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2011/03/03

私は現在、オペラ歌手育成部の研究生です。
大体2~3年で修了するのですが、修了の最後の年に修了公演があります。
私は今2年目で、4月から最終。

今年は1つ上の先輩方の公演を盛りたてるために裏方スタッフとしてお手伝いをしています。

私の担当はずばり、「字幕」です。
オペラは大抵、イタリア語、ドイツ語、フランス語の台本なので私たち日本人からすると、いわゆる外国語で歌われています。

映画で画面の下に字幕が出ているように、オペラも舞台サイドか上に簡潔な日本語訳が映し出されているのです。

今回、先輩方が上演するのもイタリア語の作品なので、ここで「字幕」係の出番ということです。

昨年、ヴェネツィアの街、小広間を背景に話が展開される「イル カンピエッロ」の字幕を担当したときの話です。

演出家の先生の案でヴェヌート語を三河弁に、標準語やフランス語が話せる主役は名古屋弁に訳して字幕を作ろう!
という話になりました。

まず、日本語の標準語を方言に変換するところが難しい。
さらに、それを1行20文字以内に収めて簡潔に。

…しかし、上映を観にきているお客様は東京の方はもちろん地方出身の方。
東海の訛を理解できない人だっているのです。
そんな方々も「あぁ、名古屋弁。。」と理解できるように
コテコテでかつ、標準語に近くソフトに…を意識して字幕を作成しました。

そして、パソコンのPowerpointに打ち込み、
歌い手の演技やブレス、流れるオケの音楽に沿ってEnterキーを押し映し出す。

昨年は2人態勢で、楽譜と舞台を見ながらキューを出す者。
1人はEnterキーをタイミングよく押す。

少しでも遅れると、演技の内容と違う台詞が映し出されてしまうのです。

演技と違うといえば…
歌い手は歌い手自身で、歌詞や台本のセンテンスを訳し、その言語の人物として言葉を身体に叩き込んでいるのです
(イタリア人の役ならイタリア人として理解し演じている)

なので、字幕作成者が同じように理解していないと、舞台上の人物の人格、性格と
映し出されている台詞から感じるソレとかなりのギャップを感じることになるのです。

これは大変!!

舞台上には空気の綺麗なお屋敷に住んでいるお嬢様が恋を語っているのに
、台詞は渋谷のギャルが彼氏の自慢…にもなりかねないのです。
それはそれで楽しそうですがね。

たかが、字幕。されど字幕です。

演者の方々も、自分が演じている瞬間にどんな日本語訳が映し出されているのか意識していなければならないとも言えます。

観客の方100%がオペラの内容を理解しているわけではないし、その言語をききとれるわけではないし
演技みて字幕をみて…理解するのですからね。

今年はお屋敷の人間、村娘くらいの階級が現れるくらいですが
やっぱり日本語のニュアンスは少しずつずズレるだけで伝わることも違ってくるので…

これは責任ある仕事です。

2011/03/03 01:06 | uika | No Comments