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2013/05/24

・・・あのとき、もっとこう出来ていれば…と忸怩に駆られるよりも
こう出来ている今を把握することを大切にすべき時が来ているように思う
それはきっと歳月や経験を経たからではなく「選べる」今だからこそ・・・


2013年 古賀英樹写真展「深入り」先行告知フライヤー

もう、完成して幾日か過ぎて各地へ配布も開始している
来る9月に開催する、12年振りとなる僕の個展「深入り」.
その先行告知フライヤーをご紹介します。

映画のチラシと同じ判型のB5判は意識してそうしました。
その上でチラシよりも厚く、でもポストカードよりは薄い…

そして無光沢マット調の紙…折らずに手に触れてもらい
保存してもらえるようにと考えて制作しました。

今回の個展のタイトル「深入り」…これは
開催が決定してからわりと早く決まっていて、発表のタイミングまで
温めていたものでした。

重要なキーとなるものは「距離感」.

人間…自分が思ってたり感じてたりする、近かったり、遠かったり…
誰か、何かとの距離、適切な距離感というものは案外あてにならなくて
距離感という定義で測っているものそのものが、不安定だったりします。

こんな近くにもなるし、遙か遠くにもなる
いかに曖昧で不確かなものであるか…
そんな部分を自分自身の身をもって様々な距離や境界を
自在に行き来しながら作品構成しています。

例えばこのフライヤーでも言えることですが
この表と裏の写真は当然ですが同一の被写体さんの姿です。

かつての僕であれば、きっとオモテに持って来ていただろう一点を
ウラに配置する…そして今までなら選ばなかっただろう一点をオモテにする…

配布に回りながら「変わったよねー」と言われるし「相変わらずだねー」とも言われる.
僕にとって重要なのは、今この表裏の位置関係で作品展の告知を
出来るようになったということ。

あらかじめこうしようとか、こうすれば効果的だろうとか
そういう作為や意図といった意識のもっと外から来るもの…

「選択」し、「選べる」ところにいるという今…
「自分がこういう気持ちで創ったのだから、こう感じてもらわくてはならない…」
そこからもう少し踏み出して、そこにある想いや感情に対して
その距離を自分で選択出来るということ…出来るようになったということ.

そうすることで予定調和の省察や諦観からもっと外した場所で
作品を観てもらえるようになるということがすごく重要なことのように思えています。
自分で測れるような場所にいたままでは、その外側から来るものを
受け取ることが出来ないと思うから。

作家の気持ち一点張りよりも、創る側自身がいくつもの「選択」をしながら
作品を創り、展開することで、観る側にもまたいろんな気持ちや距離というものを
「選択」してもらえるのではないか。。。そんなふうにも思えるのです。

表裏一体、優しければ優しいほど凄惨で残酷…
そんな文言を掲げることよりも、もっとたくさんの選択肢を
もっとたくさんの物語を、それぞれに描いて行けたなら…

こうも思えるし、いやもっと別の感じ方もできる
そうやって、今まで決めつけていた距離感はだんだん曖昧になっていく.

距離感を惑わす、狂わすのではなく果てしなく曖昧なものにする.
完全に喪失させるのではなく、測って進むのことからやがて手探りになる…
そこでやがて気付くこと、出会うものこそが或いは・・・

個展そのものはもう少し先のことですが、
このフライヤーには「選択できる今」が
くっきりと現れています.

作品展の全貌を眼にしていただく前に、
ぜひ手に取っていただけたらと思っています。

2013/05/24 11:22 | hideki | No Comments