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地方の撮影業務から帰る途中、念の為原野に立ち寄ってみると、意外にも再会することができた。
2ヶ月前に初めて子ギツネの兄弟達を見かけてから何度もここへ立ち寄っていたのだが、全く姿を
見る事ができずに半ば諦めかけていた頃だったのでとても嬉しかった。
その嬉しさの裏側には実はちょっとしたエピソード・・・というか失敗談があった。
兄弟達の愛くるしい姿を長い時間の末に何枚も写真に収めていたにも関わらず、誤ってデータを
消失してしまったのだ。
あの時は皆まだよちよち歩きだったのに今は元気に草原を駆け回っている。
本当に見違える程大きくなったものだ。
ただ姿が見えるのはこの一頭だけで、一緒にいた兄弟達が見当たらない。
この日僕は、撮影の仕事を終えてから現場に腰を据えて超望遠レンズをセットし、離れたところから
数時間に渡って観察を続けた。
他の動物同様、子供の生存率が低いキタキツネであるが、やはり兄弟達も病気や事故で命を
落としたのだろうか・・・。
巣穴は原野の草むらの中にあって肉眼では見えないのだが、出入りする時には入り口付近の
草が揺れるので容易にわかる。
でも、注意深く観察していても、やはり今日はこの一頭しか気配がない。
そんなことを考えながらボーッとしていると、驚いたことに子ギツネが警戒しながらも少しずつ座り
込んでいる僕に近づいてきた。
もしかしたら、この子もどこかで人間にエサをもらってしまったのだろうか・・・。
だとすれば、やはり他の兄弟達も同じように人間や車に近づいて命を落としてしまったのかもしれ
ない。
キタキツネは北海道では本当にあちこちで見かける身近な動物であるが、きっと目にしている
ほとんどの個体が餌付いている可能性が高い。近頃は札幌の住宅街の中にある僕の自宅前を
トボトボと歩き去ってゆく個体もよく目にするようになった。
身近であるということはそれだけ人間の近くで生きることを自ら選択しているということだ。
今更ながら野生動物の生き方そのものが時代と共に少しずつ変わってきているのだと実感する。
果たしてこの子はこれからどういう生き方を選択していくのだろうか・・・。
まだあどけない表情であるが、時々ピタッと立ち止まって遠くの様子を窺う表情は野生動物
らしい眼差しだった。
どうかこの一頭だけは野生の中で生き抜く術を身に付けて、いつかまた新たな命へと繋いで
いってほしいと願い、帰路へ向かった。