爪のためにはあまり爪切りを使わない方がいい、と聞いたことはありませんか?
ヤスリで削るのが理想です、と。
「えぇ~?ヤスリなんて面倒。爪切りでパチンパチンの方が早いじゃん」
というお声が聞こえてきそうですが、
今回は、その理由をお話しようと思います。
ご自分の爪を、真正面(顔に向かって指差している状態)から見てください。
爪は、どんなお爪でもカーブを描いています。
そしてこの薄い爪1枚、実は3層から出来ているんです。
ケラチンが縦にはしる層と、横にはしる層が交互に重なって出来ています。
こうすることで、指先の動きに柔軟についてくるようになっています。
ちなみに、爪がないと物をつまむことは出来ません。
爪圧(そうあつ)といって、爪が圧を受け取ることで指先に力が入ります。
指の骨は、指先まではないんですね。
指の腹付近で先細り状態で終わります。
ですから、爪がなければ指先はフニャフニャなわけです。
足指にいたっては、体重とバランスを支える重要な役目を爪が果たすので、特に親指の爪を失うと立つことや歩行に支障をきたすこともあります。
そんな大役を担う爪です。
健気です。美しくされて当然です、と私なんかは熱くなってしまうのですが(笑)。
さて、爪切りのお話でした。
水平な刃をもつ爪切りは、バチンと切断した瞬間に爪のカーブを壊し密着していた層を剥がしてしまうのです。
切った直後はわからなくても、数日経って乾燥が伴うと剥がれた層が白く表面に目立ってきます。
この状態が、二枚爪です。
女性にとっては、
うっかり顔をかいてファンデーションが入り込んでしまって汚らしかったり、
ストッキングが引っかかったりと厄介な思いをされることも少なくないでしょう。
水平の外的衝撃を与えないためには、ヤスリでカーブと層を守りながら削ることが大切なんですね。
二枚爪で悩んでいる方、爪切りを使っていませんか?
ヤスリデビュー、いかかでしょう?
「私はネイリストです」
英語で自己紹介する機会があったとします。
「I am a Nailist.」
これでは通じないんですね。
ネイリスト=Nailistは、いまや日本が誇る立派な和製英語なんです。
ただしくは、
「I am a Manicurist.」
マニキュアリスト、です。
もともと「マニキュア」の語源は、ラテン語のマヌス=手とキュア=手入れとなります。
日本ではマニキュアというと小さな刷毛付きボトルに入った液体自体を指しますが、
実は手(爪)のお手入れそのものを指します。
一般にマニキュアと謳われているあの液体入りボトルは、ポリッシュまたはネイルラッカーと呼びます。
こんな風に、
ネイリストのはじめは正しい言葉を覚えて習慣での使い方をあらためるところから始まります。
マニキュアではなく、ポリッシュ。
爪は、プレート。
甘皮は、キューティクル。
技術だけでなく、学科のお勉強も盛りだくさんです。
爪および皮膚に関する解剖学や、疾患や異常についても学びます。
ネイル材料は化粧品扱いのものが多いので薬事法に基づく成分などのことも、
さらには衛生学にも学科の範囲は及びます。
もちろん、接客マナーやプロフェッショナリズムにも触れます。
現在はまだ民間主催ではありますが、検定試験も定期的に行われています。
ネイリストは「真面目に」爪のプロであることがもっと認知されるといいな、と日々思います。
はじめまして!
ネイリストをしております、星野麻紀子申します。
一昔前には、「ネイル」なんて言葉を発そうものなら首をかしげられたものです。
さらにその一昔前には、赤いマニキュアは夜の蝶がするもの、と眉をしかめる奥様方も多数いらっしゃいました。
時代は流れ、いまやヘアサロンと同じように定期的に通う美容ジャンルとして捉える方もずいぶん増えました。
日常的ではないにせよ、結婚式や御呼ばれパーティなどの少し特別なイベントの際には「ネイルサロンに行ってみる」方々も珍しくありません。
爪を長く伸ばしていようが、真っ赤なマニキュアが塗られていようが、それは立派なお洒落になったのです。
ましてや「夜の蝶」なんてナンセンスだと失笑を買うくらいです。
認知度はずいぶん上がりネイリストという職業も社会的に認められるものとなりました。10代のお嬢さん達世代では、なりたい職業の上位にランクインされるほどです。
それでも私は、そんなネイルのこと、実はまだまだその魅力をわかってもらえてない気がしてならないのです。
単なるお洒落が目的じゃないネイルがある、といったらいかがでしょう?
老人ホームをボランティアで廻るネイリストがいる、といったら驚きますか?
年に数回その技を競う大会があり、そこでは星飛雄馬に勝るとも劣らない熱い根性物語があるといったら意外でしょうか?
ネイリスト養成スクールに通うことで自己啓発に繋がることも珍しくないといったら、「その話、詳しく」と身を乗り出していただけますか?
そう、ネイルって奥が深いんです。
それこそ頭の先から足元までバッチリ決めたネイリストのお姉さまも、実はバリバリの職人なんです。
すでにネイルを楽しんでいる方も、ぜんぜん興味ないけどちょっと気になってきたという方も、ネイルとネイリストという存在をリアルに感じていただけたら幸いです、という気持ちでコラムを書いていきたいと思ってます。
さて。
わたくし星野麻紀子について自己紹介をさせていただきます。
ホシノマキコ、ネイリスト歴もうすぐ10年、主婦歴ももうすぐ10年です。
横浜に生まれ育ちました。専門学校卒業後、新卒で入った会社のマニュアル企画部という部署に配属されDTPを叩き込まれます。しかし、社会人になりきれず1年半後に退社。振り返っても周囲には迷惑ばかりかけ、当時お世話になった方々へいますぐにでも謝罪に廻りたいほど反省してます。
自分探しをかね数年ほどフリーターで色々な職種についてみました。本来の軟弱な性分のせいか何ひとつ身にならずフラフラ。今思えば遊ぶことばかり考えていた時代です。
さすがにこれではいかん!と一念発起し、もう一度キチンと社会人として頑張ってみようとマニュアル制作会社に就職。
ここでは以前の至らない自分を反省し結構頑張りました(自分で言うのもなんですが)。
周囲の人にも恵まれ、すっかり居心地の良い会社員生活を送ります。
仕事とは、社会人とは、周囲との調和とは、みたいなことを若輩者ながらにも学んだように思います。
安定した収入と、独身の気軽さから今風に言うと「オンもオフも充実」していた時代です。
何しろ20代独身女子ですから、お洒落に余念がありません。ずっと好きだった爪にマニキュアを塗ることも、それ以上のものを求めるようになりました。
たまに雑誌でみかける「ネイルサロン」とか「ネイルアート」の文字もまだ珍しく新鮮で、私が勤めていた横浜駅界隈でもネイルサロンなるものはほんの2、3軒といったものでした。
シールを貼ってみたり、長い爪になるようなチップを装着してみたり、といったことをコツコツとしては悦に入っていました。
そんな頃、行きつけのヘアサロンで一般人にもネイルレッスンをしてくれるネイル商材屋さんがオープンしたことを聞き、さっそく寄ってみました。
「もう少し上手にシールとか貼れたらいいな」くらいの気持ちで。
迎えてくれたのは、女優さんかと見まがう美しさのオーナーでした。のちに私の一番師匠になる人です。
彼女は当時で40代後半だったのですが、それはそれは美しく、さらには見たこともない長く上品で美しい爪をしていました。長い爪をかばうための仕草も美しく、同性ながらにドキドキしっぱなしでした。
聞けば長くネイルスクールの校長を務めた後、身軽さを求めこの小さな店を開いたとのことでした。
ザッツ・ネイリスト。私にとってのネイリスト像は彼女で憧れの対象となりました。
あしげく通い、レッスンもいつのまにか「自分用(する)」から「他人用(してあげる)」の内容が増え、施術する側の目線を意識し出しました。
師匠は自身の経験から「女も、どこに行っても一人でやっていけるくらいじゃないと」とよく言っていて、手に職を付ける意義をはじめて私も考えるようになったのです。
私には当時、結婚の話が出ていました。彼とは地元が違い、関東内の中距離恋愛でした。結婚が現実となると彼の仕事の事情から私が彼の元へ引っ越す云々の話もあり、近い将来、環境が大きく変わることへ若干の不安もありました。
そして<自分が動いても付いてくる仕事>の魅力を考え始めました。
とはいえ、すでに確立していた仕事のキャリアと収入を転職で断つことには迷いもあり、決断は先でも構わないと、まずはネイリストを職業として捉えてみるため会社帰りのレッスンを続けました。年齢的なこともあり、現場で働くだけでなく将来的には教える立場も視野に入れるべき、と師匠はアドバイスしてくれました。
そしてなにより、形を柔軟に変えることでいくらでも仕事を続けられること、収入も自分の工夫次第であることなどの利点を知り、「主婦のお仕事なら」十分ではないかと思い始めました。
レッスンも進むにつれ益々楽しくなり、わりと向いていることもわかり、なにより結婚と引越しが決まったため転身を決断。地元を去るとともに会社も辞めることになりました。
寿退社を理解してくれた取引先から、ぜひフリーになって在宅で仕事を続けないかとお誘いを受けました。有難い話でしたが、心だけはすっかりネイリスト、お断りしました。
残念がる担当者との会話で、変える「畑」があるのかそれとも専業主婦になる予定なのか差し支えなければ教えて欲しいと聞かれ、正直に「ネイリストになろうと思う」と伝えました。
「ネ?ネイリスト?」と電話口で驚いていた担当者は、しばらくたってまたかけ直して来ました。
「いやぁ、今ネットでネイリストなるものを調べてみました。そんなご職業があるんですね」と。
ずいぶん違う畑に行ってしまうので寂しいけれど、ぜひご活躍を!と言ってくれたやり取りは、今でも懐かしく嬉しく思い出します。
晴れて転身、師匠から紹介されたサロンにてネイリストデビューです。引っ越すまでの期間限定になるため、アルバイトでした。やはり一度は現場を踏んでおかないと、ということです。
時給820円なり。お客様最優先なので、休憩が取れないなんてことも珍しくありません。そして結構なハードワークでした。
お客様と会話をしながらも手を動かし、しかも本来なら無言で集中したいような細かい作業の連続です。
会社員時代とは比べることもできません。
それでも一度決めたこと、しかも若くはない新人なので、技術やマナーなど必死になって勉強しました。
練習やレッスンも続けました。技術の拙さはなんとしても挽回しなくては話になりません。
サロンワーク、そして資格試験のお勉強と講師業のお勉強。師匠のアシスタントとして色々学びました。
技術・接客・美容、と三大要素のネイル。
その奥深さと楽しさは今まで経験したことないものでした。
結婚後、地元を離れるとその決断が正しかったと実感します。
ネイリストという仕事は、その形態に選択肢が幅広くあります。
家事をこなす主婦業の時間との両立も難しくありません。
フリーのネイリストとして、これからをどう過ごしていこうかとワクワクしました。
情報を集めてみれば、フリーネイリストを求めている場所が多くあることもわかり、経験を重ねるため色々なお仕事をさせていただきました。
イベント派遣、カルチャースクールの講師、など。サロンワークと師匠のアシスタントのお手伝いもしばらく続けました。
フィールドが広がると、求められることも広がりだします。ありがたいご要望をうけ、自宅の一室を開放したホームネイルサロンも始めました。
スクール講師業のお話をいただくようになり、いよいよ講師として一人立ちすることになります。講師の仕事はサロンワークとはまったく違い、自分に必要な勉強もさらに増えます。
生徒さんとともに学ぶことも本当に多く、教えるからには「完璧に」出来なくてはと決心し(案外そこは切り離す講師の方も多いのです)、技術の高い先生に師事を受け続ける日々です。
技術の質が良く、レベルの高い方々と接することで、技術はもちろん意識やアート感性も磨かれます。それは講師業においてはイコール生徒さんの質という正直な形で結果となる気がします。
サロンワークにおいては、お客様との密接な時間が魅力です。自宅サロンなので、その特色を好まれていらっしゃる方々は、定期的にお会いできる友人のようです。
色々な業界や世界のお話を伺うことや、お客様と相談しながら作り上げる指先のアートも非常に刺激になります。
現在は、毎週数日のスクール講師業と自宅サロンでのサロンワークをするネイリスト生活です。
「主婦なら十分」の仕事から、「自分にしか出来ない仕事」に意識が変わりました。会社員だった頃とは想像も出来ない広い世界にいる気がしています。
これも、すべてネイルを選んで続けていなければ起こりえないことだったと思っています。
まだまだ、その奥深さを語らずにいられませんが、略歴としての自己紹介はいったんこの辺でしめることにします。
文章を読むこと・書くことは好きなのですが、執筆に関しては素人です。拙い部分ばかりだとは思いますがよろしくお願いします。