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イスラム国家は、犠牲祭と呼ばれるイスラム教徒の祝いの時期。
聖地メッカ巡礼の最終日のお祝いとして、メッカ巡礼に行かない人も羊や牛、ラクダなどを生贄に捧げるこのお祭り。
街中のモスクで動物が生贄として捧げられている様子は、少しグロテスクて刺激が強すぎる。
生贄は、羊・牛・ラクダが一般的。
羊は値段が安く、ラクダはお金持ちしか買えないんだそう。
羊は安いと言っても動物一匹買うのは大変なこと。
親戚中でお金を出し合って動物を買って、生贄に捧げ、モスクで殺してもらって、親戚みんなで祝いとして食べる。
街中のモスクですごい数の動物が殺されるので、血の海とかしているモスクも多くて外国人には直視できないのがこのお祭り。
このお祭りで捧げられたお肉のうち、1/3は貧しい人に寄付されるそうで、現代は生贄用の動物の売り上げ金の1/3が寄付にまわされることもあるのだそう。
イスラム教もヒンドゥー教もキリスト教も、分け与えるということを当然とする宗教なため、食べ物やお金を貧しい人に寄付する習慣がある。
だからマレーシアはホームレスが圧倒的に少ない。お金、衣服、食べ物を提供してくれる場所は街中いたるところにあって、毎日色々な場所で炊き出しも行われている。
宗教の力とはすごいものだなぁっと思うのと、多民族・多宗教のマレーシアは特に面白いと思う。
この国は、イスラム教、ヒンドゥー教、中国仏教が混在していて、それぞれの寺院がいたるところにあって、それぞれの宗教を信仰する人が毎日祈り、お供え物をして、それぞれの宗教を大切にして生きている。
だから、時々”動物”について混乱することがある。
イスラム教は、”豚”を穢れた生き物としているため食べない。そして”犬”は禁忌としてペットとしても嫌がられる。他の動物のお肉も、イスラム教で決められた方法で殺したお肉以外は口にしない。
ヒンドゥー教は、”牛”を神聖なものとして食べることは絶対にしない。”牛”のミルクを飲むこともしないため、ヒンドゥー教徒のミルクは”羊”。そしてヒンドゥー教徒は”牛”以外のお肉も口にしないベジタリアンが多い。
中国仏教は、私達日本人と同じで、”豚”、”牛”、”羊”・・・何でも食べる。
一つの国の国民が、それぞれの宗教の戒律に従っているため、同じマレー人でもあっても、ある人は”豚”を食べないし、ある人は”牛”を食べないし、ある人は野菜しか食べないし、ある人は”犬”だって食べる。
この不思議なバランスの上で成り立っている多民族国家はたまらなく面白い。
レストランやフードコートに行っても、各宗教・各人種に沿ったお店がしっかりと用意されている。
この国は宗教・民族の違いに寛容的で、共存することを知っている。
普通に考えたら喧嘩になりそうなものだ。
ヒンドゥー教徒にとって神聖な”牛”を生贄に使ってしまうイスラム教徒がいて、イスラム教徒にとって穢れた”豚”を食べる人種がいて、禁忌である”犬”をペットにする人種がいて、それを食べる人種までいる。
きっとそれぞれの宗教ごとに、他の宗教や人種に対して思うところはあるんだろうけど、それでも表面的にはお互いの宗教を尊重して喧嘩したりしない。
多民族・多宗教の国家ならではの絶妙なバランスは何とも不思議な感じがする。