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ゴールデンウィーク、皆様はどのように過ごされましたでしょうか。
私はトルコで過ごしました。東京で習っているベリーダンスの師匠がトルコの国際フェスに招聘されたので、そのツアーに参加したのです。
ベリーダンスとひとことでいってもたくさんのスタイルがあります。私がやっているのは、どこのルーツと問われる以前に女性が自然に踊っていたダンス。女性の神秘を讃え、大地豊穣・子宝繁盛を祈り、神様に捧げるための奉納舞です。いわゆるテンプル・ダンス。それは、世界至る所に違う形で存在したはずですが、意図は同じ。
トルコには古代ローマ時代の遺跡が散在しています。美の女神・アフロディーテ神殿やアルテミス神殿などで奉納舞もしてきました。みんなで「女神コスプレ」してね(笑)。10日間ほど、このように美を研鑽する女性達と過ごすと、だんだんと美への感覚が研ぎすまされていきます。
最後の方になると、女性達の輝きというか、オーラというか、後光というか、そんなものが見えるような気がする・・・のです。そして、それを表現しようとするときに自然に湧いてくるのが不思議と「かぐわしい」とか、「かほる」とか、「にほふ」とかいった匂いにまつわる単語。
「にほふ」という単語については、以前作品制作をしたときに調べたことがあります。古代の日本では、文字通り「香りが漂っている」を意味すると同時に、色を表わす言葉でもあったのです。たとえばお花見などで、桜の花の色の反射で頬がピンクっぽく輝いている様を表すときに、「にほふ」という表現が使われたのです。
(このテーマで過去に作った作品「_チルダ」についてはこちらのページをご覧下さい。触覚的、嗅覚的に感覚を研ぎ澄ますための基礎化粧品です。)
古代の人々には、嗅覚と視覚との明確な区切りがありませんでした。現代ではそれを、共感覚と呼んでいます。かたちは違いますが、ヨーロッパの中世ヴェニタス画にもそのようなものを見ることができます。画の中に味や匂いを表すモチーフが描かれており、それがコードとして鑑賞者の中の味覚や嗅覚を呼び起こすといった仕組みです。
Gooの辞書 http://www.goo.ne.jp によると・・・
にお・う〔にほふ〕【匂う】
[動ワ五(ハ四)]《「丹(に)秀(ほ)」を活用した語で、赤色が際立つ意》
1 よいにおいを鼻に感じる。かおりがただよう。「百合の花が―・う」「石鹸がほのかに―・う」→臭う1
2 鮮やかに色づく。特に、赤く色づく。また、色が美しく輝く。照り映える。「紅に―・う梅の花」「朝日に―・う山桜」
3 内面の美しさなどがあふれ出て、生き生きと輝く。
「純な、朗らかな、恵みに―・うた相が」〈倉田・愛と認識との出発〉
4 おかげをこうむって、栄える。引き立てられる。
「思ひかしづかれ給へる御宿世をぞ、わが家までは―・ひ来ねど」〈源・少女〉
5 染め色または襲(かさね)の色目などで、濃い色合いからしだいに薄くぼかしてある。
「五節の折着たりし黄なるより紅まで―・ひたりし紅葉どもに」〈讚岐典侍日記・下〉
[動ハ下二]美しく色を染める。
「住吉(すみのえ)の岸野の榛(はり)に―・ふれどにほはぬ我やにほひて居らむ」〈万・三八〇一〉
他にも、いろいろ調べてみました。
かお・る〔かをる〕【香る/薫る/×馨る】
[動ラ五(四)]
1 よいにおいがする。芳香を放つ。「梅が―・る」
2 煙・霧・霞(かすみ)などが、ほのかに立つ。立ちこめる。
「塩気のみ―・れる国に」〈万・一六二〉
3 顔などが華やかに美しく見える。つややかな美しさが漂う。
「いみじくふくらかに愛敬づき、あてに―・り」〈栄花・音楽〉
か‐ぐわし・い〔‐ぐはしい〕【▽芳しい/▽香しい/×馨しい】
[形][文]かぐは・し[シク]《「香(か)細(くは)し」の意》
1 よいにおいがする。香りがよい。かんばしい。こうばしい。「―・い梅の香り」
2 心が引かれる。好ましい。すばらしい。
「あなたとの最初の邂逅が、こんなにも、海を、月を、夜を、―・くさせたとしか思われません」〈田中英光・オリンポスの果実〉
「見まく欲(ほ)り思ひしなへに縵(かづら)かげ―・し君を相見つるかも」〈万・四一二〇〉
[派生]かぐわしげ[形動]かぐわしさ[名]
かんばし・い【芳しい/×馨しい/▽香しい】
[形][文]かんば・し[シク]《「かぐわしい」の音変化》
1 においがよい。こうばしい。「―・い花の香り」「栴檀(せんだん)は双葉より―・し」
2 (多く打消しの語を伴って用いる)好ましいもの、りっぱなものと認められるさま。「成績が―・くない」
[派生]かんばしげ[形動]かんばしさ[名]
こうばし・い〔かうばしい〕【香ばしい/▽芳ばしい】
[形][文]かうば・し[シク]《「かぐわしい」の音変化》
1 よい香りがする。多く、食物を煎(い)ったり焼いたりしたときの、好ましい香りにいう。「―・いほうじ茶の香り」
2 見た目や印象などがすばらしい。りっぱである。
「薄色の衣のいみじう―・しきをとらせたりければ」〈宇治拾遺・一二〉
3 望ましく思う。心が引かれる。
「姿、みめありさま、―・しくなつかしきこと限りなし」〈宇治拾遺・六〉
[派生]こうばしさ[名]
匂いや香りにまつわる言葉はことごとく、「ついつい惹かれてしまう魅力」を表しているんですね。
みなさんにもそんな体験ありませんか? その人の外見ではなく、その人のオーラというか、神々しさを見るとき。思わず、そのかぐわしさのおこぼれをもらいたいと思うようなとき。
精進している(菜食主義の)お坊さんの姿はとても澄んでて綺麗だなと思います。私にとっては、遠い距離から見てもなんとなく「かぐわしい」と感じられるのです。近づいてクンクンしたら、いい香りがしそうな感じ。実際にはオジサンの匂いとかするのかもしれませんが・・・・(笑)
余談ですが、お坊さんや修行者に限らず、菜食主義の人は全体的にそのような光を纏っているような気がします。目も澄んでいて綺麗。私も鉄分不足でない時は菜食していますが、実際に体に流れる気が変わります。
そのほかにも、日本語には嗅覚にまつわる面白い表現がたくさんあります。「うさん臭い」とか、「きな臭い」とか、「面倒くさい」とか。日本語に限らず、オランダ語にもそういう「第六感」的な表現に嗅覚が使われたりします。おもしろいですね。
マリリン・モンローが「ベッドで纏っているのは、シャネル5番だけよ」と表現したのは有名な話。私は、香水をつけてなくても、香りを纏うように輝いていたい。そんな女性になるべく、今後も日々研鑽しようと思います。(^^)
追記: 日本の古代の匂いと色彩の共感覚については、こちらの記事が興味深いです。