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2013/08/19

 

『おばちゃん』、

あの扉の中でメグが熱いよ熱いよって言ってるよ、

メグが青い空に昇るのは嫌だって言ってるよ、

何も知らない2歳の進君が、

喋りだします、

 

今日は15年間可愛がられた友人の愛犬メグが火葬にされる日です、

空は雲一つない青空、

15年前に空から舞い降りてきたメグが、

今日は再び空に戻っていく日です、

ペット用の火葬場は思ったよりも奇麗に作られており、

シルバー色に輝いたステンレスの扉が4つ、

今日は私たち以外は誰もいないようです、

最後のお別れ、

皆でメグの棺に花を手向けます、

友人の愛犬メグとのお別れです、

 

『おばちゃん』、

メグは暗くて狭いよと言ってるよ、

昨日メグが眠った起きなかったけど、

おばちゃんこれからメグはどこに行くの、

 

葬儀の担当者が、

こちらに向かって深々とお辞儀をし、

メグの入っていったステンレスの扉に向かって、

深々とお辞儀をします、

白い手袋をした指が慣れた手つきで、

まるでメグの運命を決めるかのように、

ステンレスの扉の横にある赤いボタンを押します、

音もしなければ臭いもしません、

ただ赤いパイロットランプが点灯しただけです、

メグがこの地上から喜びと悲しみの思い出だけを残して、

去っていくようです、

骨を骨壺にいれてもらい、

友人の自宅に戻って来ると、

進君が喋りだしました、

 

『おばちゃん』、

昨日はメグちゃんが眠ったま起きなかったの、

今日はメグちゃんどこに行ったかと思ったけど、

メグちゃんママの後を追っかけて、

お家に戻ってきたんだね、

メグちゃんが家の中でママの後を追っかけて楽しそうだよ、

 

『おばちゃん』、

メグちゃんが、

ママに御飯をねだってるよ、

 

『進君、進君はどこから来たの』、

僕、

ええとね、

青い空にいたんだ、

そしたらママと目が合って、

あの人が僕のママだったら良いなって思ったんだ、

そしたら急に暗くなったんだ、

でもそこはとても暖かく、

自由に動けたよ、

それから僕、

くるっと回りながら細いところを通ったら、

急に明るくなったんだ、

そしたらママの声が聞こえたんだよ、

 

『おばちゃん』、

メグがあんなにママに御飯を御ねだりしてるのに、

ママったらなんで御飯上げないの、

何でメグと遊んであげないの、

ママったらメグが見えないみたいだね、

良かったメグが帰ってきてくれて。

 

『進君、おばちゃんのビッケは見えるの』、

進君は少し首をかしげていたが、

思い出したように喋り始めた、

ママが言ってたけど、

おばちゃんが飼っていた犬の事、

僕は知らないけど、

今、ここにはいないよ、

きっと遠く青い空から呼ばれたんだよ、

皆青い空から来るんだけど、

誰かが青い空から呼ぶんだ、

『戻ってきなさいって』

そしたら皆どこにいても青い空に戻るんだよ、

きっとおばさんのビッケも、

青い空にいるはずだよ、

でもおばさんの事は忘れないよ

 

隣にいたママが大粒の涙を流して泣き出しました、

『パパ、ビッケはどこに行ったんだろうね、

私は今でも哀しくてたまらないんだ』、

『パパ、ハグして』、

庭には向日葵、

空には夏の入道雲、

『パパ、

パパって、汗臭い』!!

2013/08/19 02:03 | watanabe | No Comments