快な方針に貫かれています。
それはすべてのコラムが、北沢さんの表現を借りるなら「独り言」、言い換えるなら北沢さんご自身の意見と考えに基づいて書かれているということです。
そんなの当たり前じゃない?とおっしゃる方もいるでしょうが、違います。
コラムライターのハンティングスカウトのため、日々いろんな方のブログを大量に読んでいて思うのですが、主語を明確にして自分のかかわっている何かについて意見を書くことは自身の見識を問われるため、意外と大変なことなのです。
しかし、だからこそ北沢さんのコラムは潔い。
毎週1回という驚異的な更新頻度を誇りつつ、声優という職業について惜しみなく語る言葉はユーモアに富んでおり、そして自分の仕事に関する誇りに満ちています。
表現者として演劇人と声優が根本的には同質であること、アテレコの現場、練習に関する苦労話、デビューしたときの思い、業界ならではの“休日”の概念、ボイスオーバーという声の当て方……。
挙げていけばきりがありませんが、この辺りはエピソードはどれも読んでいて面白く、知らない世界を覗き見る楽しさと同時に北沢さんの心地いいプロ意識に触れられる話題でもあります。
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このような職業的美意識、プロ意識というのはどの業界・業種にもあるのでしょうが、普段なじみがないと思われがちな職業を持っている北沢さんの言葉は、実はどの仕事にも共通する要素があるのも大きな魅力です。
年賀状に見る礼儀作法、好感を与える電話応対の仕方、仕事を続けるための覚悟、挫折経験の乗り越え方、先達に学ぶ姿勢、そして全ての人間関係に適用可能であろう、教え方・教わり方。
これらの記事から見えるように、北沢さんは仕事にかかわるすべての方に対して細やかな配慮と気遣い、そして謙虚さを持って接しています。
たった一言のセリフから始まる仕事であり、その一言を次につなげていくために、もっとも北沢さんが大切にされていること。
それはもしかしたら、諦めずに手に入れた職業への強い誇りと誠実な人間関係なのかもしれません。
最後に、こちらの記事から、北沢さんの言葉を引用してこのラブレターを締めくくりたいと思います。
“自分が思うがままに自由に声を発してそれが受け入れられればお金になるし、それが受け入れられなければお金にならない。
ただ、受け入れてもらえるような表現を提供する為に、時にはある意味自分の意図とは違った表現を提供しなければいけない事があります。
それを高校生の時のようにやりたい事しかやらないという子供じみた自由を主張し続けてしまっては仕事になりません。
自由に生きるという事をコンセプトにしている僕にとっては不本意なことかもしれませんが、自分が自由でい続ける為の不自由だという事で自分を納得させています。“
現在は憧れの職業としても認知度の高い、声優という仕事。
北沢さんは上記のような現実と立ち向かいながらも、日々その仕事で着実に成果を出しています。
自身への甘えを許さず、きっちりと求められる成果を上げる。
これは声優だけではなく、すべての職業に共通する“誇り”につながるのではないでしょうか。