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2014/05/23

4、手の表現

右手の下げている手を横から見ていただくと指の位置が違います。

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これは、指の柔らかさと、立体感を表現するためで、彫刻的な考えで表現されています。

手前の指と奥の指が同時に見える事により遠近感が生まれるのです。

この考えは、奈良時代の仏像にも見受けられる表現方法です。

又、左手の蓮を持つ握った手を見ていただくと、人差し指だけ突出しています。

 

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これは、蓮のつぼみを軽く持つ表現を表しています。

内側を見ると人差し指と親指以外折れて無くなっていますが、そっと蓮を持つ柔らかな表現がつかみ取れます。

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近年は彩色や金箔などをほどこした仏様よりも、木の持つ素材を生かし木肌のままで求める風習があります。

又、表現もシンプルでシワなどを強調しすぎないようにし、体のバランスも頭を少し小さめにしてスタイルを良くする表現が好まれます。

他にも、本格的な仏様にかぎらず、癒しや、可愛らしさを求める傾向があります。

これは、仏教に対しての概念が少しずつ変わってきたからだと思います。

昔は、争いや飢えなどで幸せを願っても生きていけない状況が頻繁にあった時代、何を仏様に求めるのかが、現代とは大分違っていたと思います。

先人が手掛けた仏様は、技術の追求の他に強いオーラがあります。

それは何かを感じ、学ぶことにより技術の向上へと繋がっていくのだと思います。

今後の制作に自分が大きく衝撃をうけた聖観世音菩薩です。
佛師  紺野侊慶

2014/05/23 08:17 | konno | No Comments