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近年にない紅葉の美しさを放つ北海道。
大雪山をはじめとした標高の高い山々は既に銀世界となり、美しい自然の演出は
次第に私達が生活する平野部へと広がっていった。
森の中では太陽の光が赤や黄色のフィルターを通して暖かな色となって地上へ届く。
そんな心地良い森の回廊を歩き始めてまもなく、ふっと視界の隅で何かが動いた。
すぐに視線を向けてじっと目を凝らしていると、木の幹にしがみつき、微動だにしない
エゾリスの姿を見つけた。
同化しているつもりなのか、近づいても全く動かない。
これは観察のチャンスだ。
更にじわりじわりと距離を縮めていくと、数メートル手前で遂に我慢しかねたのか、
一目散に木の上に駆け上がっていった。
残念・・・。
「もう高いところまで行ってしまっただろう」とあきらめながら頭上を見上げると、意外
にも彼はそれほど高くない場所で立ち止まり、振り返ってじっとこちらを見下ろしていた。
木の葉の陰に身を潜めているつもりだろうか。
10分以上はこのままだった。
「地上から見上げる僕の姿に一体何を思っているのだろう。」
そんなことを考えながらエゾリス観察を続けていたのだが、段々と首が疲れてきて、
時々下を向いてみたり横を向いてみたり首の体操なんかを加えてみる。
そしてある時ふっと気が付いた。
これはもしかしたら僕が観察されている・・・。
そう思うとなんだか急に可笑しくなってきた。
こうして野生動物と向き合い、彼らと共に過ごす時間がたまらなく楽しい。
今年の秋は本当に自然の姿が美しかった。
もう少しゆっくりと堪能していたいところだが、北国の秋は足早に立ち去ってゆく。
今日と明日は平野部でも雪の降る予報だ。
明け方には氷点下になるだろう。
冷たい空気に流れてくるのは冬の匂いだ。