« ライフスタイルの研究成果 | Home | 嵐を耐え忍ぶ者 »
想い出したかい
この店を
ふたりは夜の星があきれるほど
話しもしないまま
見つめ合っていたことを
澄み切った瞳の中で
ふたりきりで
周りの客がみんな想い出の外に帰った後に
ふたりは夜の
ギャルソンがあきれるほど
向かい合ったまま
話しだしたことを
夜を
夢を
私を
君を
わすれたい愛の想い出を
わすれられない悲しい想い出を
私が話をやめ
店の出口に向かい
振り向きざまに
君の写真を撮ったことを
君は表情一つ変えず
いつまでも店を
出ようとしなかったことを
想い出したかい
この場所を
ふたりは
誰も知らない秘密の屋上
君の好きだったこの街の教会
ふたりで見下ろす夜の光の中で
米粒ほどの
小さな小さな私と君
夢を探しに
公園通りを歩き回っている様子を
ふたりだけで
いつまでも見つめていたことを
想い出したかい
このレストランを
ふたりのテーブルの皿には
ロールパン
お金がない私を
君が連れて来てくれたレストラン
君はロールパンを
私の皿に山盛りに積み上げて
私の耳元で囁いてくれたことを
食べ放題よ
私が食べきれないといっても
君は何度もロールパンを取りに行き
君のバッグに総て押し込めて
私の耳元で囁いてくれたことを
私たちへのプレゼントよ
そして夜のレストランから逃げるように
君のベッドに隠れて
ロールパンを食べながら
ふたりだけで
寂しい夜を溶け合って
ふたりだけで
朝をむかえたことを
想い出したかい
私が君のベッドで
目を覚ますと
君は
寝顔は見せたくないのと言って
いつもMACに向かって
仕事をしていたことを
何かにおびえて
誰かと揺れながら
私が目覚めたことに気づくと
君はいつも私のそばに歩みより
誰も気にならない
君が
仕事しているときは
見ないでと
言っていたことを
想い出したかい
君は
私と
もうひとりの彼を愛していた
朝になると彼は
扉を開けて
そっと君の部屋に入ってくる
そしてふたりは
MACに向かう
昼間は彼を愛し
夜を私を愛したことを
想い出したかい
ある朝
私が君のベッド目覚めて
彼が来ていることに気づき
静かに着替えて
君の部屋を出ようとすると
君はいつものように
私のそばにあゆみよって
今、仕事を始め出したの
これが私なのと言ったことを
想い出したかい
昔
私が
君を愛したことを
君が
私を愛していたことを