「なんでここにお店を出したの?」
初めてのお客さまにだいたい聞かれるのがこの質問です。
恵比寿からも白金台からも徒歩10分以上かかる
この中途半端な場所に、どうして出したのか?
白金台って和食のイメージはあまりないよね、
結構テナントが入れ替わりの激しい土地だよ。
どうしてここに??と。
私たちにとっては、”ここ”だったんです。
不動産探しを始めたのは昨年の春です。
お店をやるぞ、と決意し、4月に前職を退社しました。
板長である主人は神戸の前の店で働いていたので、
私ひとり、東京で物件探しが始まりました。
昼はネットで毎日100件ほどリサーチし、
夜に主人と打ち合わせし、見に行く物件を決め、
日中にアポを入れて内見しにいって、写真をとって
夜に主人に報告、それを繰り返し、
40件以上は実際に内見したでしょうか。
飲食店の経験がほとんどない私です、
何を基準にしたらよいのか、
どこをチェックしていけばよいのか、
はじめは全くわからないまま不動産に連絡をとり、
毎日主人に電話で確認をとりながら、
見よう見まねで内見をしていきました。
正直、どの物件がよくて、どの物件があわないのか、
わかりませんでした。
チェックリストを持っていき、
どの駅から徒歩何分、
何平米で、何階で、グリーストラップはあるか、
電気は何アンペアだ、排水管の太さはよいか。
排気はどうなっている、だの確認をします。
数字では、理想の形はあるんです、
でも、
どうも合致しない。
ちっともイメージが湧きませんでした。
友人の不動産会社の社長にも、
そんな私を見て、
「そんなんじゃ”絶対に”決まらないよ。
いい物件があっても、逃しちゃうよ。」
と厳しい意見を頂戴することもありました。
2年かけて見つける方もいる、と聞いていました。
半年後にうまく見つかる人なんてそんなにいない、と。
本当に見つかるのかな。
私が見つけられるんだろうか、とふと迷うこともありました。
でも、
「必ず見つかる、私たちを待っている物件がある」と信じて
お客様がいて、板長がいて、私がいて、
みんなが幸せそうに美味しいご飯を囲んでいる
お店をイメージし続けました。
そして8月に出会ったのが、今の物件です。
ボランティアでスタッフをしている講演会の懇親会場で
出会った不動産会社の方に、
出したいお店についてお話していたら、
協力してくださることに。
早速次の週には物件を出してくださり、
内覧をしにいきました。
初めて、「ここでお店をやりたい!!」と感じたのです。
急いで主人に連絡し、
その次の週末には神戸から来て見てもらいました。
一階で窓が大きく、
二面が緑の多い公園で囲まれている部屋でした。
ここなら季節を感じながら、
いいお店が作れそうだなとふたりとも意見が合致しました。
そしていろんな方のお力を借り、
なんとか契約を結ぶことが出来たのでした!!
そうしてご縁がつながって出会えたこの場所で、
お店を開くことができました。
ここにお店を出せることに、本当に感謝しています。
どの駅からも中途半端で、
静かな住宅地、
商売は難しいと多くの人がおっしゃいます。
でも、私たちはここで日々励んでいこうと決めました。
一日いちにち、誠実に、お客様に向き合っていきます。
この場所を選んだことが正解だったね、
と20年後に語りあうイメージを持ちながら。
2014年1月25日
白金台こばやし
小林 綾子
「将来カフェや自分のお店を持ちたいです。」
そう思われている方、周りにいらっしゃいませんか?
結構いらっしゃると思うんです。主人も、「いつか自分の店を」と料理人なら誰しも抱くであろう、独立の夢を持っていました。私もそんな主人とお店を「やりたい」人でした。主人と一緒になることを決めてから、ずっとお店を「やりたいんです」って周りに言っていました。
「やりたい」とそれを「やると決めること」は大きな差があると今では感じています。当時は全然わかりませんでした。ある時、実際に店舗を持たれている先輩に聞かれました。
「いいね!やったらいいよ。
じゃぁ、【場所】はどこでやるの?
それは何故?
そこは【坪単価】いくら?
【客単価】はいくらでやるの?
【コンセプト】は何?
【ターゲット】は誰?」
・・・どんどん出てくる当たり前の質問に、なんとなくしか(実際、ほとんど!)答えられませんでした。やりたいけど、どんなお店をやりたいか、相手に伝えられるほど、明確じゃなかったのです。それに気付いてはっとしました。なんで答えられないんだろう、こんなことで、本当にお店なんてできるのか、いや、できないぞって。ただ言ってただけだったんだなってショックでした。
慌てて、主人と一緒になって、真剣に考えてみました。
私たちは、どんなお店にしたいんだろう?
「カウンターがメインで、そのカウンターからは、板長がお料理を作る姿がよく見えて、お客さんが来たら気持ちがまぁるくなるような、ほっとする店がいいね」
場所は?「渋谷や新宿みたいながやがやしたところじゃなく、銀座や恵比寿みたいな駅は大きいけど、大人な街!駅近じゃなくて、ちょっと外れた小道にあるような隠れ家みたいな場所がいいな」
大きさは?「17坪くらいかな」
坪単価は?「1万5千円くらいまでで・・・」
・・・聞かれたところをとにかく数字に出して、明確にしてみたんです。あとから考えると、まだまだ明確とは言えないんですが。それは何故?って聞かれると、なんとなく!となっちゃうんですよね。何時間も電話して(遠距離なので)、専門書を買って、実際にやっている方に話を聞いて・・・そしたら何が必要か、出てきました。 どんどん現実味が出来てきて、正直、こりゃ大変なことだぞ!!と思い始めました(笑)。
それを持って、周りの友人、諸先輩方に話していると、世界が変わってきたんです。周りが積極的に情報を提示してくれたり、不動産の情報が目に入ったり、金策が出来てきたり・・・応援してくださる方も出来始めました。そして実際にお店を出すことになったのです。嘘みたいですけど、本当なんです。
いつかやりたい、ずっとそう思っていました。
いつやるか、どんなお店を持ちたいか、
明確にしたことで、初めて私たちの世界は動きだしました。
実は、どちらかというと私のほうがのり気で、主人は半信半疑のところがあったと思います。でも、ふたりで具体的に話しているうちに、本当にお店をやるんだ、っていう気持ちが強くなっていきました。それがどんどん現実になっていった。そんな感覚で今に至ります。
主人の料理が本当に美味しいということが、ここまでに至った最大の土台だと思います。やりたいと思って始めてみた日本酒会で、主人の料理を多くの人が食べてくださって、「美味しいね」って笑顔をみせてくださいました。(日本酒会の話はまた後日・・・)
和食の世界で22年生きてきたことは、本当にすごいことだと感じています。4年間ほどは包丁に触らせてもらえない、厳しい修行時代。朝から晩まで、先輩より先に寝たり、帰ることはできない厳しい環境の中、主人は一生懸命、まっすぐに仕事に取り組んできました。その時間があったからこそ、今があると思っています。そのことにとっても感謝しています。主人の料理を喜んでもらえる場を作れるいま、とても幸せです。(板長の修行時代もまた後日・・・)
さて、こんなお店にしたい。ということを明確になったところでやっとお店づくりのスタート地点についた私たち。これから、不動産探しを始めるんですが、これまたなかなか見つからず・・繁盛店を運営されている先輩に、「そんなことではお店をつぶすよ」と言われたり、不動産のプロの方に、「そんな考え方では、いつまでたっても見つからないよ!」とくぎを刺されたり・・・これからいろいろ起こります。
不動産が見つかるまでの話は次回、お届けしたいと思います。
またお付き合い頂ければ嬉しいです。
このたびこちらでコラムを書かせて頂くことになりました、
女将の小林綾子(こばやしあやこ)と申します。
実はまだ「デビュー前」の私です。
女将経験はゼロ。
あっ、旅館の女将ではなく、日本料理店の女将です。
「女将=旅館や飲食店などを取り仕切る女性」です!
女将経験ゼロな私が、なぜ女将を務めることになったのでしょうか。
それを説明するために、ここで自己紹介をさせて頂きます!
1985年9月北海道札幌市で生まれ、高校生まで家族とともに過ごしました。神戸の大学へ進み、大学時代は食べざかり。食いしん坊な私はまかない目当てで、割烹料理屋さんでホールのアルバイトを始めました。続けることは得意な私。4年間アルバイトを続けました。
そこで来ました運命の年(!)2008年10月、学生生活最後の半年間で、出会った板長さん。彼の作るお料理のおいしさ、きれいさといったら、衝撃的でした。すぐにとりこになりました。(もちろん人間性にもひかれました。)卒業と同時にお付き合いが始まりますが、就職してすぐ、営業希望の私は東京勤務となりました。そこから神戸と東京で4年間の遠距離恋愛を経て、結婚に至りました。お店を作ろう、という共通の夢があったから結婚まで辿りついたのかもしれません。実は15歳年上の板長、20年間和の道一筋で板長をしている主人を一番そばで支えるため、私は、女将になります。
せっかくやるならば、目指すは「お客様の日本一の店になること!」です。料理は主人におまかせして、たまに口出しして、私の担当はお店のプロデューサーです。お客様とお店、お料理を結びつけ、その場を取り仕切る、女将です。来てくださるお客様が美味しい笑顔がみせてくださるように、お店にきたら少しでも元気になって帰ってもらえるお店を作ります!
はじめてのお店づくりには、いろんなことがおこります。資金調達、計画づくり、物件探し、契約、工事、デザイン決め、施工会社決め、仕入れのあれこれ・・・。今まで6年間けんか一つしなかった私たちも、おそらくこれからは、けんかもしながら進んでいくことでしょう・・・その過程を皆様にお届けできればと思っております。
何からなにまでわからないことだらけ、初めてのことでわくわくドキドキの毎日です。そんな私にJunk Stageの優さんがお声かけてくださいました。執筆活動も初めてではございますが、精一杯お伝え出来ればと思いますので、お付き合い頂ければ幸いです。
どうぞ、よろしくお願い致します。