青年が教えてくれた洗濯物を干す場所はすぐに見つかった。
どうやら先客がいるようだ。
子連れの女性が服を干している。
私は軽く挨拶をして、横に場所を取った。
なんだか凄く視線を感じるが、とりあえず服を干そう。
しかしここで洗濯物を干すのは気が引ける。
それは何故かと言いますと、なんだか苔まみれで清潔感にかけるからだ。
服を干す場所を簡単に掃除して、お気に入りのジーパンをシワにならないように丁重に干す。
あっ!少し汚れが残ってる!!
あの青年に急かされたからだ・・
Tシャツは大丈夫かな?
これは綺麗だ。
でも首元がダルンダルンになってきてる・・
また新しいの買わなきゃ。
なんて一人でブツブツ言ってると、隣から子供の笑い声が聞こえてきた。
『こら!笑っちゃ失礼よ!』
と母親は笑いを堪えながら子供に言った。
何を笑ってるんだろう??
キャッ!!パンツ一丁なの忘れてた!!
水が溜まっている場所を見つけた。
緑が生い茂って綺麗な所だ。
そういえばしばらくお風呂に入っていない事に気付いた。
服も汚れているし、少し臭う・・。
水を調べた所、少し汚れていたが私の体に比べれば綺麗なもんだ。。
よし、体を洗って服も洗濯しよう。
お気に入りのジーパンは特に念入りに洗わなきゃ!
私は服を脱ぎ、水の中に入った。
しばらくすると一人の青年が近づいてきて、私の入浴をじっと見ている。
どうも気が散ってゆっくりできない。
たまらず私は何か御用でしょうか?と尋ねた。
すると男は『あっ、風呂の順番待ちです。』と言うではないか。
こうして待たれるとどうも落ち着かない。
別に気にせずゆっくりすればいいのですが、変に気を使ってしまうのが私の駄目なところだ。
私はさっさと体を洗い、服をゆすいでお風呂から出た。
『向こうで洗濯物干せますよ。』
青年は服を脱ぎながら教えてくれた。
遠くの方でドンっと大きな音がした。
もしかして巨人?!
私はおそるおそる音のした方に近づいてみた。
するとそこには大きな瓶が倒れていた。
そして今まさに瓶の蓋が開けられて、中から白い粉がサラサラと零れ落ちているではないか。
彼らは蓋開け職人と呼ばれている人達で、世界各地の蓋を開けて旅している。
蓋開け職人と聞くと蓋を開ける事のみが仕事かと思われるが、実はそうではない。
立っている瓶を倒すことから始まるのだ。
ただ倒すだけでしょっと思った方!
これが難しいのです!!
倒す方向や倒した後の転がりなどを計算しないと、大変な事になります。
無事倒した後は、職人さんの腕の見せ所。
フックの付いたロープで、あっというまに蓋を開けてしまいます。
※この蓋開け職人、今もっとも人気のある職業なんですよ。
どうやら私が一番乗り。
袋に一杯塩を詰めていただきました。
老夫婦と別れ、私は旅を続ける。
巨人の話ばかりするおじいちゃんが言うには、この先にビックリする物があるらしい。
私のような若い人達に是非見てもらいたいとのこと。
とても興味深いので、すこし寄り道する事にした。
間もなくすると、おじいちゃんが言っていたであろう物が姿を見せる。
これは一体・・・
どうやら建物らしいのだが、グチャグチャに潰れているではないか。
もはや人が住める状態ではない。
私たちには、こんな事をする力もないし、むしろ家を潰すようなもったいない事はしない。
誰の仕業だろう・・
その時、おじいちゃんの話が頭をよぎった。
巨人は本当にいたのかもしれない・・・
私はやさしそうな老夫婦と出会った。
疲れた顔をした私に、家に来てお茶でも飲んでいきなさいと声をかけてくれた。
私はお言葉に甘えて、少し休ませていただく事に。
案内された家はとても大きく、古びた外壁が歴史を感じさせる。
お茶を飲みながら世間話に花をさかせていたのもつかの間。
話はおじいさんの昔話へ・・
『ワシが子供の頃は、うかうか外を歩けんくらい危険じゃったんじゃ!何故かって?』
おじいさんは遠くを見つめながら一息ついて、こう言った。
『巨人がおったんじゃ。』
『そりゃ~でかいってもんじゃあないぞ!上の方なんぞ霞んで見えんくらいじゃ!
奴らは、ワシらにお構いなしでそこら辺をウロウロ歩き回るんでな~!
踏まれそうになって何べんも死にかけたわい!じゃがな!ワシらもやられっ放しじゃあないぞ!
先の尖がった棒で応戦したんじゃ!そしたらな・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
おじいさんの話はこの後も終わる気配もなく、私はただ頷くのが精一杯だ。
昔話でよく聞いた巨人伝説。
私は見た事もないし、子供を恐がらせるための昔話だと思う。
ここ最近バタバタとしておりまして、今回は小さい人シリーズをお休みさせていただきます。
しかし非常に嬉しいバタバタだったんです。
それは何かと言いますと、絵の展示のお話です。
詳しくはこちらへアクセスして、『メガネがね、展』を見てください。
纏オプティカル http://m.matoi.main.jp/
※僕の下手な説明ではかえってややこしくなりそうなので・・
モチーフは全てメガネ!
僕は一点ですが参加させていただくことになりました。
総勢9名によるメガネだらけの展示会です!
是非お近くの方は足を運んでいただければと思います。
そしてついでに僕の絵も見てやってください!
よろしくお願いします!!
大きなマンションを見つけた。
なんとも派手だな~っと上を眺めていると、壁を登っている人がいた。
どうやら私は相当疲れているようだ。
目をこすってもう一度見てみると、やはり人がいる。
『どうしたんですか?』
後ろから突然声をかけられた。
振り返ってみると子供連れの女性が立っていた。どうやらこのマンションの住人のようだ。
彼は何をしているのか尋ねてみた。
『あ~!彼は最近ここに引っ越してきた、登ティッシュ家の花上さんです。』
登ティッシュ家??
『なんでも世界各地のティッシュに登る旅をしていたらしいわよ。』
変わった人がいるものだ。
しかし階段があるのに何故壁を登るのだろう?
『そりゃあ登ティッシュ家だもの。そこにティッシュがあれば登るわ。それにこのマンション階段は3階までなの。そして彼の家は4階。
最初は皆気味悪がっていたんだけど、もう慣れたわ。花上さん今日はAルートね。』
Aルート?
『登るルートが何通りかあるのよ。Aルートはなかなか難易度高いわよ。』
世界は広い。
私はとても珍しい人達に出会った。
彼らはこの容器で暮らしている。
それだけなら特に珍しい事はない。
ビックリする事に、家と一緒に旅をしているのだ。
相当過酷な旅をしてきたらしく、家はすでにボコボコになっていた。
さて、どうやってこの家で旅をするのか?
それは実に簡単な事で、この家はとても軽く少し風が吹くとコロコロと転がって行く。
風まかせの気ままな旅人だ。
僕はこの生活に憧れを抱いた。
だが話を聞くと問題も多々あるようだ。
行きたい所に行けない。風次第だ。
止まりたい時に止まれない。これまた風次第だ。
何より移動時に転がるので気持ち悪そう・・
(最後の問題は彼らからすると、まったく問題ないようだが。)
ちょうど風がおさまり家が止まったので、ここで数日過ごすらしい。
風で家が転がらないように、杭を打ち込みロープで固定する。
この作業がかなり難しいそうだ。
家から出て、ロープで固定するまでに風が吹くと家だけ転がって行ってしまうからだ。
そうやっておいてけぼりをくらった人を何人も見てきたらしい。
ご主人が一緒に旅しないかと言ってくれた。
だが丁重にお断りした。
とても辛抱できそうにもない・・
地震から一週間・・
遅くなりましたが、被災者の皆様に謹んでお見舞い申し上げます。
今僕には何もすることできず歯がゆい気持ちです。
そしてこの震災のあとにいつもの小さい人シリーズを書く気持ちにはもっていけませんでした。
勝手ではありますが今回は小さい人シリーズはお休みをいただきます。
一日でも早い復興を心よりお祈り申し上げます。
変な物件を紹介されて少し不機嫌になった私は、喫茶店でコーヒーでも飲んでリラックスする事にした。
あれ?
椅子がない。
私はマスターに椅子はないのかと尋ねた。
『ここは立飲み屋なもんで。』っと甲高い声で答えてくれた。
あっ。そうなんだ。
とりあえずコーヒーを注文した。
ちょっと座りたかったんだけど仕方ないか。
マスターがコーヒーの粉をコップに入れて、お湯を注いでいる。
良い匂いが漂ってきた。
すると突然マスターは語りだした。
『昔はこの店で豆を挽いていたのですよ。』
遠くを見つめながらマスターは続けた。
『それが今じゃあ価格戦争の波に飲み込まれて、インスタントをだす始末・・
ですがね!いつかまた本当においしいコーヒーを安く飲んでいただける店にするのが私の夢なんです!』
そう言いながら私の前にコーヒーを持ってきてくれた。
だが私はカウンターと店の床が同じなのが気になって仕方なかった・・。