« 心地いい風の中で、「鈴木あやのとイルカの世界」トークイベント開催 | Home | 「状況」2013. »
『おばちゃん』、
あの扉の中でメグが熱いよ熱いよって言ってるよ、
メグが青い空に昇るのは嫌だって言ってるよ、
何も知らない2歳の進君が、
喋りだします、
今日は15年間可愛がられた友人の愛犬メグが火葬にされる日です、
空は雲一つない青空、
15年前に空から舞い降りてきたメグが、
今日は再び空に戻っていく日です、
ペット用の火葬場は思ったよりも奇麗に作られており、
シルバー色に輝いたステンレスの扉が4つ、
今日は私たち以外は誰もいないようです、
最後のお別れ、
皆でメグの棺に花を手向けます、
友人の愛犬メグとのお別れです、
『おばちゃん』、
メグは暗くて狭いよと言ってるよ、
昨日メグが眠った起きなかったけど、
おばちゃんこれからメグはどこに行くの、
葬儀の担当者が、
こちらに向かって深々とお辞儀をし、
メグの入っていったステンレスの扉に向かって、
深々とお辞儀をします、
白い手袋をした指が慣れた手つきで、
まるでメグの運命を決めるかのように、
ステンレスの扉の横にある赤いボタンを押します、
音もしなければ臭いもしません、
ただ赤いパイロットランプが点灯しただけです、
メグがこの地上から喜びと悲しみの思い出だけを残して、
去っていくようです、
骨を骨壺にいれてもらい、
友人の自宅に戻って来ると、
進君が喋りだしました、
『おばちゃん』、
昨日はメグちゃんが眠ったま起きなかったの、
今日はメグちゃんどこに行ったかと思ったけど、
メグちゃんママの後を追っかけて、
お家に戻ってきたんだね、
メグちゃんが家の中でママの後を追っかけて楽しそうだよ、
『おばちゃん』、
メグちゃんが、
ママに御飯をねだってるよ、
『進君、進君はどこから来たの』、
僕、
ええとね、
青い空にいたんだ、
そしたらママと目が合って、
あの人が僕のママだったら良いなって思ったんだ、
そしたら急に暗くなったんだ、
でもそこはとても暖かく、
自由に動けたよ、
それから僕、
くるっと回りながら細いところを通ったら、
急に明るくなったんだ、
そしたらママの声が聞こえたんだよ、
『おばちゃん』、
メグがあんなにママに御飯を御ねだりしてるのに、
ママったらなんで御飯上げないの、
何でメグと遊んであげないの、
ママったらメグが見えないみたいだね、
良かったメグが帰ってきてくれて。
『進君、おばちゃんのビッケは見えるの』、
進君は少し首をかしげていたが、
思い出したように喋り始めた、
ママが言ってたけど、
おばちゃんが飼っていた犬の事、
僕は知らないけど、
今、ここにはいないよ、
きっと遠く青い空から呼ばれたんだよ、
皆青い空から来るんだけど、
誰かが青い空から呼ぶんだ、
『戻ってきなさいって』
そしたら皆どこにいても青い空に戻るんだよ、
きっとおばさんのビッケも、
青い空にいるはずだよ、
でもおばさんの事は忘れないよ
隣にいたママが大粒の涙を流して泣き出しました、
『パパ、ビッケはどこに行ったんだろうね、
私は今でも哀しくてたまらないんだ』、
『パパ、ハグして』、
庭には向日葵、
空には夏の入道雲、
『パパ、
パパって、汗臭い』!!