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Kodak High-Speed Infrared(HIE)赤外フィルムを使用して撮影した作品.
当時の制作ノートに書いた現像データではISO200 60/1sec. f5.6
カメラはNikon F3 35mm f1.4現像液D-76 20℃ 11分と記しています。
1996年というと今から17年前になります。
作品として青い..というか若さと未熟さ溢れる感じがします。
その時の僕が、果たしてどういうものを意図して作品を
撮り、創ろうとしていたか今あらためて考察してみると
その時には気が付かなかったことが少し、見える気がします。
それは「手探り」と「暗中模索」…
今ではもう生産もされていない赤外フィルム…
その時はおそらく「白黒赤外線写真」というもの自体には
さほど関心はなかったと思います。
ただそれよりも、眼には見えないものたち…痛みや切なさといった
溢れて止まない気持ちたちと同じように、眼には見えない領域のものを写し
「赤外線」を捉えるフィルムであるということと
赤外フィルム、インフラレッド…という妖しい言葉の響きと俗っぽい興味だけが
先走るようにして、このフィルムで撮ることを選択したように思います。
赤外フィルムで撮影する技術も、現像の知識もほとんど無いまま
手探りで友人や先輩方からのアドバイスを得て仕上げた作品たち。
作品の入り方..というか着想は、どんなカタチでも構わないと思っていて
難しそうだから..自分には無理っぽいから..出来る範囲で無難に..と考える前に
何も分からないまま、まさに手探りで暗中模索することもまた
今まで知らなかった未知の領域に自分を動かすための大切なものだとも思います。
やってみて失敗だった…自分の思うような作品にはならなかった
その時はそう思えるかもしれないけれどそれもまた写真の醍醐味.
ずっと先になって、自分の作品の幅を広げてみようとするときに
その模索はきっと無駄にはなっていないと思うのです。
その時は闇の中だったかもしれないけれど
そんな中を進んだという経験があるなら
そこはもう闇ではなくなっているのだから…
インフラレッドフィルムと絵の具と肢体…ネガの重ね焼き..
そのときそこにあったものはたったそれだけで
特別小難しいことも考えてはいなかったし、ベタな写真だと思います。
波長700〜900nmの近赤外領域の光への気持ち任せな暗中模索…
それは今となっても色褪せるものではないように感じます。
「見えない光線を写すフィルム」「Kodak High-Speed Infrared(HIE)」
そんな言葉を見るだけでも、ワクワクして来るものです
「そこに写るものはなんだろう」…そのシンプルな興味に対してきっと
写真は応えてくれるものだと思っています。
きっとそうしながら写真は「深さ」を増していくのでしょう。。。