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ジャズの演奏の仕事のうち、結構な部分を占めるBGM
(バックグラウンドミュージック)のお仕事について
このコラムではぜんぜん書いていませんでしたが、
とても大切な仕事の一つですので、書いてみようと思います。
ライブは一応「トヤマアキコ」や「JAZZ」に興味が
ある人が音楽を聴きに来て下さることが多いですが、
BGMはレストランやパーティーなど、音楽が目的でない方々
の前で演奏することが多いです。
つまりライブとBGMでは、聴衆の皆さんの「目的」が違う
んですね。
そして、そのBGMにも色々な状況があってそれに応じて
演奏の内容を考えます。だいたい依頼者側が「静か目に」
「盛り上げて」と言ってくれることも多いのですが、それが
ない場合はこちらの判断で決めるしかないです。
レストランなど食事をメインにお客様が楽しむ場所では
やはり、演奏は食事の邪魔をしないように、具体的には
お客様がガヤガヤしている時は逆に静か目の曲を(一緒に
音量を大きくすると、さらにお客様も声が大きくなって際限が
なくなるので)、逆にちょっと静かな場合は元気がでる曲を
(それでもあまり派手にならないように)弾きます。
ガヤガヤしていてぜんぜん聴かれてないなあ、、、反応も
拍手もないあな、、、と思っていてもどこかで誰かが、真剣で
はないけれど、食事と共に自然に耳に入っているんですよね。
たまに「さっきのよかったですよ」と声をかけてもらったり。
そんな時はとても嬉しいです。なによりこういう場所では
「自分の演奏を聴いてもらう」ことではなく「心地よく食事をしてもらう」
ことが仕事の目的ですから、そういう空間を演出できたら、
いい仕事ができたな、と思っています。
だから、音楽を空間演出と考えて依頼してくれる場所では
音楽がメインではないけれど、「演奏は求められている」ので、
精神的にもそれほどきつくないです。
ではどんな時にキツイなーと思うか。それは
「求められていない場で演奏すること」
なんです。実はこのことはライブもBGMも変わらないのだと
思います。
音楽が求められない空間では音楽は「雑音」でしかなくなり
ます。ライブでもお店やお客様によっては音楽的好みがハッキリ
していて、好みでない音楽だと心を閉ざしてしまう方も。。。
そんな閉ざされた心を開くのは、容易ではありません。そういう時
はこちらも弾いていてわかります。「ああ求められてないなあ」
こういう時が一番むなしく淋しいな、と思ってしまいます。
まったく聴いていない、もしくは聴かない聴衆に対しても
「素晴らしい音楽ならこちらを向いてくれるはず」「こちらを
向かせる努力をしてこそプロ」という考えもあります。もちろん
まったく否定はしません。でも、「聴かせるための演奏」は
押し付けにもなりかねません。こちらを振り向かせるために
奇抜なことをしたり、アピールしたり。もちろんピアニッシモ
なんてあったもんじゃないですね、大きな音で元気よく!
そういう演奏もプロであればすべき場所もあります。でも
私は個人的には「音楽のおしつけ」はしたくありません。
キャラクターにない演奏を無理にして自分が音楽を楽しめない
状況で、聴いている人が楽しくなってもらえるだろうか。
「北風と太陽」の話をよく思い出します。私は「北風」の
音楽はやりたくないんです。むりやりガンガンと相手の心に
入っていく音楽でなく、「太陽」のように、優しく根気強く
少しづつ、相手の心に入っていく音楽をやりたい、どんな
ところでもそう思って演奏しています。