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先週マレーシアを賑わしたニュースがある。
英キャドバリー社の販売するチョコレートから豚のDNAが検出されたという話題。
しかもこのチョコレート、マレーシア政府からハラルマーク認証を受けていた商品だったから大問題に。
マレーシアはイスラム国家のため、男女関係・豚・アルコール・犬にはとてもナーバス。
イスラム法に則った食品であるという「ハラルマーク(写真右側の白黒のマーク)」はとても大きな意味を持ち、スターバックス・マクドナルド・キットカット・コーラ・・・外資系の飲食店や商品もこのハラル認証を受けているところが多い。
マレーシアはイスラム国家でも珍しく、政府機関が認証を付与しているためサウジアラビアに次いで世界で2番目に規格が厳しいとされている。
だらこそイスラム教徒は安心して食品を摂取できるわけで、そのハラルマーク認証を受けているチョコレートから豚のDNAが検出されたというのはイスラム教徒にとっては一大事。
豚を日常的に食べる日本人には信じがたいけれど、彼らは豚肉を食べると心身が汚れると信じている。
だから、そんな汚らわしい動物の肉を食べるなんてどうしても耐えられない。
たぶん私たち日本人が、どうしても犬を食べられないとのちょっと似ているのかもしれない。
そんなわけで、知らずに買って食べていたイスラム教徒にとっては何とも耐え難い嫌悪感が広まっている。
政府の担当部署は、「今回の事象は回避不可能な事象で、たとえ食べてしまっても心身が汚れることはない。だから安心して欲しい」という声明を出した。
今回の事件を受けて、一部の過激なイスラム教徒達は英キャドバリー社に対してジハード(聖戦)を呼びかけているそうで、宗教の威力を感じてしまった。
寛容なマレーシアの人たちは、外国人がお酒を飲むことを許し、肌を露出していても気にしないし、豚肉もレジを分ければ売っていいとしているし、犬を飼うことも認めている。
けれど、やっぱりマレーシアの人々も他のイスラム国家同様に毎日欠かさず5回祈りを捧げ、イスラム法の教えに則った生活を守っている。
彼らは、本当に豚肉を汚れた動物だと思っているし、その汚れたモノを口にすれば心身が汚れると信じている。
多くの人が宗教を持たず、宗教的な食のタブーを体験することなく生活をしている日本人にとってはとても奇異に移ってしまう今回の騒動。
でも考えてみれば、イスラム教、ユダヤ教、ヒンドゥー教、キリスト教、それぞれの宗教には多かれ少なかれ食のタブーというものが存在する。
それぞれの価値観を尊重して、それぞれの宗教を理解すること。
頭ではわかっているけれど、こうして実際の騒動になると彼らの心情を理解することは正直難しい。