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2014/02/20

JunkStageをご覧のみなさま、こんばんは。
突然ですが、皆様はボランティア活動に興味はおありでしょうか? 興味がある、という方でもそのレベルや活動領域が様々である、このボランティア活動という言葉。募金箱を素通りできないという方から公園清掃に毎週参加していますという方や更にはチャリティイベントの企画運営出演者の皆様まで、世間にはありとあらゆる善意が溢れています。

本日ご紹介するのは、そんなボランティア組織の代表を務めているこのライターさん。

善意の力を組織的に組み立て、運営し、還元する――善意の部分を購買者、利用者と置き換えれば営利企業であれば当たり前に行われること。しかしボランティアや支援組織ではないがしろにされがちなこの部分を、目に見える形で体現する“技術”とはどんなものか。
皆様、どうぞご注目ください!

■vol.28 サポートハウス運営・浜本靖さん

――一個人の努力や行動は小さいもので、大した力にはなりませんが、多くの方が集まれば、医療に関わる問題は多きな変化をもたらす事は、明らかです。
どんなに、遠いゴールでも、前に進めさえすれば、必ず到達します。(浜本靖)

無題
京都大学付属病院近郊にて難病と闘う患者とその家族を支援するサポートハウスを運営。多角的なボランティア活動により、利用者から大きな支持を集めている。
http://www.junkstage.com/hamamoto/

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浜本さんが行っているボランティア活動は、“京都サポートハウス”という組織の運営です。

ファミリールーム、ペアレンツハウスとも呼ばれるこの滞在型施設は、主として難病治療のため大学病院等に長期の滞在を余儀なくされる患者さんやその付添家族の方のための宿泊施設。医療費補助なども含め、難病を患う方やその家族のための法的支援が万全ではないなか、経済的にも精神的にも少しでも安心して療養に専念してほしい――そんな思いで、浜本さんはこの施設を立ち上げました。

その決意は、ご自身の辛い経験から生まれたものです。

浜本さんが27歳の時にうまれたお子さんは数百万人に一人という原発性肺高血圧症(PPH)という病気を持って生まれてきました。数か月の命だと宣告され、月額100万程度は掛かると言われる治療薬のために保険組合から脱退を勧奨され、それでも必死になって看護した経験。
0歳で亡くなったお子さんへの愛情、そして、その期間を支えてくれた周囲の善意と理解が、他者からの善意を求め、善意を活かすというこのサポートハウス設立の根底にあるのだろうと思うのです。

その思いを端的に綴った文章を、コラムから引用します。

今は、子の歳を数える時、辛かったことより、色々な方に助けて頂いたことを思い出します。
死んだ子は私の先生
今、生きている子も私の先生
学ぶこと、教えてもらうこと、気づかせてくれること、たくさん、たくさんあるんです。
私は、子どもが死んだことを、単に辛い思い出として記憶するのではなく、そんな経験を活かしたい。
あの世で会ったとき、「君の死を無駄にしなかったよ」と胸を張って言いたいから
「死んだ子の歳を数える」より一部中略・一部抜粋)

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浜本さんの活動の特筆すべき点は、サポートハウスの「維持」ということに重きをおいていらっしゃることだとわたしは思います。

例えば、その理念に共感して「協力します」と口で言うことは簡単です。でも、実際にはそこに四六時中貼りつくわけにもいかず、お金での援助も限界がある。
このような状況では、この言葉は単なる口約束になってしまいます。
また、ボランティア活動に充実する方自身の生活もあります。報酬がゼロだとしても、持ち出しを続けることはできません。とすれば、活動そのものが続けられなくなってしまう。無理を押してやるにしても、一人の力には限界もあり、担い手を育てることも出来ません。
いざご自身が、あるいは家族がそれを必要とした時に、ハウスそのものが無くなっていたとしたらどうでしょう?
「善意」という言葉を大上段に振りかざし、無報酬が当たり前とされるボランティアにおいて、これは非常に重要かつないがしろにされがちな現実なのです。

浜本さんはこの問題に対し、「善意を組織の力に変えられる技術」を発明することで解決しようとしています。
ハウスの運営維持費は自力調達を基本とし、「善意」の力を借りて現金化する。
具体的には無償で提供された書籍やCD・DVD等を販売し、その売り上げを活動費に充てるという「技術」で運営しており、浜本さんはこれを「1冊からボランティア」と呼んでいます。
古本を提供する行為もボランティアであり、それを購入する行為もボランティアになる。
誰でも気軽に参加でき、かつ、その売上が難病に苦しむ方の支援に繋がるというこのモデルはまさにタイトル通り“善意の輪”を形作ると言う点で、ひとつの明確な解ではないでしょうか。

(浜本さんの運営するサポートハウスのAmazonマーケットプレイスはこちらから。1冊からでも購入できます。ちなみにわたしも利用したことがありますが、とても綺麗な状態で梱包も丁寧でした!)

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2004年に発足した京都サポートハウスは今年で10年目を迎えました。昨年にはNPO法人化を視野に収益部門とサポートハウス支援事業を完全に分離。収益を上げることを健全に行いつつ、その利益を全て支援事業に還元するという試みを始めています。ボランティア活動としてもサポートハウスの運営のほか、カンボジアやインドの小学校設立にも関わっているという浜本さんとスタッフの皆さんの活動は、本当に尊い。
もっともそれを必要としている人にきちんと届くシステムを維持可能とした浜本さんのサポートハウスの出色であるわけですが、それを浜本さんは講演でも包み隠さずお話しているそうです。
その理由とわたしが考える言葉を引いて、このラブレターを締めくくりたいと思います。

 

21世紀は「利他主義」で。
これが私の夢であり、未来像です。
21世紀は20世紀のように「戦争の世紀」にしてはいけないと強く考えています。
一方、国家に何事も任せきりにするのではななく、 明治初期に強くあった自治意識を、大切にすることが、21世紀に相応しい生き方を演出してくれるとも考えています。
自治は「自分たちの利益を守る(増やす)」と言うことになるんでしょうが、
私はここに、他者の利益を優先すると言う考え方を持ってきたい。
他者の利益が、ゆくゆくは自分の地域の利益につながる。そういう世の中が21世紀型だと。
「有徳思想・利他主義」より抜粋)

 

浜本さんの試みは、誰でも気軽に応援できます。
本を読みたいなと思ったらワンクリックで出来るボランティアがあることを、捨てる前に差し出すことのできる善意の示し方があることを、多くの方に知ってほしいなと思いながら、わたしはこのお手紙を書きました。

2014/02/20 08:24 | sp | No Comments