ご無沙汰しております、朽木です。
ここのところこのコラムをお休みさせていただいておりましたので、近況報告がてら、最近の僕がなにをしているのかをご紹介させていただこうと思います。
ライターとしては、エンタメ系サイトでの連載がはじまり、活動の幅が広がりました。
医学生としては、卒業試験のまっただ中です。
病院にはいくつもの診療科がありますね。内科に外科、産婦人科に小児科、数えてみるとだいたい30ほど。
わかりやすく言えば、大学医学部附属病院では、これらのすべてについて教授がいて、教室があり、すなわち授業があり、試験があるわけです。
つまり、現在僕は医学部の6年生として、30くらいある卒業試験を、2ヶ月ほどかけてひとつずつ消化している毎日です。
だいてい3日に1回くらいのペースで卒業のかかった試験があるわけなので、けっこう大変です。
卒業試験が終われば、数ヶ月後には医師国家試験が控えています。
医者になるというのはそうそう簡単なことではない、と実感します。
ここまで頻度が高いと、ひとつひとつの試験にも出来不出来が生まれます。
しかし、多くの大学では、試験の合格点は60点と定められています。
合格点に達しなければ再試験、再試験で合格しなければ留年。再試験の数が多すぎると、再試験を受験する資格がなくなり、これも留年です。
そこで、学生はなんとか60点を割らないように勉強をしますが、そのあたりについてはこんな話があります。
医学部の試験について、大学職員と市民が対談したときのことです。
合格点が60点であることに対して、市民から「60点しか取れない人間が医者になるのか」との発言がありました。
患者さんとしては、わからなくもない心理です。しかし、僕はなんだか釈然としないものを感じました。
その違和感を抱えたままこの数年を過ごしていたわけですが、この卒業試験にあたって、思うところがあります。
たとえば、出題者が平均点が75点になるように問題を作っていたとしましょう。
その場合、その試験で90点を取れる学生がいたとして、一方では、60点しか取れない学生がいることになります。
このことは問題でしょうか。僕は、違うと思います。
この場合、60点しか取れない学生の知識水準が、医者として要求されるレベルを超えていればいいのではないでしょうか。
そもそも、合格点を60点と定めているわけですから、もちろん出題者はそのように問題を作っているはずです。
つまり、60点しか取れない人間を責めるのではなく、そのような試験で90点を取れる人間を褒めればいいのです。
この結論に思い至ったとき、なんだかスッキリとした気持ちになりました。
60点という言葉の漠然としたイメージだけで、医者になる資格の是非が問われてよいはずはありません。
このように試験制度ひとつとっても、医者および医療には過度な要求がなされがちであることがわかります。
命を預かる職種ですから、常によりよい医療を提供するべく、努力を重ねることは当たり前です。
しかし、患者さんが医療現場の実際を正しく理解しているとは必ずしも限りません。
もし、時として医療者への批判が行き過ぎるようであれば、そのときは論理的な考察に基づく対処が必要なのではないかと思いました。
いつも60点ギリギリな僕の言い訳だと思ってくださって構いません。
引き続き、医学生兼ライターとして頑張ります。
朽木誠一郎