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赤城山には沼がふたつある。大沼と小沼。おおぬま、こぬま、と、つい呼んでしまうし、読んでしまうが、
正確には、「おの」、「この」だ。
妻となべさんは車で大沼の周囲をドライブにいった。
そのときはまだ4月。低山といえど路面が凍りついていないだろうか。
そんなことを考えている僕は、高熱のなか、まどろんでいる。
ときどき起き上がっては、スポーツドリンクを飲んで、トイレにいく。を、繰り返していた。
何度それをやったか覚えていないし、ほかに何をしていいのかもわからなかった。
状態はと言えば、どんどん悪くなっていっていた。
「熱が高い。」
そう思ったことが最後の記憶で、もうろうとしていたらしい。
気が付くと妻となべさんが枕元でのぞきこんでいる。
「やばいね。どうしよう。とりあえず日曜当番医を調べてみるわ。」
と妻が言った。
「そうかあ。今日は日曜日かあ。」
と思った。
妻がリビングで電話で話している。会話の様子から相手はお医者さんだろうか。
少しすると妻が戻ってきて言った。
「そんなに高い熱が数日も続いていて、解熱剤も効かないなら、肺炎を起こしてる可能性もあるので、大きい病院に行ったほうがいいって。なべさん、車に乗せるから手伝って。」
僕は、「ああ、そうなんだあ。肺炎かあ。」と言い、続けてこう言った。
「そこにストレッチャーあるでしょ。」
「ねーよそんなもん。」と妻。
どうやら、ぼくは壊れていたようだ。
車に乗せられて運ばれていく間も、
「5000R以上のカーブに咲く花の花弁の一番奥深い部分にSTAP細胞はたしかにある。」
とか言っていた。
うわごとというのは面白いもので、言っている最中は本気でそう思っていたりする。
そして、はっきり覚えていることがほとんで、運転しているのは妻だが、助手席に乗っているのはなべさんではなく小保方さんだった。
もちろん幻覚ですが。
病院に着いた時は不思議とはっきりしていて、なべさんに何だかわからないこの病気がうつったりしないか心配して離れて座ってみたりした。
診察はなんだか普通なかんじでオオゴトでもない感じだった。しかし入院が決定した。
患者の僕はこんなに辛いのに、お医者さんはルーティーンワークといった感じだ。
「これは問題のある温度差だ」などと要らない問題意識を燃やし、辛さを全面に推し出してみたが、全く効果はなかった。
若い女医さんだった。いや、若いJOYさんてことにしてやる。
きっと、頭がおかしな状態だったに違いない。
入院が決まったことを妻に告げ、なべさんを駅まで送るように頼んだ。
ここらへんはなぜか冷静だった。
なべさんが帰るのを確認すると、一気に気が抜けたのかさらに状態は悪くなり歩けなくなった僕は、
車椅子に乗せられて入院する6人部屋に案内された。
もともと気が小さい僕は、苦しさでしばらくフーフーうるさくてご迷惑かけますがどうかご勘弁下さい。
という旨を同室の方々に伝えてくれと妻に頼んだが、妻は冷静なので迷惑そうだった。
妻が入院の手続きに行き、ひとりになった僕のところに看護士さんが検温をしにきた。
「40.2℃」
グワングワンしているなかで、なべさんを駅に迎えにいく時に偶然出くわしたK澤のひきつった顔と、
このグワングワンした感じは似てるなどと感じ、
「なんだ、こうなることは決まっていたのか。」とおもった。
なべさん、すまない。
なべさんを癒すはずであったのに、結果、なべさんに付き添われて入院という大参事になって。
だけど、何か今思い出してもつい笑ってしまう。
完
妻。15時間経過。
明部からの描き起こし。
明部、稜線、暗部、反射のいじくりかた。
当然変わってくるわけだが、そのように自然に変われるのか。
ついつい意識しすぎてしまいがち。