« songs 23 「哀しみの終わりに」 | Home | 違法金鉱山およびその周辺における水銀汚染の調査 ~現地コミュニケーターとして~ »
自宅に到着、玄関を開けると、いきなり目がしみる。
妻が燻製を作ってくれていて、家の中じゅう煙が立ち込めていた。
天窓の脇についている大型の換気扇を回し続け、ようやく排煙し、
三人でビールを囲んだ。おいしいビール。
妻の手製の燻製もタマゴにチキン、サーモンと種類豊富で秀逸の出来栄え。
呑んでつまんで味とお互いの再会を今一度喜び、堪能した。
それからは登った山の話をしたり、撮った写真を見せ合ったりしたが、
なべさんの近況については特に言及しなかった。そのほうがいいと思ったから。
気が付くとすでに0時を回っていたが、僕らは山のこと、食糧のこと、装備の軽量化のこと、
登山形態のこと、話は尽きる様子もなく、顎と舌が疲れるのも気にせず、おしゃべりを続けていた。
しかし、時間のことの他に、もう一つ僕は気付いていた。
おかしい。寒い。頭が痛い。
治ったはずではなかったのか?
乗り切ったはず。おかしい。そんなはずは。
気のせいだ。
僕はとりあえず気のせいということにして、おしゃべりに気持ちを戻した。
せっかくなべさんがきているというのに、明日は赤城山に登るというのに、
体調が悪い、しかもぶり返したなんてマヌケ、かましてたまるか。
しかし、2時を確認して、僕は強引に話を切り出した。
「明日は山だから、もう寝よう。」
「えーー」と妻。
「いや、ま、明日もあるし。」となべ。
僕は早々にベッドに移り、自分のコンディションを注意深く確認、考察した。
そして、少し後から遅れてベッドに入ってきた妻にだけ、念のため、体調不良であることを打ち明けた。
「あのな、やばい。」
「え?マジ?」と妻はぼくのオデコに手をやり、こう言ったんだ。
「やべえな。」と。
「朝になれば大丈夫さ。体温は朝下がるじゃない?」
「ほんとに~?いや熱いよまじで。」
なべさんに聞こえないようにこっそりとそう言い合い、
なんとか乗り越えなければと思い、就寝した。
(続く)
妻。9時間経過。
さっさと細部まで描いていく。
序盤から描いたほうがいいに決まっているからだ。
しかしこれでも遅い。
もっと早くから細部まで描きたい。