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2014/08/25

皆さん、おはようございます。

ここに来て、急に椿姫の基本構想が浮上してきました。
決定打は原作を読み直したことなのですが。
基本的に、最も嫌っていたオペラなのですから、
こうも積極的に構想を練ることはとても不思議に思います。

原作を読み直したと書きましたが、
この前読んだのはいつなのかといえば、
関西二期会の研究生でデュエットが課題になり、
その勉強のために読んだのが、これまでで最初、
そして最後でした。
今回読んで、その時の読書が如何に、
あらすじ把握の域を出ていなかったことか、思い知りました。
そう、単にあらすじを知っただけです。

そしてはっきりと苦手意識を持つ椿姫だったわけですが、
音楽的なこと以上に、さらにオペラ版に対して苦手に思うことを
今回の通読で認識できた気がします。
ある意味、これまで以上に嫌いになったわけですが、
この構想は、それだけ嫌いなものを、
俺が好むような形にしてやろうじゃねーか!
という発想で成り立っていると考えて下さい。

これから述べる原作とオペラの違いというのは、
ほぼ私がオペラ版を嫌う理由になっていると思っていただいて結構です。
なお、人物名は混同を避けるために、
オペラ版の名前を用いています。
名前について思うことはありますが、それは後述したいと思います。

まずオペラ版の大筋において、
原作との落差を感じるのは1幕と2幕との溝です。
オペラだけ見ていると、まるで翌日すぐにヴィオレッタがパリの住居を引き払い、
アルフレードと人間らしい生活を始めたかのようなイメージを持ってしまいます。
それから半年たってジェルモンが訪ねてきたような感じです。
しかし、原作を読む限りそうではありません。

田舎暮らしを始めようと思い立つまでに数日かかっています。
しかも、田舎暮らしを始めるにあたって、
ヴィオレッタはパトロンに金をせびって家賃を出させています。
そしてアルフレードの住居を借りて別に住まわせています。
暮らしぶりたるや、パリ並に友達を呼んでのどんちゃん騒ぎをやらかし、
それでお金を浪費しまくっています。
その結果、パトロンの不興を買い、援助を差し止められ、
生活を立て直す計画をし、その手続きをしたことがきっかけとなって、
ジェルモンに居所を知られ、別れさせられる展開となるのです。

アルフレードのしたことについてですが、
2幕フィナーレで、博打に勝ちまくり、
「これまでの借りを返すぜ!」と言ってヴィオレッタに財布を投げつけ、
同席した連中に非難される結果となるシーンがあります。
それだけでも酷いシーンですし、
逆に失恋経験のある男には、一度やってみたい行為かもしれませんが、
原作を読むと、それすら随分マシな行為であるように映ります。

原作では、アルフレードはヴィオレッタの商売敵の愛人となり、
その女性をけしかけていじめさせ、自分でも公衆の面前で暴言を吐き、
仲間内にヴィオレッタの悪口を広め、
そうした社交場にヴィオレッタが出て来なくなると、
ヴィオレッタに匿名の手紙を送りつけての侮辱、脅迫を繰り返し、
最後にヴィオレッタが許しを請いに来て、
お望み通りにするから、と一夜を共にして帰ると、
翌日、「昨夜のお支払だ」と言って金を届けさせる徹底ぶり。

もはや悪質なストーカーの域に達しているのです。
私自身、身に覚えのないことではないし、
心情としてはよくわかるのですが、
こうした毒が何十倍にも希釈されることには耐えられません。

しかも、オペラ版で3幕に歌われる、
内容的にも美しい「パリを離れて」のデュエットの元ネタは、
このお金を払った最後の一夜において発せられる言葉なのです。

次回はもう少しこの違いについて考えてみましょう。

2014/08/25 02:45 | bonchi | No Comments