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2014/01/21

気がつけば、日本出国まで後10日を切ってしまいましたが、何一つ準備をしていません。大丈夫なんでしょうか、自分は。

今回は、ジャズトランペッターで「青空にロングトーン」の太田祥三さんの記事「『指とピストン』(お、なんかミステリアス!)」を読みまして、一応自分も同じくトランペットを吹くものとして同じことを考えてみました。リンクがうまく表示されませんので、申し訳ありません。注目ポイントは「トランペットを演奏する際、ピストンと指は離れているか?」ですね。

一応、私のトランペット歴は、太田さんと同じく小学校から金管バンドに入って、最初はトロンボーンでしたが、背が低く、腕も短く身体的な理由からトランペットにトラバーユしました。その半年後成長期を迎えたのですが、「自分から変わりたいと言ったからまたトロンボーンに戻るのはダメ」と言われ、そのままトランペットやってます。大学はトランペット専攻生として音楽大学に入学しましたが、2年次より音楽学という理論研究の方に転専攻。その後はまぁ趣味として。昨年某楽器店のトランペット講師募集に受験し、内定を取りましたが、トンガに行くことになって、実際には講師はやってませんが、一応その筋にいたものです。

さて、太田さんの記事を読んで(いや、実は12月にお会いした際、このポイントで相談受けましたが…)、「はて、自分は今までそれほど意識したことはなかったけど、指離れてるのかな????」と楽器を出しまして、練習用のミュート(サイレントブラスというほとんど外に音が漏れない消音器)をセットし、指をガン見しながら2,3曲吹いてみました。その結果

ほとんどピストンから指が離れてない!

きっと太田さんからすると、メッチャクチャ羨ましいかも知れませんが、実はこのポイントに関して、ほんとに意識したことがないんです。口の形、マウスピースの当て方などは教授から結構徹底的に言われて、意識しましたが。
音楽大学でトランペットを勉強するというのは、当然ですがクラシック音楽が主流です。で、クラシック音楽の奏者は、「作曲者の思い(楽譜)を表現してあげる」ということがメインで、楽譜から作者の思いを読み取って演奏するわけで、楽譜を勝手に変えて演奏するなどは論外で、「楽譜に忠実」というのが大前提であり、非常にややこしく「ふざけんな!!!!!こんな曲書くなよ…(泣)」と思うような曲であっても、その通りに演奏しなければなりませんし、できないと減点対象。もちろん、機械的な演奏ではなく、読み取った思いを演奏にぶつけ、それが演奏者としての個性を出します。スピードや音色、感情、色彩感、質感などなど…。なので、そんな難解な曲にも対応できるように「教則本」「エチュード」と呼ばれるテクニック重視の練習をひたすら繰り返します。そのエチュードにはキチガイのような、恐ろしいまでのスピードで指を動かさないといけない曲や、タンギングなどがてんこ盛りなのです。恐らくクラシック音楽系の演奏者はこういう中で、「なるべくロスのない動き」というものが自然と身についたと思います。そして、音に関しては、雑味を極限まで排除していく。

ジャズの場合は?
僕はジャズ、クラシックと線引きするのは嫌いですが、根本的に違うところは「演奏者が自分の音楽を演奏する」ことだと思います。いわゆる即興演奏ですね。テーマからして自由に崩して吹いてます(笑)。即興演奏になると、何でもあり(のように即興演奏のできない僕からはそう見える)、別に綺麗な音でなくても構わない(雑味がその人の個性としていい雰囲気になってる)。ものすごく自由な世界ですよね。全くうらやましい…。そしてライブパフォーマーとして、視覚的にも自由度がある。そうなると指が離れようと、ほっぺたを膨らませようと、下向いて吹こうと問題ない(気がします)。超絶技巧を用いても用いなくても、自分が作者だから自分の好きなように演奏すれば良い。自分のスタイルが確立しているのであれば、誰も文句いう筋合いはないと思います。垣根がないだけにものすごく怖い世界ですよね。

さて、話を戻しますが、「指は離れてもいいの?」僕個人的なことを言うと、

「別にいいんじゃね?」

要は演奏ができればいいわけで、もし長い間のクセで、そこに集中しすぎるあまり、演奏自体に集中できなかったりすると、特にジャズプレーヤーなんかにとってはそれが致命傷になりうるんじゃないかなぁと。でも、クラシック系の練習曲は指の練習にもなりますし、一般的に苦手な指使いを多用して、いろいろ対応できるような作りになってますので、そういう技巧的な練習を取り入れるともしかするとロスが減ったりするんじゃないかなぁという気もしないわけでもない。指が大きく離れたりすると、それだけタイムラグが発生するし、打点ポイントのズレも生じてきますからね。もし、自分がイチからトランペットを指導するのであれば、やはり「指はなるべく真っ直ぐに、近くに」ということを言うと思います。

僕の場合、実はトランペットだけでなく、木管楽器を演奏することもありますし、大学では17,18世紀の音楽の研究という課題で、昔のフルートとリコーダーのレッスンを受けておりましたが、キーのない、穴の開いただけの楽器を勉強していました。その際先生から「指はなるべく動かさないように。大きく動かすと穴をちゃんと塞げなかったり、タイムラグ、そして、楽器が揺れて安定しない!」とことあるごとに言われ矯正してきました。恐らくそういう影響もあるんじゃないですかね。ピアノ、パイプオルガンもやりましたが、やはり「なるべく鍵盤に近く」で、パイプオルガンに至っては「鍵盤を這いずりまわるように指を動かす」が大原則。

上で「別にいいんじゃね?」とか書いておりますが、音の安定やテクニックにかかわる非常に重要事項かもしれませんね。ちなみに人間の指は薬指が非常に動きが鈍く、中指(もしくは小指)とセットで動いてします。これはどうにもならないです、ハイ。試しに5本の指先をテーブルに当てて、薬指だけタップしてみてください。きっと可動範囲が極めて狭く、速く動かせないと思います。この原理を逆に利用した手品などもあるくらいです。なので、トランペットには右小指を引っ掛けるフックのようなものがついていますが、僕はほとんど使いません。小指をガッツリとフックに引っ掛けると、フィンガリングの妨げになりますので。

僕の場合ほとんど指は離れないのですが、速いパッセージ(音形のことです)が多用される曲に関して、実際には指は多少離れますし、ゆっくりな曲でも1番(人差し指)だけ押さえる所で、アクセントやら、音楽のピークだったりすると2,3番(中指、薬指)が離れる傾向にあります。どうしても指がひっついてないといけないというわけでもないので、自分の音楽表現に合わせてその辺はファジーに。それから、押さえる際、「指先で押さえる」だったり、「指の腹」だったり、「第二関節辺り」だったり人それぞれだし、自分も曲によっても多少変わったりもします。そんなわけで、自分に一番ピッタリくるポイントが見つかれば良いのではないかと思います。

ちなみにyoutubeで、いろんなトランペッターの演奏を視聴することができますが、私、鈴木のおすすめのトランペッターはセルゲイ・ナカリャコフ(Sergei Nakariakov)とアリソン・バルソム(Alison Balsom) です。この二人は若手名手ですね。そして亡くなりましたが巨匠モーリス・アンドレ(Maurice Andre)。神です!現代の巨匠はハーカン・ハーデンベルガー(Hakan Hardenberger)。そして、ジャズとクラシックの両刀遣いウィントン・マルサリス(Wynton Marsalis)。クラシックメインのリストアップですけど、トランペットという楽器が如何に素晴らしい楽器であるか、証明してくれる名手たちです。後、こういう巨匠の超絶技巧や音色を堪能するのも勉強になりますが、もっと勉強のなるものは「公開レッスン」。英語のものが多くなりますが、一流の奏者が、これから羽ばたこうとする音楽大学生などのレッスンがアップされております。クラシックがメインですし、ジャズでレッスンがあるのかどうかはわかりませんが。非常にためになります。「Trumpet masterclass」で検索するとたくさん出てきます。

なんだか個人宛のようなコラムになってしまいましたが、自分のトランペットフォームや考えをまとめるいい機会になりました。感謝!

2014/01/21 12:35 | suzuki | No Comments