« 初体験「サンバ・セッション」。くぅ〜(>_<)。 | Home | 講演会を行いました。 »
皆さん、おはようございます。
前回はコジ・ファン・トゥッテの前日譚でしたが、
今回は本編のノベライズです。
このような解釈でドラマが進むと思っていただけたら。
初めは飲み友達、グイレルモのベッド自慢からだった。
自分の口説きとテクニックをもってすれば、
僕というフィアンセのあるドラベッラをも落とせる、
僕からも取り上げることが出来る、と言い出したのだ。
僕はカッとなった。
グイレルモのフィアンセであるフィオルディリージこそ、
そう、前に述べた僕・・・フェランド・・・の元彼女だった。
そして何の因果か、その妹のドラベッラが、
僕のフィアンセとなったのである。
結局二人で、自分のフィアンセの貞節について、
言い争うことになってしまった。
カフェに入っていくと、そこにいたのが共通の友人、
ドン・アルフォンソだった。
彼は僕たちの言い争いを鼻で笑った。
「貞節だと?そんなものが実在するとでも?」
僕たちは賭けをすることにした。
フィアンセの自分に対する貞節についての争いが、
いつの間にか、貞節の存在という、
一般論的なものにすり替えられてしまったんだ。
賭け金は100ゼッキーニ。
ごく慎ましやかな食費1年分だ。
とりあえず、僕たちは姿を消さねばならない。
軍の召集令状が来て、戦地へ行く、という芝居をした。
その時、フィオルディリージが振り向いた、
その視線の先に、僕がいた。
彼女は少し僕を見つめたが、慌ててうつむいてしまった。
僕はフィオルディリージに心を残しつつ、その場を去った。
さすがに住人ではない男たちだけではどうしようもないから、
そこは助っ人を調達することにした。
居候のデスピーナを、こちらの内情は知らせずに、
味方に引き入れることにしたのだ。
彼女はドラベッラの同級生で、音楽を学んでいる。
実家が貧しいため、ごく安い家賃負担で、
姉妹のマンションに同居しているのである。
僕たちは中東系マフィアに変装して戻ってきたが、
デスピーナは僕たちの正体に気付かなかった。
姉妹もしばらくは気付かず、僕たちのアピールに対して、
これといった「良い兆候」は示さなかった。
だが、一つ気になったことがある。
ドラベッラのガードが、特にグイレルモに対して
少し緩いのである。
気が付くと彼女は、グイレルモの近くにいた。
あまりいい気はしなかった。
次の一手として、僕たちは狂言で服毒自殺をした。
デスピーナが医者に変装して現れ、
玩具のAEDで僕らを治療した。
僕たちは姉妹にキスをせがんだ。
フィオルディリージは真っ当に拒んだが、
ドラベッラの行動は違った。
去り際に、僕の目を睨み、頬を引っ叩いて行ったのだ。
その後、デスピーナが説得してくれたこともあり、
僕たちがセレナーデを歌い、
夕べのお見合いがセッティングされることになった。
フィオルディリージが意外にも、散歩に僕を誘った。
ドラベッラとグイレルモを残すことに
一抹の不安を覚えつつ、フィオルディリージについていった。
僕は・・・堂々とはいえない態度だったと思うが・・・
フィオルディリージを口説いた。
しかし、そのうち、彼女の態度が妙になってきた。
私の変装を解いていったのだ。
「やっぱり・・・歌声でピンときたわ。」
やはり隠せなかったんだ。
騙された、裏切られた、と言って彼女は逃げた。
僕は追いかけた。
しかし、彼女の逃げ方には力がなかった。
僕を拒んでいるのだが、拒み方に力がない。
まだ彼女の中に、何か残っているのだ。
しかし、振り向いてはくれなかった。
僕の顔を見て、溜息をついただけ。
僕は何とも言えない気分だったが、
とりあえずグイレルモに中間報告しに行くことにした。
少し様子が変だったが、多少脚色して、
フィオルディリージの貞節を報告してやった。
そして懸案事項のドラベッラの報告を聞こうとしたのだが、
ますますもって態度がおかしい。
彼は地面に放られた僕の演奏写真が載った雑誌を指さした。
一応同情する態度を見せてはくれたが、心がこもっていなかった。
奴には優越感がある・・・。
グイレルモがドン・アルフォンソを探しにいった時、
ふと誰かの視線に気が付いた。
見ると、ドラベッラが微笑んでいる。
そのいでたちは何と裸で、シーツを体に巻いただけ。
その表情を見て僕は悟った。
僕たちの正体を理解した上で、グイレルモと寝たんだ。
彼女は去って行った。
僕は頭が真っ白になった。
もう僕にはよりどころがない。
フィオルディリージを失った気持ちを
ドラベッラに向けていただけ、ということもわかった。
僕は裏切られたんだ・・・でも誰に?
ドラベッラ?フィオルディリージ?
心の中の声が、愛してる・・と囁いた。
そうだ、もう僕には失うものは何もない。
ドラベッラがどう思おうと、
いや、フィオルディリージがどう考えようと、
僕が愛しているのはフィオルディリージなんだ。
僕の願いは、フィオルディリージに誠実であること。
フィオルディリージを愛する気持ちに誠実であること。
その願いを、僕は決死の覚悟で貫くまでだ。
たとえその結果、僕が死ぬことになったとしても、
僕は彼女の胸に刻印されるだろう。
僕の誠意が伝わらなければ、
生きていなければいいだけの話だ。
僕は決死の覚悟で口説いた。
フィオルディリージは僕の元に戻ってきてくれた。
その後はお決まりの狂言結婚式、
そして、狂言帰還。
あわや、「元の鞘」に収められるのかと思いきや、
フィオルディリージとデスピーナが目配せするなり、
フィオルディリージは僕に身を任せた。
そして僕たちの道行きに、デスピーナが花を持って
ついてきてくれた。
その後、どうやらドラベッラがドン・アルフォンソを
刺し殺してしまった、という報告をきいたけど、
ドン・アルフォンソって誰だったっけ?
まあいい、僕がフィオルディリージと結ばれる、
そのきっかけを作ってくれた人間がいたというのなら、
僕は素直に感謝しておきたい。
しかし、ドラベッラも、人を刺し殺したにしては、
警察沙汰になることもなく、
グイレルモと暮らしているそうだ。
だって、誰も死んでいなかったのだから。
え?ドラベッラに対して?
いや、もう何も思わないよ。
苦しい時を一緒に過ごしてくれた。
それだけ感謝するよ。