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2013/10/03

地球の舳先から vol.291
キューバ編 vol.7

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最近、フルアテンドの旅ばかりしていたので、こういう自由旅行もいいなと思い始めていた旅の中日、この日だけは朝から晩までフルアテンドでツアーを組んでもらっていた。
行こうと思えば行けるのだろうが、身一つで行くところじゃない。
国交の無いはずのアメリカが無期限租借しているグアンタナモ米軍基地。
アルカイダの主犯格が収容されているらしい悪名高き収容所は映画にもなった。

数年前までは、近くの(むろんキューバ側にある)展望台が開放されており、きちんと政府関係組織に申請を出して許可をもらえば訪問して米軍基地をのぞむことができたというが、今は近づくこともできない。
…と当初、無碍に断られたのだが、
「じゃ、グアンタナモへ行く車だけ手配してください」
「あっちは予約をしてもドライバーが来なかったりするので事前に車の手配を受けてない」
「じゃ、現地で交渉するから、英語が喋れるガイドだけ手配してください」
と食い下がりまくっていたら、カイマネラという港町が、いま現在訪問できる最も近い場所だということでオリジナルのツアーを組んでくれた。
なにがどれだけ見られるのかわからないまま、手配を頼んだ。

8月13日。フィデル・カストロの誕生日。
しかし偶像崇拝などしない国なので、ゲバラの銅像はあってもカストロの銅像はない。
誕生日といっても、静かなものだった。

早朝、ホテルを出ると、きちんとガイドと車が待ち構えている。
チェ・ゲバラのボリビアでの死を悼む記念碑(彼はキューバ革命のあとしばらくしてボリビアへ渡り、自分がチェ・ゲバラであることを隠して革命活動を行い死んだ)を簡単に見学し、グアンタナモ州へ向かう。
オモチャのような、人が乗っているとは思えないグリーンと黄色の飛行機が低空飛行していた。
前日から気になっていたので、あれはなんだとガイドに聞くと、「蚊よけ」と言う。
英語が通じなかったのだろうかと思いもう一度聞くと、もう一度言う。
「だから、蚊が多くて、マラリアとかが流行るから、まいてる」
な、何を?!?! 確かに、サンティアゴに移動してから蚊を一匹も見ていない。

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(記念碑。ゲバラがボリビアで名乗っていたコードネーム「ラモン」が彫り刻まれている)

綺麗な幹線道路を2時間ほど走り、到着したグアンタナモ・ホテルで休憩。
軽装の観光客で溢れていたが、ほとんどの人はバラコアという風光明媚な地へ行くのだそうだ。
「カイマネラは海があっていいところだが、政府がプロモーションしないから皆バラコアばかり行く」
とこぼすガイドと、まだ昼前で準備中の店で、1杯のモヒートを出してもらった。

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ぷらぷらと町を歩いていると、角の一角に、屋内が真っ白な煙で充満し、
その煙がちょっとずつ外に漏れ出している、店だか家だかなんだかを発見した。
「あれは火事ですか」
「あれも、蚊よけ。さっき見た飛行機と同じ」
ちょっと!絶対それ人体有害でしょ!枯葉剤しか連想できないよ!
「キューバ、医療大国だから」
…間違ってる。多分…。

そうこうしながら、カイマネラへ行く電車までの時間を潰していると、ガイドの携帯に電話が。
なにやら難しい話をしているが、サンティアゴに来てから地方差(方言)なのか
ネイティブの早口なのか、彼らのスペイン語がほぼまったく聞き取れなくなっていた。
電話を切ってガイドが難しい顔で言う。
「今日は電車に乗れない。」

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…この日が順調に行くはずないことは、なんとなく想像がついていた。
そもそもキューバの鉄道は色々な意味で不規則なので、電車がダメなら車で行く、
と事前に手配をしてくれた日本のエージェントの方も言っていた。
そのくらいはたいした問題ではない。
電車の時間を待つ必要もなくなったので、すぐに出発。
30分ほど走ると、案外すぐ、カイマネラへ続くセキュリティの関所に到着した。

掘っ立て小屋よりも結構きちんとしたプレハブ的建物に、踏切のような停止線。
つまりその先は立入制限区域ということだ。
わたしのパスポートを預かって、小屋へ消えていくガイド。
市井のタクシーと違って冷房がキンキンの専用車で、こちらは待つだけ。
ガイドは行ったり来たりして、何度もどこかへ電話をかけている。
30分ほどそれを繰り返した後、車へ帰ってきた。

「今日は特殊な日で、状況も特殊で、このままカイマネラへ行くことはできない。
サンティアゴへ帰るか、グアンタナモで政府公認ガイドに同行してもらうかだ」
ええい、引き下がれるか。「…で、いくらかかるの?」「お金はかからない」「は?! 何で?!」
社会主義の仕組みは、たまにというかいつもよくわからない。

と、いうか、そんな簡単に、そんな厳重なセキュリティをスルーする「公式ガイド」
を今日の今日でアサインすることが可能だとは思えない。
まあいいや、時間もあるし、ぎりぎりまであがいてみよう、と思い、
わたしたちはまたグアンタナモの市内にとって返したのだった。

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つづく

2013/10/03 06:56 | yuu | No Comments