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2013/08/17
こんにちは、酒井孝祥です。
ある俳優さんから聞いた話です。
シェイクスピアか何かの作品を日本的な演出で海外公演をする機会があったときに、その国の稽古場で、能・狂言の基本的な動きである、すり足で歩いていました。
すると、現地の俳優達がそこに群がる様に集まってきて、
「まるで雲の上を歩いているようだ!」
と感動したそうです。
室内でも靴を履く習慣の国の人からすれば、想像の範疇を越えた動きだったのかもしれません。
しかし、頭の高さを変えずに、足を床にすりながら移動するという、ただそれだけの歩行方法が、意外と難しいものです。
今度の公演で、日本神話を題材にした作品があり、その作品の前半で、神様に扮した役者が歩いて登場するシーンがあります。
特別大きなアクションがあるわけでも、振り付けがあるわけでもありません。
ただ歩いて出てくるというそれだけのシーンなのですが、その歩き方だけで場の空気を創らなければならないという非常に難解なシーンでもあります。
神様に扮した役者が何人も出てくるのですが、そのうち一人でも歩きくときに頭がひょこひょこ動きでもしたら、その時点でお客様は現実世界に引き戻されてしまいます。
目指すのは、歩いて舞台上に現れるだけで、そこを人間界とは別の異空間にすることです。
そうは言っても、一見すると地味なシーンであることは否めず、特に小さなお子様が退屈しないだろうか…と心配にもなります。
ところが、過去に同作品を上演したときには、むしろお子様の方が、食い入るように見ていたとのことです。
良い空間が出来上がれば、純粋な心をそこに引き込むことが出来るのでしょう。
2013/08/17 04:46 | sakai | No Comments