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親父がきた。の巻
絵描きの皆様、「自分の親を描く」を実行されたことはありますか。
僕はまだありません。
特に描かない理由はないのですが。
前日に山に登ったおかげで、じんわりとした心地よい気怠さの午前中、有名登山家の山行文を読みつつ、 自分も強くなったような気でいると、電話が。
親父だ。なんだろう。
出ると、いつもの調子。敬語で話しかけてくる。
もう慣れてしまっているのでそれが普通になってしまっているが、なぜか父は家族内でも敬語で話す。
父の仕事は建築関係の自営業で、工場などの大きな建物の屋根にルーフファンという巨大な換気扇を設置するというものだった。 僕も何度もその現場に行っているが、機械や工具の音、他の業者が入り乱れるその環境下でも、父は敬語でやりとりしていた。
事務所には図面を引く時に使う大きな木製のT型定規があったり、受注内容の記されたFAXが乱雑に積まれている仕事風景の一方で、 壁は一面本棚になっており、手の届く位置にはだいぶ読み込まれたと思われる古びた夏目漱石や石川啄木などの純文学が収納されていたり、上段の方にはなぜか六法全書がデデンと存在感を主張していたりと、業種からは到底判断し難い内容の書物で埋め尽くされていた。
B型の左利き、趣味は将棋とピアノ。なつかしい情報だが、動物占いでは「ペガサス」だ。
なんというか、我が親ながらつかみどころのない人物。
「もしもし、諭史ですか。夏帆が東京に観光に行って、そのお土産を預かっています。夕方4時頃に持っていきますね。」
夏帆というのは従姉の子で今年六年生。GWに家族で東京スカイツリーにでも行ったのだろう。 僕は夜のアルバイトをしているので、昼間はいつも寝ていると気をつかったのだろう。 僕の実家に僕の分のお土産を預けて、それを後日受け取りに行くというのが慣例になっている。
今回の場合は父が届けに来るというパターン。 最近はこのパターンが多い。 というのは、うちには「マメ」という室内犬がいるのだが、父は「マメ」に会いにくるのだ。 どうやら可愛くて仕方ないらしい。 来るたびに大量のオヤツを持ってきて、嬉しそうに「マメ」にあげている。 が、「マメ」の歓迎はかなりの勢いと持続性があるので、そのうち父は面倒くさそうになる。
さて、そうなると男どうし。無口な親父となにを話すのやら。
とりあえず将棋を一局指した。
一緒に現場仕事をしている時より、政治経済について話をする時より、 将棋を指している時が一番父親を感じる。
いつもコテンパンに僕が負ける。 というより、父は本気ではない。
「こう指すと、僕がどう指すか。」を愉しんでいる。
なるほど、父親の威厳を感じるわけだ。
父親と息子っていうのは何やら独特な関係だ。
母親とのそれとは全く違う。と僕は思う。
今回、初めて親父を描いた。