« 医療ネグレクト | Home | 『改革』より『改善』その1:総論?概論? »
きみに読む物語
【The Notebook】2004年
注: ネタバレあり
私は記憶がいい方ではない、というより、すこふる悪い。
人に関しては少なくても日々定期的にどこかで会っていれば覚えているし、
仕事内容に関してなら『その時』の記憶はむしろいい。
けれど会わなくなったり、プロジェクトでチーム編成が変わると、片っ端から忘れる。
記憶の手順が、まず風貌、歩き方、雰囲気、色に例えるなら、誰の知り合いか、
今まで会った誰かに似ているとか似ていない、ということから頭に入り
そこで名前にその要素がインプットされ頭に定着する。
新しい言葉を取得するのに似ている。
忘れる時はその逆。まず名前、風貌、
そして、一緒に過ごした事柄さえどんどん忘れる。
単に思い出す回数が減ると忘れる、ということだと思うけれど、
自分でもひどいヒトだわ、と思う時が度々あるぐらいすっぱりなくなる。
だからなのか、記憶がなくなることに正直あまり怖さを感じない。
けれど最近読んだ小川洋子さんの『博士の愛した数式』の博士や
映画『メメント』の主人公のように、短時間しか記憶が持たなかったり、
この映画のアリーのように認知症だったり、という『病気』になると
別の話なんだとおぼろげに思う。
何よりもいつも一緒にいる家族や親しい友人の思いが一方通行になり、
時々正気に戻る瞬間、相手を忘れてしまう自分に悲しむのだろう。
ストーリーも終盤、根気よく物語を話し聞かせるノア【Noah】を
アリー【Allie】は思い出す。そして言う。
How much time do we have?
残りの時間は?
“we”、自分がどのくらい正気でいられるのか、というより
どのくらい相手を認識して、それが二人の時間として持っていられるのか
英語の文章には必ず主語が入るので
誰が誰を主においてその言葉が発せられているのか、がわかりやすく
アリーがノアとの時間をどれだけ大事にしているのか、が伝わってくる。
結局は一緒にいることも大事だけれど、その時にどれだけお互いのことを考えているか
そういう気持ちが、重要なのだなぁ、と。
前半はいわゆる若者のありきたりなラブストーリーで、特に特別ではないが、
その物語が書きとめられ、読まれ、共に思い出されると突然過去が輝いてくる。
今を作るのは過去であり、今は未来を作る、
前半の丁寧な描き方が後半とても活きてくる、今を大事にしよう、と思える映画です。